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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第四章

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123.攻城

 プラタイト西側に広がる荒野。


 緑蛇の大群は、荒野を進んでいた。

 地響きと砂埃。

 地面を埋め尽くすほどの緑色の巨体。


 当然、アルテメデス軍はこの異常事態に気付いていた。

 荒野に点在する砦、監視塔から、緑蛇の大移動を確認。

 アルテメデス軍は緑蛇の大群を迎え撃つべく、戦闘態勢を取った。


 緑蛇たちは、進路上に存在する砦や監視塔に襲い掛かっていく。

 しかし目的はあくまでもヴェラトス砦。

 進路上の砦や監視塔に襲い掛かるのは数体の緑蛇のみで、本隊はそのままヴェラトス砦を目指す。


 ヴェラトス砦。

 ルタレントゥム領西側守護の要であり、アルテメデス軍の重要な軍事拠点。

 その規模はヴィラレス砦の半分程度だが、堅牢な城壁はあらゆる外敵を寄せ付けず、駐屯する兵士たちは高度に訓練された強者たちである。


 緑蛇たちの瞳が、聳え立つ城壁を捉えた。


 その瞬間、城壁から放たれたのは、天を覆いつくすほどの矢。

 大量の矢が、雨のように緑蛇たちに降り注ぐ。


 しかし、緑蛇の硬い体表は矢を物ともしない。

 緑蛇たちは、怯む事なくヴェラトス砦城壁へと接近。


 アルテメデス軍の攻撃は止まなかった。


 次に城壁から放たれたのは、巨大な氷塊。

 人よりも大きいその氷の塊は、アルテメデス軍の魔術師たちが放った魔術。


 その氷塊は人にとっては脅威だ。

 だが緑蛇たちにとってはそうではない。

 氷塊をぶつけられても、緑蛇の硬い体表は傷つかない。


 無傷の緑蛇たちは進み続ける。

 巨体をくねらせ、蛇腹で地面を削りながら前進。


 このまま前進を続けるかと思われたが、緑蛇たちに異変が生じ始めた。


 緑蛇の体表、氷塊がぶつかった箇所が凍り付いていた。

 しかも、その凍り付いた範囲がじわじわと広がっていく。


 緑蛇たちの速度が鈍化する。

 それを好機とみて、城壁から続けて氷塊が放たれた。


 緑蛇たちが止まるのは時間の問題。

 それは間違いないが、もうこの時点で緑蛇たちは城壁に近接していた。


 緑蛇たちは、凍り付いていく体を武器として城壁に突進。


 百を超える巨大な緑蛇の大波。


 大波が城壁を破壊していく。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



「城壁が崩れたぞ!」


 スケイルリザードに騎乗する兵士が叫んだ。


 緑蛇たちの突進によって、ヴェラトス砦の城壁が破壊された。

 緑蛇たちは凍り付きながらも、己の役目を全うした。

 しかも、まだ息のある緑蛇がいる。

 生き残った緑蛇は約半数。その中で、動ける状態の緑蛇は更に半数。

 緑蛇は大きく数を減らした。

 それでも、人間たちにとっては十分脅威だった。


 動ける緑蛇たちは、力の限り暴れた。

 巨大な体で人間を潰し、鋭い牙で人間を貫いた。


 アルテメデス兵と緑蛇の白兵戦。

 ヴェラトス砦内で激しい戦闘が始まった。


 スケイルリザードに騎乗するルタレントゥムの分隊は、その戦闘に加わる。


「殲滅しろ!」


 ルタレントゥムの分隊は雄々しい声を轟かせ、ヴェラトス砦内に乗り込む。

 迎え撃つはアルテメデス軍の精鋭たち。


 数ではアルテメデス軍が圧倒的に有利。

 しかし、緑蛇の巨大な暴力と自滅覚悟で戦うルタレントゥム兵の気迫に押され、アルテメデス軍は苦戦を強いられていた。


 アルゴ、メガラ、クロエは、戦闘の隙間を縫って進んでいた。

 三人が目指すのは、ヴェラトス砦内の中央塔。

 中央に存在する天に伸びる巨大な塔。

 その塔の地下に、ダンジョンへと通じる入り口が存在する。


「死ねえええッ!」


 と叫びながら槍を突きつけてきた敵兵を、アルゴはスケイルリザードの背の上で迎撃。

 アルゴは魔剣で槍を防いだのち、すぐさま斬りつけた。

 アルゴが放った鋭い斬撃は、敵兵の肘の内側に入った。

 敵兵が苦痛に顔を歪めて攻撃の手を緩めている間に、アルゴは前進を続ける。

 敵の命を奪うことよりも、先に進むことを優先。


 そうして前進を続けるアルゴは、やがて選択を迫られる。


 敵兵に取り囲まれてしまった。

 突破するには、敵の命を奪わなければならないだろう。


 だがアルゴは、もう迷わなかった。

 アルゴはもう決めていた。

 何を犠牲にしても、どんなことをしても、メガラを守る。


 魔剣を素早く振るい、敵兵を屠っていく。

 敵兵は為す術もなく沈んでいった。


 敵兵を屠りながら、アルゴは視界の端で捉えていた。

 それは、杖を振り翳した魔術師。

 敵の魔術師が、魔術を放とうとしていた。


 敵の魔術師とは距離がある。


 少し面倒だな。


 とアルゴが鋭い視線を魔術師に向けた瞬間、異音を聞いた。


 何かが風を切る音。鉄が擦れる音。

 それは、黒色の鎖だった。

 鎖の先に分銅が装着された、分銅鎖と呼ばれる武器だ。


 鎖が伸び、魔術師の頭部に炸裂。

 頭蓋骨が陥没し、魔術師は絶命。


 その鎖の速度、精度、威力は、熟達の技であることを確信させた。


「クロエさん! 助かりました!」


 鎖を操ったのはクロエだった。

 クロエは童顔で無邪気な性格に反して、武器の扱いに精通し、人体を破壊することを得意とする暗殺者の面を持っていた。


「このまま進むニャ!」

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