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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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168.契約と決闘

 ベリアル城中央部。

 大広間にて。


「オレっちは神だ。人類に神は殺せねえ。だが逆に、それは神にも言えること。神は人類に危害を加えることはできねえ。これは神に掛けられた縛り。この縛りを破ることは不可能」


 ベリアルがそう発言し、リリアナが尋ねる。


「では、どうやって戦えと言うのでしょう?」


「そこでだ。新たな縛りを設ける。オレっちとキミらの間でな。そうすれば、オレっちとキミらのステージを合わせることができる」


「縛り……ですか。具体的にはどうやって?」


 パチン、とベリアルが指を弾いた。

 その直後、青白い文字が空中に浮かび上がる。


「それがオレっちとキミらの間で交わされる縛り。つまり契約だな。よく読んでからサインしてくれよ」


 アルゴ、クロエ、リリアナの目の前の空間に、青白い文字が浮かび上がっている。


 文字にはこう書かれていた。

 神ベリアルと以下三名は、互いに死力を尽くして戦うことをここに誓う。

 アルゴ・エウクレイア。

 クロエ・ジュノー。

 リリアナ・ラヴィチェスカ。


 この契約に同意すれば、神ベリアルと上記三名は、お互いを殺し得る存在へと変化する。

 これに同意する場合は、名を刻まれたし。


 アルゴは浮かび上がった文字を読んだ。

 この契約に同意すれば、ベリアルとの決闘が始まる。

 神と戦うことへの躊躇いと恐怖はある。

 しかし、今更引き下がる訳にはいかない。

 アルゴは、空中に人差し指を走らせた。

 指になぞって青白い線が空中にひかれ、名前が刻まれた。


 左右を見れば、クロエとリリアナも名前を刻み終えたところだった。


「ベリっち。始める前に言わせて欲しいニャ。この城でのモテナシ、心から感謝するニャ。そして、こうやって真正面から戦ってくれることも、本当に感謝だニャ。ありがとう、だニャ」


「私も深く感謝いたします。ありがとうございます」


「俺もです。色々と良くしてくれてありがとうございます」


 ベリアルは手を叩いて笑い声を上げた。


「ハハハッ! いいってことよ! だけど気にしなくていいぜ。言っただろう? オレっちはこの世界に飽き飽きしてんだ。むしろ、キミらには感謝だぜえ」


「はい。それでも私たちは感謝するべきでしょう」


「ふーん。まあ、美女から感謝されて悪い気はしないぜえ。ああ……けどよう、これも昨日言ったが、オレっちは自決することも、わざと殺されてやることもできねえ。それはつまり、この決闘で手加減はできねえってこと。決闘が始まっちまえば、オレっちは全力でキミらを殺さなきゃならねえ。これは絶対の縛り。こればかりは、どうやっても無効にはできねえ」


「それでいいニャ。全力でくるといいニャ。クロエも全力でやるニャ」


「ふふん、いい殺気だ。さーて、準備はいいかい?」


「いいニャ」


「私はいつでも」


「俺もです」


「よーし。じゃあ、始めようぜ! なーに、肩の力を抜きなって。もし負けても、死ぬだけだ」


 ベリアルに向かい合うアルゴたちは、それぞれ武器を構えた。

 ベリアルは無手だが、アルゴたちが油断することはない。


 四人は、動き出すタイミングを見計らっている。

 誰が最初に動くのか。相手がどう動くのか。

 それを見極める。


「ハハ―――ッ! このピリつく感じ、サイコーだぜ! そんじゃまあ、オレっちは―――」


 ベリアルは、素早く動き出した。


「―――逃げる!」


 そう言って、ベリアルは背後の扉へと駆け出し、通路へと逃げ出した。


 予想外のベリアルの行動。

 呆気に取られたアルゴたち三人は、数秒間固まってしまった。


 そして、一早く復帰したアルゴが声を上げた。


「追い掛けましょう!」



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 大部屋を出て通路へと出る。


「どこにいったニャ!?」


 通路にはベリアルの姿はなかった。


 通路を少し進むと、そこから先は三又に分かれている。

 ベリアルがどの道を行ったのかは分からない。


「どこから行きましょう?」


 とアルゴが尋ねた。


「そうですね。どの道を選ぶのか悩みどころですが、このまま三人で固まって動くか、それともバラバラに動くか、それも考えなければなりませんね」


 バラバラに動いた方が効率的であるのは間違いない。

 しかし、相手の実力が未知数である以上、固まって対処に臨むべきだろう。


「固まって動きましょう。ばらけるのは危険だと思います。クロエさんもそう思いますよね?」


「……そう思う、ニャ」


 クロエはアルゴに視線を向けてそう答えた。

 この時点でアルゴは理解していた。

 今日、クロエはリリアナのことを無視している。

 クロエがリリアナの提案に反応することはないだろう。

 だからアルゴは敢えてクロエに話を振ったのだ。


 アルゴはクロエに頷いて発言を続ける。


「それじゃあ、三人で固まって動きましょう。それで、どの道を選びましょうか?」


 リリアナとクロエの間に立って、両者の顔を窺う。

 アルゴは両者の意思を繋ぐ架け橋の役目だった。


「アルくん」


「はい」


「クロエの目が……おかしいのかニャ?」


「はい?」


「あれ、あれ見て」


 アルゴはクロエが指差す方向へ顔を向けた。


 アルゴたちは今、幅の広い通路に立っている。

 通路の両端には、約三メートル間隔でベリアルの石像が置かれている。


 アルゴは目を疑った。


 ベリアルの石像がゆっくりと動いている。


「動いてる?」


 ベリアル像の数は、五十体以上。

 それらが全て動き出している。

 錯覚ではない。

 確実に動いている。


 そしてその現象が、アルゴたちにとって都合の良いものであるはずがなかった。


 石像たちが襲い掛かってくる。


「応戦するしかないニャ!」


 石像たちは硬い拳を武器にして襲い掛かってくるが、動きはそれほど速くない。


「これでも食らえニャ!」


 クロエの鎖が唸り、石像の表面を削っていく。


 アルゴとリリアナも石像たちに攻撃を加える。


 三人の武器が石像たちを砕いていく。

 だが、石像は頭を砕かれても動き続けている。


 それを見てリリアナは、メイスを石像の脚に叩きつけた。

 石像の脚が砕け、石像はバランスを失う。

 そして、石像は床に倒れ身動きが取れなくなった。


「脚です! 脚を狙ってください!」


 脚を砕けば石像の動きが止まる。

 それに活路を見出すアルゴたちだったが、石像の数が多すぎる。

 石像たちの攻撃を捌ききれず、三人は後退を強いられる。


 更に大部屋から新手。


 新たな石像が大部屋から現れた。

 その数は百は超える。


「くそッ! 数が多すぎる!」


 アルゴはそう声を荒げながら、石像たちの狙いを理解する。

 石像たちは、アルゴたち三人を分断するように立ち回っている。

 石像たちの狙い通りにさせるわけにはいかないが、如何せん数が多すぎる。


 リリアナが声を上げる。


「仕方がありません! ここでこれ以上相手をするのは難しい! バラけることになりますが、一度この場から逃げ出しましょう!」


「わ、分かりました! クロエさん! それでいいですか!?」


「……くッ。了解だニャ。アルくん! 気を付けてニャ!」


「はい! クロエさんも!」


 アルゴは石像と戦いながら、また声を上げる。


「お二人とも! 無事でいてくださいね!」

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