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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第六章

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204.神との対話

 古都クレイテネア近郊の平原にて。

 青空の下、神との対話が続いていた。


 ロノヴェは語る。


「神と言っても、吾輩は残りカスのようなものでしてな。海を裂いてみたり、星を落としたり、天地をひっくり返したり、と言った神らしいことは何一つ出来ません。この世界で吾輩は非力な一つでしかありませんので、必要以上に警戒なさらずともよろしいですぞ」


 そのロノヴェの話を聞いているのは二人。

 メガラとイヴェッタだ。

 シエルはロノヴェの得体の知れなさに怖気づき、古都クレイテネアへ引き上げてしまった。


 メガラは言葉を返す。


「であろうな。もしお前がそのような力を持っているのであれば、帝国は今も勢力を保っているはずだ」


 その後メガラは、一呼吸してまた口を開いた。


「率直に訊こう。お前の目的は何だ? お前は何がしたい?」


「それは散々申し上げたはずですがね。吾輩……いや、吾輩とマグヌス陛下の目的は世界の統一。世界を統一し、恒久的な平和を成す。それこそが、我々の目的ですな」


「ふざけるな。お前たちこそが破壊の根源だ。お前たちは平和とは最も遠い存在だ。どれだけ面の皮が厚いのだ……と言いたいところだが……まあいい。まず理由を教えろ。何のためだ? 何のために平和を目指す?」


「ふむ。それを説明するには……そうですな。まずはマグヌス陛下のことをお話ししましょう」


 ロノヴェは、机の上で両手の指を絡ませて続ける。


「マグヌス陛下は転生者です。盟主メガラ、貴方と同じですな」


「何だと?」


「ああ……ですがまったく同じではない。彼の転生は偶発的なもの。奇跡のような確率で発生した生まれ変わり、という奴ですな」


「余は秘術で転生したが、マグヌスはたまたま転生した存在だと?」


「その通りです。吾輩ら神が現存していた時代……神代。その時代の術者。その術者が転生した存在こそが、現アルテメデス帝国皇帝、マグヌス・アストライアです。ですが彼は前世の記憶を持っていなかった。忘れていた、と言った方がいいでしょうか。彼は現世にて騎士の家系に生まれましたが、彼には騎士の才能がなかった。彼はうだつの上がらない騎士として、その生を終えるはずだった」


 ロノヴェは続きを言う。


「ですが、吾輩は彼を見つけました。彼を見つけたのはそれこそ偶然ですが、吾輩は彼の正体、そしてその才能に気付いた。彼の正体は先程申し上げた通りですな。彼は神代の術者。吾輩は少しだけ彼の頭を弄り、彼の記憶を蘇らせた」


「弄り……ですか」


 イヴェッタが不快気にそう呟くが、ロノヴェはそれに応じることなく続ける。


「すると、彼の才能が花開いたのです。彼には召喚術の才能があった。その才能は、神である吾輩ですら目を見張るほどでした。そんな彼は吾輩に言いました。再び神が現存していた時代を創りたいと。彼の記憶がそれを言わせたのでしょう」


 ロノヴェはさらに続ける。


「神々が天に隠れた理由は、この地上でもう二度と争いが起こることのないようにと誓いを立てたからです。原因は大きな争いです。そこで彼は考えました。世界を統一し、もう二度と争いが起こらないようにすれば、この地に神々が戻ってくるのではないかと。だから彼は立ち上がった。吾輩と契約を結び、彼は強力なしもべたちをこの世界に召喚した。そして彼は、世界の覇権を手に入れるまでに至ったのです」


 それを聞いてメガラは、眉間に皺を寄せた。


「それがアルテメデス帝国が世界を支配する理由だと? それは……実に……実に自分本位だ。実に幼稚な考えだ。はっきり言おう。お前たちはクソの中のクソだ」


「どう思われても結構。何を思おうが、それは貴方の自由だ。もとより、理解して頂くつもりはありませんのでな」


「では何故だ……お前は何故それを明かした。お前は何故ここに来た?」


「ふーむ」


 ロノヴェは少し唸り、続きを言う。


「吾輩、考えたのです。何故、吾輩たちは追い込まれているのか。とてもとても考えました。ですが、やはり答えは分かり切っていた。貴方たちが最強の剣を手に入れたからです。盟主の騎士、アルゴ・エウクレイアという最強の剣をね」


「……」


「吾輩が何故、目的を語ったのかと問われれば……それはまあ、ただのついでですよ。いまさら隠す意味もないので語ったまで。吾輩がここに来た本当の目的は、貴方たちの有する最強の剣を破壊することです」


「それはつまり、アルゴを殺すことだと言っているのか? だがお前は言ったではないか。神は地上の者たちに危害を加えることはできないのだろう? それともあれは嘘か?」


「いいえ、嘘ではありません。サー・アルゴから聞いておりませんか? 神と人の間で縛りを設ければ、お互いを傷つけ合うことが可能だと」


「お前は……つまり……アルゴに決闘を挑むと言うのか?」


「まさしく―――その通りで御座いますよ」

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