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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第五章

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141.大陸の情勢

 ガブリエルとキリルが居なくなった室内で、ロノヴェは一人で飲み物を口に含む。


「うーむ。やはり茶葉はこれに限りますな」


 そう言って、紅色の飲み物が注がれたカップを揺らし、残りを飲み干した。


「さてさて。吾輩もそろそろ行きましょうか。まずは、決まったことを陛下にお伝えしなくてはなりませんな。陛下は何と言われるでしょうか」


 そんな風にブツブツと独り言を言いながら、ロノヴェは外に出た。


 ここは深い森の中。

 その中にポツンと建つ住居は、やはり不自然だった。


 ロノヴェは森の中を歩き出した。

 そして、しばらく進んだ時、歩みを止めた。


「おっと。いけないいけない」


 パチン、とロノヴェが指を弾いた音が響いた。


 それに何の意味があるのか。

 ロノヴェは、独り言を発さない。


 ロノヴェはまた歩き出した。


 そして、ロノヴェが居なくなり、森に静寂が戻った時、ある変化が起きていた。


 森の中に建つ不自然な家。

 その家が、跡形もなく消え失せていたのだ。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 大陸の情勢は大きな変化を見せていた。


 大陸西部に位置するパルテネイア聖国。

 アッカディア教会の本拠である聖国がついに動き出した。


 パルテネイア聖国が軍を動かしたのだ。

 聖王は女神の名のもとに悪を断罪すると宣言し、聖国軍をプラタイト西側に広がる荒野に進軍させた。


 プラタイト西側に広がる荒野には、アルテメデス帝国軍の砦や監視塔が点在している。

 聖国軍は、その砦や監視塔を次々に落としていた。

 今やプラタイト西側は、聖国軍に制圧されたと言っていい。


 当然、アルテメデス帝国はこれに対抗するが、聖国周辺の小国群を味方に引き入れた聖国は一大勢力と化していた。

 アルテメデス帝国は聖国勢力に押し切られ、苦戦を強いられている。


 しかし何故、パルテネイア聖国はこのタイミングで軍を動かしたのか。

 そして、絶大な力を所持していたはずのアルテメデス帝国が何故負け続けているのか。


 その理由は、ある一点に集約される。

 それは、アルテメデス帝国大将軍、アレキサンダー・ローグレイウッドがこの世から消え失せたことだ。


 大将軍とは、軍の将であると同時に兵器だ。

 その力は、たった一人で戦局を変え得る。

 その兵器を失ったアルテメデス帝国軍の力は大幅に低下。


 パルテネイア聖国は、これを好機と見て軍を進軍させたのだ。

 そして、現在に至るまで連戦を続けている。


 実のところ、アルテメデス帝国が苦戦を強いられている理由がもう一つある。


 アルテメデス帝国東側に存在する数多の国家が連合をつくり上げ、アルテメデス帝国に反旗を翻したのだ。

 連合軍は、西側の聖国軍と同調するようにアルテメデス帝国に軍を進めた。

 アルテメデス帝国は、ヴィラレス砦を基点する防衛ラインで連合軍を押しとどめているが、こちらも苦しい状況が続いている。


 連合軍が善戦している理由も、西側と同じである。

 アルテメデス帝国大将軍、クリストハルト・ベルクマンが消えたからだ。

 東部地域を監視・守護していたクリストハルト・ベルクマンが居なくなった影響は大きかった。


 連合軍の結束は強い。何故それほど強く結びついているのか。

 それは、ある傭兵団の働きによるといわれている。

 アルテメデス帝国への反抗組織ともいわれているその傭兵団は、アルテメデス帝国に危険視されたため地下に潜り身をひそめた。

 そして、ひそかに活動を続けていたのだ。


 東と西の両面から攻められたアルテメデス帝国は、厳しい状況にあると言わざるを得ない。

 それでもアルテメデス帝国本土への侵攻を許していないのは、流石は超大国といったところだろうか。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 大陸西端に位置するイオニア連邦は、周囲を山脈に囲まれた天然の要害であった。

 温暖な大陸中央部に比べ気温は低く、土地は痩せ細っており、決して豊かとはいえない国だ。

 だが、イオニア連邦を守るようにして連なる山脈は、その不利益を覆い隠すほどの利点があった。

 何よりも、他国からの侵攻を受けにくいという利点である。

 大軍が険しい山脈を越えるのは難しい。標高が上がる程に寒さが厳しくなるのだから尚更。


 ゆえに、イオニア山脈と呼ばれるその山脈は、イオニア連邦を守る城壁となっていた。

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