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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第七章

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225.神代の都市

 魔法陣で転移した先には、白い神殿のような建物が幾つも存在した。

 建物は美しく荘厳な様子だが、地面は砂で覆われている。


「この光景は……」


 この光景には見覚えがある。

 アガム砦で大将軍キリルとの戦闘中、ガブリエルの罠に嵌り、転移させられた先の世界と酷似している。


「ここは神代で最も栄えた都市、アテナ・アクテリオン……を模倣した世界」


 驚くアルゴに対し、ガブリエルがそう言った。


「ガブリエルさんに転移させられた世界もこんな様子でした。なにか意味があるんでしょうか?」


「私はただ、ロノヴェの真似をしただけよ。ここはロノヴェが創った世界。彼が言うには、ここは彼お手製のダンジョンとのことよ。私はこの場所を真似てあの世界を創り上げた。だから私のは、模造品の模造品ってとこかしらね」


「神ロノヴェが創ったダンジョン……ですか。あまり長居したい場所ではないですね」


「そう。なら早く進むわよ。この大通りを真っ直ぐ進めば、そこに天界の門があるわ」


「分かりました」


 白い建物の間に大通りが伸びている。

 どこまでも続いており、終着点が見えない。


 アルゴが先へと目を向けた時、視界の端で動く物体を捉えた。


 それは人の形をしていた。

 それは白銀の鎧を全身に纏った騎士だった。

 兜で顔は見えないが、おそらく中身は空だろう。


「生物の気配を感じない……」


「その通り。あれは動く鎧。この世界を守護するガーディアンね」


「ガーディアン……ですか」


 ガーディアンは剣を抜き、こちらに対して敵対行動を取った。

 そして厄介なことに、ガーディアンは一体だけではなかった。


 建物の隙間から、ガーディアンたちが現れる。

 その数は、軽く百を超える。


「数は……五百……いや、千……」


 数が多すぎる。

 流石にこの数を全滅させるのは無理だ。


「駆け抜けますか?」


 そのアルゴの提案に、ガブリエルは首を横に振る。


「私、殲滅は得意な方なの。貴方が規格外すぎて、私の凄さが霞んでいるかもしれないけどね」


「そんなことはないですけど……。それで、どうするんです?」


 こうして会話している間にもガーディアンたちが近付いてきている。

 速度はゆっくりだが、隙がなく連携の取れた動きだ。


 ここでガブリエルは意外な動きをした。

 ガブリエルは突然しゃがみ込んだ。

 そしてアルゴに言う。


「乗って」


「はい?」


「私の背中に乗りなさい。安全なのは私の背中だけだから」


「え? の、乗るんですか?」


「そうよ」


「いいんですか?」


「早くして」


「わ、分かりました」


 アルゴはガブリエルの背中におぶさった。

 遠慮がちに体重をかけ、ガブリエルの両肩を軽く掴む。


 ガブリエルは細身だが、アルゴに体重を掛けられても体幹のぶれはない。


「軽いわね。ちゃんと食べてるの?」


「え、ええ、まあ」


「そう」


 ガブリエルは右手を地面に付けた。


 その瞬間、ガブリエルの右手から白い靄が出現。

 それは、一瞬にして広がった。

 白い靄が同心円状に広がっていく。


 地面の砂が凍り、建物が凍り、ガーディアンが凍る。


 世界が一変した。

 すべてが氷結した氷の世界。


「すごい……」


「まあ、こんなもんよ」


「人間業とは思えません。本当に人間なんですか?」


「れっきとした人間よ。まあ、驚くのも無理はないけど。そもそも神代の術者は現代の術者とは格が違う。その神代の術者の中でも、私は天才中の天才。私の実力をなめてもらっちゃあ困るわ」


「御見それしました。あ、でも……」


「何かしら?」


「あそこ、まだ動いているガーディアンがいます」


 遠くへ目を向ければ、そこに活動を続けるガーディアンが居た。

 それも一体だけではない。十体以上は居る。


「あら……」


 ガブリエルは軽く咳ばらいをして言う。


「まあ、敢えてよ、敢えて。少しぐらい残しておかないと、貴方の出番がなくなるでしょ?」


「……」


「何よその目は」


「いいえ何も。さて、ガーディアンの弱点はどこですか?」


「頭よ。兜を破壊すれば活動を止めるわ。でも―――」


 でも硬い兜を破壊するのは一筋縄ではいかない。

 そう言おうとした。


 だがアルゴは、あっと言う間にガーディアンたちに接近し、難なく兜を叩き斬っている。


 バターでも斬るような感覚で、ガーディアンの兜が斬られていく。


「なにあれ……本当に人間なの?」

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