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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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155.闇の先に

 ダンジョンへの入り口は、玉座の間に存在した。


 玉座の間に鎮座する鉄の玉座。

 入り口は、その玉座の裏に隠されていた。


 カストゥールが何事か唱えると、床が白く輝き出した。

 その輝きが消えた時、床に穴が出現。

 床に空いた穴。

 穴の先には、どこまでも続く闇。


「汝らに女神の加護があらんことを」


 バルナバルはそう言って、首から下げたメダルを握りしめた。

 メダルには翼の紋様。女神アンジェラに仕える者の証。


 カストゥールは、何も言わなかった。

 ただ穏やかな顔をアルゴたちに向ける。


「では、行ってきます」


 とアルゴが言ったあと、クロエが声を上げた。


「安心していいニャ! クロエにかかれば、ダンジョンなんて楽勝ニャ!」


 リリアナは、静かに頷いた。

 そして、ダンジョン入り口に目を向け、ポツリと言う。


「行きます」


 そう言って、リリアナは闇に飛び込んだ。


「あ! リリちゃん、待ってニャ!」


 クロエはそう叫んでから、アルゴの手を慌てて引いた。


「アルくん、行こう!」


「は、はい!」


 クロエとアルゴも闇に飛び込む。


 三人は行ってしまった。


 バルナバルは、闇を覗き見た。

 先の見えない暗闇に、僅かな恐怖心が湧き上がる。

 だが、この程度の恐怖は何でもない。

 飛び込もうと思えば飛び込める。


 と息巻いてみても、無意味だった。

 何故なら、ドワーフはどうやってもダンジョンに入ることができないからだ。

 闇に弾かれる。まるで、見えない床が存在しているように。


「バルナバル。彼らは、上手くやってくれると思うか?」


「勿論です。女神が彼らを導くでしょう」


 果たして、この闇の先にも女神の加護が届くのだろうか。


 カストゥールは、喉から出かけたその言葉を飲み込んだ。

 代わりに、別の言葉を紡いだ。


「彼らに、感謝と祈りを……」



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 砂の大地。

 見渡す限りの砂。


「ここが……ダンジョンですか……」


 リリアナは、呆気に取られていた。

 それも無理もない話。


 空には青い大空。照り付ける太陽。

 吹き付ける風。風に運ばれる砂。

 ここが地下だとは到底思えない。


「クロエもこれにはびっくりだニャ……」


 ここは、アレキサンダーを討つために踏み入ったダンジョンとは大きく違う。

 あそこも異質だったが、ここはそれ以上だ。

 空があり、星がある。風によって雲が流れ、砂が舞う。


「これって、外に転移させられていませんか?」


 アルゴが疑問を口にした。


「分からないニャ。そう……かもしれないニャ。でも―――」


 クロエは前方に指先を向けた。

 その方向には輝く水晶。

 大きさは、人より少し大きい程度。

 砂から突き出すように生えている。


「目印だニャ」


 以前のダンジョンでもそうだった。

 あの水晶は、ダンジョン最奥へと続く目印だ。


 さらに遠くへ目を向ければ、水晶が一定の間隔を開けて生えている。


「あれを辿っていくしか……ないか」


 やるべきことは決まっている。

 水晶を辿って進むしかない。

 もう帰ることはできない。

 その手段がない。

 玉座の間から闇に飛び込んだはいいが、気が付いたらこの砂の地に放り込まれていた。

 周囲を見渡しても入り口、もしくは出口のようなものは見当たらない。


「いいニャ、いいニャ! やってやろうじゃニャい! 二人とも、気合入れるニャー!」


「は、はい」


「……」


 控えめに言うアルゴと無言のリリアナ。

 自身との温度差にツッコミを入れることなく、クロエは進みだした。

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