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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第七章

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211.氷の壁

 ついに大連合軍が進攻を始めた。


 大連合軍の勢いは凄まじかった。

 次々にアルテメデス帝国の砦を落としていった。

 いまやアルテメデス帝国は、領土の約三割を大連合軍に占領されていた。


 大連合軍の目的は帝都メトロ・ライエスの占領と、皇帝マグヌス・アストライアの捕縛。

 皇帝マグヌスが神代の術者の生まれ変わりだという情報は、大連合軍内で共有されている。

 皇帝マグヌスを放っておけば、再び強力な従者を召喚されるかもしれない。

 そうなれば戦況がひっくり返される可能性は十分にある。

 ゆえに大連合軍は止まらない。目的を果たすまでは。


 大連合軍に占領された都市、アクタポスタでは新たな秩序が築かれていた。

 大連合軍は、虐殺や強奪といった無秩序な暴力を振り翳すことはなかった。

 暴徒の制圧に武力を使うことはあったが、それ以外では暴力を民に向けることは殆どなかった。

 それは、ルタレントゥム魔族連合盟主、メガラ・エウクレイアの言明によるものでもあった。


 我らは血を求めず、炎を必要としない。

 求めるのは静寂。あるべきは新たな秩序。

 それを是とする限り、安寧は約束されるだろう。


 魔人歴元年。

 その言葉がアルテメデス帝国内に流布された。


 その言葉に従うアルテメデスの民は、徐々に増えていくことになる。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 アルテメデス帝国の都市、アクタポスタから大連合軍が出陣した。


 目指すはアルテメデス帝国第三の都市、ヘルネムント。

 ヘルネムントはアルテメデス帝国領土のほぼ中心に位置する都市だ。

 その都市を占領すれば、大きく勝利へと近付く。


 だがそのためには、ヘルネムントを守る砦を落とさなければならない。


 アクタポスタからヘルネムントへの進路上に存在するケルネイア砦。

 その砦こそが、次に大連合軍が落とさなければならない砦だ。


 大連合軍の勢いは止まらない。

 兵数は総勢八万を超え、もはや止められる国は存在しないだろう。


 ケルネイア砦は呆気なく陥落した。


 大連合軍の兵士の一人が勝鬨を上げた。


「うおおおおおおッ!」


 それに続き、兵士たちの叫び声がケルネイア砦に響き渡る。


 それは、この場の温度を上げるような兵士たちの叫び。

 それは錯覚ではなく、間違いなく熱を持った雄叫び。


 温度が上昇する。

 熱い。兵士たちはそれを確かに感じた。


 だが、その熱が急速に失われていく。


「……は?」


 兵士の一人がそう声を漏らした。

 これは幻だろうか。それとも夢だろうか。


 それほど現実感のない出来事だった。


 気が付けば、辺り一面が凍り付いていた。


 大地も、草木も、建物も、全てが凍り付いていた。


 兵士は動けなかった。

 何故なら、足元が凍り付いていたから。


「う、嘘だろ……」


 兵士は恐怖した。徐々に凍り付く範囲が広がっていく。

 足元から太腿に。それから腰、腹、胸。最後に首、顔へと。


「た、助けてくれえええッ!」


 そう言った叫びがそこら中で響いた。


 建物内に居た者は、辛うじて無事だった。

 無事だった兵士は、窓から外の様子を見て驚愕する。


「な、何が起きてやがる……」


 そう言いながらも、思いつくことはあった。


 アルテメデス帝国は、三人の大将軍を失った。

 アルテメデス帝国の戦力は大きく低下したが、まだ巨大な戦力が一つ残っている。


「どこに居やがる……ガブリエル・フリーニ」


 兵士は二階に上がり、窓から周囲に視線を走らせる。

 だが見つからない。


「くそがッ。どれだけやられた。被害状況は……」


 その時、突然あたりが暗くなった。


 現在は昼時。日が落ちるような時間ではない。

 当然、夜が訪れたわけではない。


 それは、巨大な氷の壁だった。

 高さはどれほどだろう。正確なところは不明だが、少なく見積もっても五十メートルはあるだろう。


 その氷壁が太陽を妨げている。


 もっとも驚くべきはその長さ。

 どこまでも横に広がる氷壁。


 それは、大連合軍の侵攻を防ぐ結界。

 これ以上は踏み込ませない。

 そういった強い意志を感じさせるものだった。

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