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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第七章

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227.新たな歴史を

 ルキフェルの体が塵と化していく。

 失われていく体。

 ルキフェルの残った体は、すでに胸から上だけだった。


 自身が消えていくことを自覚し、ルキフェルは言う。


「何故だ……何故こんなことになっている。私は……どこで間違えた……」


「ルキフェル」


 ルキフェルは地面に倒れ込み、体を動かせない状態。

 名を呼ばれるが、その方向へ視線を向けることしかできない。


「盟主の騎士……アルゴ・エウクレイア。貴様だ……貴様さえいなければ……私は……」


「そうだ。俺がお前を殺した。俺のことを思う存分怨め」


「貴様は……神殺しの大罪人だ。やがて因果が巡り、貴様はそれ相応の報いを受けることになろう。ハハッ……惜しいな。地獄の業火で焼かれ、苦痛に歪むその顔を見ることができないとはな。大罪人アルゴ・エウクレイア……せいぜい覚悟しておくことだ」


「そうかもな。一応、訊いておこうか。他に……言い残すことはあるか?」


「貴様はいずれ後悔する。神の秩序が築かれた世界。それは、貴様ら人にとってはまさに楽園の世界だ。飢える者も、病む者も、隷属も支配もない、素晴らしい世界。貴様は、それをその手で破壊したのだ。人類の幸福を……その手で壊したのだ。そのことを……自戒しろ……」


「だけど、その素晴らしい世界でも争いは起こったじゃないか」


「ゆえに……それを繰り返さぬための計画だったのだ。女神アンジェラを倒し、私が神の頂点となる。そうなれば、私が人類を幸福へと導いてやれるはずだったのだ。それを貴様は……」


「そうなのかもな。お前の言う事が正しくて、お前の計画とやらが人々が幸せになる方法だったのかもしれない」


「そうだ、それこそが―――」


「だけど、すまない。俺が信じるのは一人だけなんだ。メガラは言った。これからは神の時代じゃなく、人の時代だと。確かに神々は、俺たち人類にとって尊ぶべき存在だ。俺たちは神々に命を与えられ、導かれた。俺たちは神に感謝するべきなんだ。だから、改めて礼を言うよ。―――今までありがとう」


「くッ……貴様は、どの口で……」


「別に信じてくれなくてもいい。けど、感謝しているってことは伝えておく。だから、ありがとう。そして、これからは見守っていてくれ。俺たち人類の、新たな歴史を」


「それは……断る。私は……そういう存在には……ならない。私は……私こそが……神だ。私こそが……人類を……導く―――」


 ルキフェルは最後まで言い切ることができなかった。

 言い切る前に口が消え失せ、頭部が消え、そして完全に消失した。


 アルゴは空を見上げ、そっと呟いた。


「仇は取ったよ……ベリアル」


 仇を取った。

 ルキフェルは消失した。

 天界の門も消えた。


「終わったわね」


 背後からガブリエルに声を掛けられた。


「はい。ここまでありがとうございました」


「約束、忘れてないわよね?」


「勿論。俺は俺の全てを使って、マグヌス皇帝の命を救います」


「頼むわよ、本当に」


「はい」


 その返事にガブリエルは頷いた。

 それから少しして、ガブリエルは視線を地面に向けた。


「あれは何かしら?」


 ガブリエルの視線を辿った先に、妙な物があった。

 いや、それが何であるかは見れば分かる。

 それがこの場に在ること自体が妙だった。


 それは黒い卵だった。

 大きさは掌に乗る程度。


「なんだ、これ?」


 その卵は、ちょうどルキフェルが倒れた位置に置かれていた。


「ルキフェルの遺物……?」


「それ、壊した方がいいんじゃない?」


「うーん、でも……」


 何故か壊す気にはなれなかった。

 壊してはいけないような気がする。


「持ち帰って、もう少し様子を見てみます」


「本当に大丈夫? その卵から悪神が生まれるかもしれないわよ?」


「いや、多分大丈夫です。これは悪いものではない……ような気がします」


「どうしてそう言えるのよ?」


「勘です」


「はあ?」


「俺の勘はよく当たるんで、きっと大丈夫ですよ」


「呆れた。分かったわよ、好きにしなさい。まあ、悪神が生まれたとしても貴方なら何とかしてくれるでしょう」


「ご理解、ありがとうございます」


「じゃあ、帰るわよ」


「はい、そうしましょう」


 そうしてアルゴとガブリエルは、帰還のため足を進めた。

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