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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第七章

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229/250

219.本陣にて

 本陣の天幕内。


 中央には巨大な机が置かれ、その奥の席には将軍が座している。


 将軍ルギルド・バルトローグ。

 頭部から二本のツノを生やす魔族の男。

 厳めしい表情。左目には眼帯。

 イオニア連邦にて、ドワーフ軍との戦いの指揮をとった老将。

 本作戦に於いて、最高指揮権を持つのはこのルギルドだ。


「おお……よく来てくれた、騎士殿」


 ルギルドはアルゴの姿を見てそう言った。


 ルギルドとは初対面ではない。

 ドワーフ軍との戦いの折、何度か顔を合わせた仲だ。


「ルギルド将軍、ご無沙汰しております。盟主の騎士アルゴ・エウクレイア、本日より貴下の軍に加わります。どうぞ、よろしくお願いします」


「うむ。貴殿の活躍に期待する。さて、さっそくだが、現在の状況は理解しているかね?」


「はい。状況は聞き及んでおります」


「では述べて見給え」


「はっ。軍の目標はアルテメデス帝国第三の都市、ヘルネムント。ヘルネムントとこの場所の距離は約十五キロ。ここから北進すればヘルネムントに到着します。軍の補給が完了次第、ここを経つ予定。そのように聞いております」


「よろしい。では次に軍編成について述べて見給え」


「ヘルネムント攻略のため組織された兵の数は約六万。ルタレントゥム魔族連合軍を筆頭とした西の混成軍が総勢四万。黎明の剣によって組織された東の連合軍が総勢二万。合わせて六万の大連合軍となります。編成は、歩兵隊、騎兵隊、魔術師隊、聖国騎士隊、魔導工兵隊、飛竜隊、予備隊となっており、そのうち補給、治癒、偵察、整備部隊は予備隊に組み込まれております」


「ふふっ」


 ルギルドは僅かに笑った。


「立派になられたな、騎士殿。ガリア砦での貴公の印象は、まだあどけない子供、といったところであったが……。なかなかどうして……まるで別人のようではないか」


「ありがとうございます」


「では、最後に聞かせて欲しい。貴公の目から見て、この軍の印象は?」


「それは……」


 アルゴは少し間を置いて答えた。


「率直に申しまして、士気の低下を感じます。兵たちからは、気や熱を感じませんでした」


「その原因は、私の口から言うまでもないな?」


「はい。凍り付いた砦。聳え立つ氷壁。大将軍の脅威を目の当たりにして、みな怖気づいています。特にあの氷壁は、我々の気勢を大きく削ぎ、我々の熱を奪う巨大な装置。あれはよくない物です。早急に策を討つべきかと」


「その通りだ。そこで貴公の出番だな。貴公は三人の大将軍を討った英雄。貴公の口から出る言葉は、兵士たちの心を奮い立たせるだろう」


「それなのですが……」


「うん?」


「俺は……人前で喋るのは得意ではないです。というか、絶望的に苦手です」


「それは分かるが、無理を承知で頼みたい。兵たちは貴公の言葉を求めている」


「はい、承知しています。ですが、もっといい方法があります。多分、そっちの方が効果が高いかと」


「ほう、その方法とは?」


 アルゴはその方法を将軍に告げた。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ 



 また懐かしい者たちと出会った。


「アルゴ! 久しいな!」


「これはこれは、アルゴ殿。ご活躍、お聞きしておりますよ」


 魔族の二人組。

 戦士のランドルフ。

 魔術師のザムエル。


 この二人とはヴィラレス砦で共闘した仲だ。


「お二人とも、お久しぶりです。聞きましたよ、お二人は黎明の剣に加入されたとか?」


「ええ、紆余曲折ありましてね。一所に縛られるという迷いはありましたが、今になっては加入してよかったと心から思いますよ。東の小国群を纏め上げた黎明の剣の功績は大きい。その一助になれたことは、このザムエル・ゴードンの生涯の誇り。いま、歴史が動き出そうとしている。これは開闢以来の激震。私はその歴史に―――」


「ザムエル、そのへんにしておけ」


 ランドルフにそう言われ、ザムエルは言葉を止めた。


「おっと、失礼。とにかくアルゴ殿、ご壮健でなりより」


「はい、お二人もお元気そうでなによりです。チェルシーさんは元気にしていますか?」


「ああ、恐ろしいほど元気だ。今日もリコル村で慌ただしく過ごしているだろうさ」


「それはよかった。チェルシーさんとも、また会いたいです」


「彼女は黎明の剣の構成員ではないので戦に出ることはありませんが、リコル村に行けばまた会えますよ。戦が終わったら、リコル村に寄ってみることをお勧めします」


 チェルシーは黎明の剣の協力者という位置付けらしい。

 チェルシーは高い戦闘力を持っているが、戦には出ずリコル村で子供たちと共に過ごすことも選んだ。

 チェルシーは本来、戦いを好む性格ではないのだ。

 暴力は手段として使っていただけ。

 幸か不幸か、たまたま戦いの才能を持って生まれてきてしまった。

 チェルシーは、ようやく自分の居場所を見つけられたのかもしれない。


 そんな風に考えて、アルゴは笑みを浮かべた。


「はい、そうします」


「ところで、聞きましたよ、アルゴ殿。なにやら面白い催しを開かれるとか?」


「面白いかどうかは分かりません。ですが、できるだけ沢山の人に見て欲しいです。なので、お二人にお願いです。仲間に呼びかけて、多くの人を集めて欲しいです」


「ええ、このザムエル、できる限りのことをさせて頂きますよ」


「ハハッ! 任せろ、アルゴ! 俺が千人でも一万人でも引っ張っていってやる!」


「頼もしいです。お願いします」

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