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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第六章

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185.敵の正体

「よい頃合いじゃ。そろそろ話しておこうぞ」


 幹部たちが集まる作戦会議室で、ミレトが声を上げた。


 ミレトは前に出て続ける。


「我らは何故、アルテメデス帝国に負けた? それは、アルテメデス帝国には危険な存在が居たからじゃ。では、その危険な存在とは何だ? ゲオルグ、答えてみよ」


 指名されたゲオルグは、蓄えた脂肪を震わせて答えた。


「はい。それは、帝国の大将軍でありましょう」


「その通りじゃ。帝国の大将軍。我らは奴らに負けた。と言っても過言ではない。奴らは単独で軍に迫る力を持っておる。たった一人で、戦場を火の海に変え、凍える大地に変え、万の雷が落ちる地へと変える。まさしく兵器よのう。では、その兵器の正体は何じゃ? 奴らは何者なのじゃ?」


 その問いにはネロが答えた。


「彼らは私たちとは異なる存在です。クリストハルト将軍の正体は、双頭の怪鳥であったと聞いております。そして、アレキサンダー将軍の正体は炎を纏う骸でした。私はそれをこの目で目撃しました。彼らは化け物です。それだけは断言できます」


「そうじゃの。奴らは化け物じゃ。では、その化け物はどこからやってきた? 何故、帝国側についておる?」


 その質問にはパルテネイア聖国の幹部の一人が答えた。


「大将軍たちについては、聖国の方でも調べました。ですが、彼らに関しては驚くほど過去の情報がない。まるで……ある日突然、ふって湧いたような……」


「それじゃ」


 ミレトは、扇子を広げて続ける。


「ある日突然ふって湧いた。妾は、それが正解じゃと思うとる」


「ミレト様、それはどういうことでしょうか?」


「妾は異界の魔女じゃ。妾の得意とするのは召喚。異界の化け物どもと契約し、この世界に召喚する秘術じゃ。召喚術を扱えるのは、この世で妾だけだと思うておった。それに、妾は今まで、奴らを人じゃと思っておったゆえな……。それゆえ、思い至らなかった。奴らの正体を暴いた坊やには感謝じゃのう」


「そ、それはつまり、大将軍は異界から召喚された化け物だと……いうことでしょうか?」


「妾はそう考えておる」


 それを聞いて作戦会議室がざわつき始めた。


 その中で、メガラは冷静だった。


「では、その化け物どもはどうやって……いや、誰に召喚された?」


「断言することはできんのう。だが、大将軍らは誰に従っておる? それを考えれば、自ずと見えてくるでありましょう」


「アルテメデス帝国現皇帝、マグヌス・アストライアか」


 そうメガラが発言するのを聞いて、ゲオルグが声を上げた。


「なんと! 皇帝が召喚者であったか!」


 メガラはそれに言葉を返す。


「そうと決まったわけではない。だが、最有力候補の一人であることは間違いないだろう」


 ゲオルグは、顎に手を置いて独り言のように言う。


「うーむ。マグヌス・アストライアは謎の多い人物ですからな。彼は表舞台に立つことが極端に少ない。彼の来歴は確か……」


 ゲオルグは続ける。


「彼は三十年ほど前、突如として挙兵し、アルテメデスを武力で纏め上げた。そして当時の王を討ち取り、その後、アルテメデスを帝国と呼称。さらに、自らのことを皇帝と名乗る。そのことから、『僭帝(せんてい)』アストライアと揶揄されている……」


 ミレトは言う。


「マグヌスは騎士の家系に生まれたのであったのう。その者が何故挙兵し、そして何故皇帝を僭称したのか、それはこれ以上考えても分からん。だが、我らは僭帝アストライアを召喚者だと仮定し、この者を討つべく、より一層団結するべきじゃ」


 ネロは尋ねる。


「それはつまり、ルタレントゥムの奪還を果たしたとしても、戦いは終わらない……ということですね?」


「そうじゃ。皇帝を討たなければ、戦いは終わらない。皇帝が生きている限り、化け物が召喚され続けるからのう。そうなれば、我らはまた窮地に立たされてしまう」


「余もそれに同意だ。皇帝は今この時にでも、新たなしもべを召喚しているかもしれんしな」


 そのメガラの言葉にミレトは頷く。


「で、ありんすな。けどまあ、そうポンポンと召喚できるものではありんせん。召喚―――化け物どもとの契約は、命を削る行為に等しい。契約には代償が必要であるからの。強力な力を持った化け物との契約となると、その代償の大きさは計り知れん。如何に優れた召喚術者であろうと、数年がかりの……あるいは数十年がかりの大事となろう」


「ほう。では四人の大将軍を召喚した皇帝は、すでに大きな代償を支払っているということだな?」


「皇帝が召喚者だと仮定するならば、そういうことになりましょうな。はて、何を支払ったのか……。それを想像するだけで、妾には身の毛もよだつ思いじゃ」


「よかろう」


 と言って、メガラは立ち上がる。


「皆の者、聞け! アルテメデス帝国現皇帝、マグヌス・アストライア! 今日よりこの者を召喚者と仮定し、最終討伐目標と定める! これが意味するところは、我らの戦いはまだまだ続くということだ! ルタレントゥムを奪還しても、我らの戦いは終わらない! そこからが始まりである! 各人、これを胸に刻め! 不撓不屈の精神と、難事をはねかえす鋼の意志で! 命ある限り、戦い続けろ!」


 そう檄を飛ばすメガラに対し、一同は頭を下げた。


 盟主様の御心のままに、と。

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