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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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152/250

146.作戦会議室にて

 ガリア砦に設けられた作戦会議室で、メガラは情報を聞いていた。


「結論を申しますと、ドワーフの砦を落とすのは難しい、ということです」


 そう発言したのは、頭部から二本のツノを生やす魔族の男だった。

 年齢は五十代。厳めしい表情。左目には眼帯。

 明らかに只人ではない。


 この者の名は、ルギルド・バルトローグ

 ルタレントゥム残党軍にて将軍を務める男。

 間違いなく、歴戦の猛者である。


「それほどまでに、ドワーフの砦は堅牢か?」


「はい。ドワーフの砦―――ネメレナ砦は、鉄壁の要塞です。あれもまた急造された砦ですが、我々の砦とは質が違います。我らは一度、ネメレナ砦に大攻勢を仕掛けましたが、落とすことは敵いませんでした……」


「ほう。流石はドワーフ、と言ったところか」


「はい。ドワーフたちの建築技術は、我らの数段上をいきます。敵ながらあっぱれですな」


「ふむ。それで、ドワーフたちの目的は何だ?」


「分かりません。ドワーフの兵を数人捕らえましたが、彼らは口を割りませんでした。いや……というよりは、割れなかった、と言った方が適切ですかな」


「どういうことだ?」


「私はその方面の知識に明るくないのですが、あれは……呪い、とでも言うのでしょうか」


「呪いだと?」


「はい。捕らえたあるドワーフの兵士は、覚悟を決めたような表情をしていました。私は、その兵士が口を割ると思ったのです。ですが、その兵士は結局、口を割りませんでした。いや、割れなかったのです。その兵士は……口を開いた瞬間、死んだのですから」


「なに?」


「ある事柄を話そうとした瞬間、命を落とす。そういった類の呪い、ではないでしょうか?」


「呪い……か」


 呪いとは、魔術とは別の体系に位置するこの世界の秘術。

 エウクレイア家に伝わる契約の術と転生の術もまた、呪いの一種である。


 神々が地上に顕現していたと言われる神話の時代。

 呪いは、その神話の時代直後に全盛を振るった術と言われている。

 その術は魔術とは違い、時代を経るごとに廃れ、いまや扱う者は殆どいなくなってしまった。


「ふーむ」


 メガラは、どこか腑に落ちない様子だった。


 難しい顔をするメガラに、ルギルドは言葉を投げた。


「盟主様。我らの軍はよく戦っていますが、ネメレナ砦は落とせませぬ。逆に、ドワーフ軍の大攻勢が予想されます。我が軍はまだ持ちこたえるでしょうが、それでもあと数回が限度でしょう。これから本格的な寒波が到来します。そうなれば、イオニア全土からの物資の供給は鈍るでしょう。それに対しドワーフ軍は、相当な物資の備蓄がある様子。しかも彼らは、我々にはない技術でこの問題を解決しております。つまり、このまま持久戦を続けていては、我らは負けます」


「ならばこそ、和睦だな」


「私も和睦には賛成です。これは我々にとっては回避できる戦い。私はそう思っております。しかし、彼らの意見は違うようです。和睦の使者を送り出しましたが、その者たちは戻りませんでした」


「であれば、尚のこと余の出番だ」


「盟主様……貴方様の性質は変わりませんな。まさかとは思いますが、直接敵陣に乗り込むおつもりではないでしょうな?」


「必要とあらば、それもやむなし」


「何を馬鹿な……」


「分かっている。余とて無駄に命を散らすつもりはない。まずは、もう一度使いを出せ。次はメガラ・エウクレイアが和睦を望んでいると奴らに伝えるのだ」


「左様ですか。しかし……我らの兵は憤っております。もう一度使いを出すなどとんでもない。また殺されるだけだ。そういう意見が上がるでしょう。勿論、命令に背くのならば厳しく処罰します。ゆえに兵士たちは命令に従うでしょうが……それをすれば士気の低下は免れません」


「案ずるな。使いの者は殺されん」


「その心は?」


「お前の話を聞いて、使いの者を決めた。その者は、余が知る限りで一番の強者だ。あいつならば、絶対に殺されん」


「そのような者がいるのですか? その者の名は……?」


 メガラは、ニヤリと笑ってその者の名を口にした。

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