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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第六章

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180.誇り高き民族

 アルゴはメガラに連れられて、ヴェラトス砦の最上階に来ていた。


 後ろにはリリアナがいるが、リリアナは何も喋らない。

 リリアナは、メガラの護衛に徹しているようだ。


 最上階の通路にて、メガラは足を止めた。


「アルゴ、お前もお前だ。あの女にノコノコとついて行くな」


「……ごめん。どうしても二人で話したいって言われたから……つい」


 肩を落とすアルゴの様子を見て、メガラは軽く溜息を吐いた。


「まあ……反省しているのならよい。それに、余も悪かった。あの女の危険性を説明していなかったな」


「危険性?」


「ああ。アルゴ、外を見てみろ」


 そう言われ、アルゴは窓から外を眺めた。


 外には大勢の兵士の姿。

 ヴェラトス砦に存在する兵士の数は、五千を超える。

 ルタレントゥム残党兵、イオニア連邦兵、アスガルズ王国兵、パルテネイア聖国兵からなる混成兵団である。


 その中でパルテネイア聖国兵はよく目立つ。

 翼の紋様が描かれた黄色い兵装を纏っているため、一目でパルテネイア聖国兵だと分かる。

 パルテネイア聖国兵の種族は人族が多い。


「パルテネイア聖国の人族は、大陸中央部や東側の人族に比べ色素が薄く、青い瞳を持つ者が多い。魔族からすれば大した違いはないように思うが、彼らにとってはそうではない。パルテネイアの者たちは、パルテネイア人であることに誇りを持っている。白い肌と青い目は彼らの誇り。彼らは、自らのことをアステリアと称する。古代語で星々の民という意味だ。ということからも分かる通り、パルテネイア人は誇り高い民族なのだ」


「誇り高い……民族」


「その誇り高い民族を動かしているのは……こうして戦場に駆り出しているのは、誰だと思う?」


「それは確か、パルテネイア聖国の偉い人……聖王だっけ? その人なんじゃないの?」


「表向きはな。だが、聖王を操っている者が居る。その者こそが『異界の魔女』ミレト・ガラテイアだ」


「あの人が?」


「男を篭絡し、意のままに操るのは、あの女が得意とするところ。証拠はないさ。だが十中八九、あの女は聖王を誑し込んでいる」


「……」


「だから気を付けろ。あの女は頼もしくもあるが……その反面、恐ろしい女なのだ」


「分かった。気を付けるよ」


「うむ。それでよい」


 メガラは満足げに頷いて、続けて言う。


「さて、余はこれから軍議に参加せねばならん。アルゴ、リリアナ、お前たちもこい―――と言いたいところだが、今日はよい。二人とも、今日はもう休め」


 それに対し、今まで黙っていたリリアナが口を開いた。


「盟主様、それには及びません。私は、盟主様と共にいきます」


「リリアナ。お前は本当に頭が固いな」


「そ、そうでしょうか?」


「休めと言ったら休め。これは命令だ。他の連中には、余が休むと命じたと言っておく」


「命令……ですか。それでしたら……了解しました」


 それを聞いてメガラは少し笑い「では行く」と言って歩き出した。


 アルゴは、メガラの小さな背中を見つめ、声を上げた。


「メガラ! ありがとう!」


 メガラは足を止めず、右手をヒラヒラと振って反応。


 アルゴはリリアナに視線を移し、頭を掻きながら言う。


「メガラに気を使わせてしまいましたね……」


「はい。あの方は本当にお優しい」


「それじゃあ、あの時の約束を……やりますか?」


 それは、ベリアル城でベリアルと戦う前日にした約束。

 ここを出たら二人で話をしよう。

 お互いのわだかまりが解けるまで。


「はい。随分と、時間が経ってしまいましたね」


「ははっ、そうですね。お互い、忙しかったですから」


 そう言ってアルゴは、柔らかく笑った。


「ええ……とっても……」


 リリアナは顔を僅かに俯けた。

 赤くなる顔を誤魔化すように。

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