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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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162.軟派な男

 男の名はベリアル。

 男自身がそう名乗った。


 ベリアルの外見年齢は二十代。

 細身だが、筋肉はよく引き締まっている。

 頭髪は派手で、金色をベースに赤緑と三色からなる髪色は、まず地毛ではないだろう。

 顔は整っているが、上品だとか高貴だとかいう印象はまるで受けない。

 キザっぽい笑みと浮ついた態度が、この者の性格を表している。


「イヤーッ。イイねー、どっちもカワイ子ちゃんだ。猫の嬢ちゃんはクロエちゃん。ツノのお姉ちゃんはリリアナちゃん。うーん、どっちも好みだ!」


「クロエ、この男ちょっと苦手かも」


「私もです」


「おいおい! ツレないじゃない!? でも、それもまたイイねッ! イエッ!」


 やたらとテンションの高いこのベリアルという男。

 この者が何者なのか、それをアルゴたちはベリアル自身から聞かされていた。


 ベリアルは、自身を神と呼んだ。

 曰く、このダンジョン―――もといこの世界を創った神なのだと。

 まったく信じられる話ではなかったが、ベリアルは奇跡を見せた。

 ベリアルが手を叩くと、砂の上に倒れていた白髪の女たちが消え去った。

 まるで、砂に溶けるように消えていったのだ。

 ベリアルは白髪の女たちを砂人形と呼んだ。

 ベリアルの力で創り出した人形なのだという。

 その奇跡の力を間近で目撃したアルゴたちは、一先ずベリアルの話を聞くことにした。


 幸いなことに、ベリアルに戦う意志はなかった。


 ベリアルが言うには、このダンジョンは正確にはダンジョンではないらしい。

 ダンジョンを模倣して創った異世界。それがこの場所の正体である。


 ゆえあってベリアルは、この世界から出られないようだ。

 ベリアルは、この世界に侵入したアルゴたちのことに気付いていたが、久方ぶりの訪問者ということもあって、観察と試験を実行した。

 そして砂人形との戦闘―――試験を終え、ベリアルはよやくアルゴたちに接触した、というわけである。


 それからベリアルは言った。

 オレなら、キミらの目的を叶えてやることができるぜ。

 

 アルゴたちの目的は、ドワーフたちに掛けられた呪いを解くこと。呪いの大元を破壊することだ。

 この世界を創った神であるというのなら、確かにベリアルは何かを知っているはずだ。


 ベリアルは更に言った。

 まあ、そう慌てなさんな。久方ぶりの客人だ。まずは、オレの城に案内しよう。

 そこでゆっくり話をしようや。


 それを断る理由はアルゴたちにはない。

 可能な限り早く呪いを解除したいが、ベリアルは貴重な情報源。

 ベリアルに逆らわず、機嫌よく情報を吐いてもらうのが最上だろう。


 ここまでで分かる通り、ベリアルは軟派な男だ。

 とても超越的な存在だとは思えない。


 アルゴはベリアルに不信感を抱きつつ周囲に目を向けた。


 流れていく風景。

 連続する弱い揺れ。

 砂の上を滑るように移動するサンドワームの上にアルゴたちは乗っていた。


 ベリアルが言うには、このサンドワームはペットとのことだ。


 サンドワームの目的地はベリアルの居城。


 アルゴたちは、このまま目的地へと向かう。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 砂上の楼閣という言葉がある。

 どれだけ立派な建物も、砂の上に建っていたのでは容易に崩れてしまう。

 すぐに崩れ去ってしまうという意味で、不安定で移ろいやすいもの、現実味のないこと、実現不可能なこと、などをさす言葉だ。


 アルゴの目の間には、まさに砂上の楼閣が存在した。

 砂の上に建てられた巨大な城。

 石造りの巨大な城だ。


 それは砂の上に建てられており、脆く崩れ去ってしまう不安定な城だ。

 しかし、ベリアルはそれを笑いながら否定する。


「ハ―――ハハハッ! オレの城はそう簡単に崩れねえよ! なんたって神の居城だぜえ? 安心安全の快適な城さ! だから安心してくれよ、可愛い子ちゃんたち!」


「……それはよかったニャ」


「良かったですね」


「う―――ん! 反応が薄い! けど、いいぜえ! それでこそだぜ!」


 ベリアルはハイテンションでその場で踊り出し、クルッと回った。

 そして、体を止めて人差し指をアルゴに向けた。


「ところで……あー、アルゴって言ったかい? この城に男は入れたくねえんだが……そういうわけにもいかねえよなあ」


 ベリアルは頭を掻いて溜息を吐いた。


「しかたがない。今回だけ特別だぜえ。まあ……よく見れば可愛い顔してるしなあ。ギリギリ許容範囲ってことで!」


「は、はあ……。ありがとう、ございます?」


「うんうん。感謝してくれよお! さあ、レッツゴー! だぜえ!」


 そう言って、指を弾きながら上機嫌で歩き始めるベリアル。


 アルゴたちは、ベリアルに続いて歩き始めた。

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