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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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153.リリアナの考察

 アスガルズ王国。

 王城にて。


 リリアナは、通路を歩いていた。

 前と後ろにはドワーフたち。

 監視目的のドワーフの兵士たちだ。


 リリアナは、歩きながら考える。

 つい数時間前の出来事を。

 玉座の間で、ドワーフたちの王とまみえた時のことだ。


 ドワーフの王カストゥールは、優しさと強さを合わせ持つ善き王だ。

 決して凶王ではない。暴君でもなければ暗君でもない。

 名君……と言えるかはまだ分からないが、少なくとも凡夫でないことは確かだ。


 そんな王が他国へと軍を差し向けた。

 その理由を考えなければならない。

 他国の資源を奪うため。食料や水、土地を奪うために軍を進めた。

 という可能性は低いだろう。

 何故なら、この王国は、凄まじい技術によって大きな繁栄を見せている。

 活気に満ち、衣食住に困っている様子はない。

 だから、戦争という大きなリスクを冒してまで、他国の資源を奪う理由がない。


 これが王の暴走と言うのなら頷ける。

 王が臣下の反対を押し切り、無理やり軍を動かしたというのならまだ納得がいく。

 だが、あの王がそんなことをするはずがない。

 実際に王とまみえた今、それは断言できる。


 では何故だ。

 今までドワーフたちは他国に干渉しようとしなかった。

 それが今になって軍を動かし、他国を侵略しようとしている。


 そのヒントは、玉座の間でのカストゥールの言葉に含まれている。

「ダンジョンへと通じる入り口がある」

 それこそがヒントだろう。

 ダンジョンに何かがあるのだ。

 軍を動かさなければならない理由が。


 カストゥールは、ダンジョンに何があるのかを言わなかった。

 ダンジョンへ行けとも言わなかった。

 おそらく、言えなかったのだ。

 その理由は、ガリア砦で捕らえたドワーフたちの末路から予想できる。

 捕らえたドワーフたちは、情報を吐こうとした瞬間、死んだ。

 非常に不可解で奇妙だが、それを混成軍の幹部たちは呪いと推察した。


 呪い。そう、ドワーフたちは呪いに侵されているのだ。

 その呪いの詳細は分からないが、予想できることはある。

 ドワーフたちが他国へ侵攻する理由も、その理由を喋れないのも、呪いが原因だ。


 その呪いの大元は、きっとダンジョンにある。

 だからカストゥールは、ダンジョンという単語を口走ったのだ。

 ドワーフたちは呪いによってダンジョンには入れない。

 呪いによって、王国外の者に対してダンジョンに行ってくれと依頼することができない。

 おそらくそれは言葉だけではなく、伝えようとする意思を封じられている。

 例えば文字で伝えることも不可能なのだろう。

 だから「ダンジョンへと通じる入り口がある」という言い方になってしまったのだ。

 それが精一杯。そういうことなのだろう。


 つまりこれは、カストゥールからの依頼。

 ダンジョンに入り、呪いの大元を破壊しろ。

 そうすれば争いは回避される。

 きっと、そう言っているのだ。


 だからバルナバルは試していたのだ。

 その者がダンジョンを攻略し得る強者かどうかを。

 その資質があるのかどうかを。それを選定していたのだ。


 という考察を立て、クロエとアルゴに共有した。

 そして、カストゥールに一度ガリア砦に戻らせて欲しいと要望を伝えたが、それを却下された。


 カストゥールは恐れている。

 情報が広がることを。

 きっと、それも呪いの制約なのだろう。

 呪いは、情報が広がることをよしとしない。


 しかたがない。

 覚悟を決めるしかない。

 三人だけでダンジョン攻略を行う。


 盟主様。どうか、ご安心ください。

 このリリアナ・ラヴィチェスカ、必ずやお役目を果たします。

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