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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第六章

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196/250

189.金色の

 空より降り注ぐ万の雷。


 アルゴはそれを走りながら躱す。

 それでも躱しきれないものは魔剣で斬る。


 改めてこの魔剣の性能には驚かされる。

 いくど雷を斬っても、刀身には傷一つ付かない。

 刀身に込められた魔力がさらに輝きを増す。

 まるで、主の期待に応えているかのように。


 アルゴは今、砂の地面を走っていた。

 周囲には、白い石で造られた神殿のような建物が乱立している。


 どこなんだよ、ここは。


 そう訝しむも、それに応えてくれる者はいない。

 それに、それを考えるのは後でいい。


 次に空から降ってきたのは氷の槍。

 その氷槍の数は千を超える。


 千の氷槍が凄まじい速度でアルゴへと落下。

 同時に、万の雷も空から落下。


 圧倒的な物量。


 だが、アルゴは動じない。


 迫りくる氷槍と雷を全て魔剣で斬った。


「なにあれ……本当に人間?」


 そんな風に驚くガブリエルの姿を捉えた。

 ガブリエルは神殿の塔の上に居る。


 アルゴはガブリエルに狙いを定め、一気に駆けた。

 砂地を駆け、神殿の壁を足場に塔の頂上付近へと接近。


「や、やばッ!?」


 ガブリエルは動揺している。

 これは好機。

 アルゴは、ガブリエルを斬り裂こうと更に接近。


 その瞬間、真横から鋼の刃が接近。


 高い金属音を響かせて、二つの剣がぶつかった。


「邪魔をしないでください」


「それは無理な相談だ」


 アルゴは、地面に着地してマティアスを見据えた。


 この獣人、以前より強くなってるな。

 多分、相当鍛錬してる。


 それでも、一対一なら負けることはない。

 だがマティアスは、一対一にならないよう上手く立ち回っていた。


 マティアスは建物の影に隠れながら、アルゴから離れていった。

 アルゴは追いかけようとするが、氷槍と雷がそれを許さない。


 三人の連携は厄介だった。


 アルゴは敵の攻撃をいなしながら、軽く息を吐いた。


「駄目だな、これじゃあ。こんな体たらくじゃあ、盟主の騎士なんて名乗っちゃいけない」


 もっとだ。もっと速く動け。もっと速く剣を振れ。もっと速く敵を見つけろ。

 もっと集中しろ。


 明鏡止水。

 やはりこの力に頼らざるを得ない。


 これは極度の精神集中が必要であるため、無制限に発動することはできないし、発動時間にも限りがある。

 いまの自分に維持できる時間は、せいぜい百八十秒。


 だがその代わり、得られるものは絶大。


 あらゆる情報が流れ込んでくる。

 それは、とめどなく混沌としているようで、澄みきった水のような世界。

 アルゴは、その世界から必要な情報を手繰り寄せる。


 瞬間、この世界の構造を理解した。

 この世界は一つの都市だ。白い建物は外の世界とは別の技術で造られている。

 それを理解し、同時に敵の位置を捕捉した。

 敵の姿が見えているわけではない。

 だが分かる。敵がどこに居るのか。敵の位置までの最短距離すらも。


 敵の位置を把握し、アルゴは走り出した。


 雷と氷槍を斬り裂き、駆け続ける。


 そして。


「ダービュランス」


 右手を後ろに向け、魔術を放った。

 アルゴは一瞬たりとも後ろを見ていない。

 見る必要がなかった。


「―――くッ!」


 強風を浴びたマティアスは吹き飛んだ。

 アルゴとはまだ距離があった。

 この距離で気付かれるはずがない。そう思っていた。

 その予想に反し、マティアスとアルゴの距離が大きく開く。


 アルゴはその内に、ガブリエルに接近。


「こ、こないでよッ!」


 前方より氷槍が飛来。

 それをアルゴは叩き斬る。


 ガブリエルは建物の屋根の上に居る。

 ガブリエルとの距離はあとわずか。


 獲れる距離だ。


 とアルゴは確信するが、同時に理解していた。


 アルゴは足を急停止させ、真横に跳ねた。

 そして、左側の建物の屋根へと向かって飛び上がった。


「―――なんだと!?」


 キリルが声を上げた。

 キリルは、アルゴの死角から攻撃を放とうとしていた。

 だが、アルゴはガブリエルから急にキリルへと狙いを変えた。


 キリルは意表を突かれた。

 逃げ出そうとするが、一歩遅かった。


 アルゴの魔剣が軌跡を描く。


 アルゴは今度こそ確信した。

 これで一人目。


 だが、敵もさるもの。


 アルゴもまた、意表を突かれた。


 魔剣が弾かれた。

 それは硬く、金色に輝いていた。


 魔剣が斬ろうとしていたものは、キリルの体だったはずだ。

 しかしそれは、人の肉体ではない。


 それは、金色に輝く巨大な弓。


「これは……驚いた……」


 キリルの体が、金色の弓に変化していた。

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