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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第三章

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101.墜落

 怪鳥は、赤い四つの目で青竜の姿を捉えた。

 青竜は、矢のような速度で怪鳥へと迫っている。


 最強の生物と呼び声の高い竜種は、確かに強敵たり得る。

 だが関係ない。

 背中の少年諸共、消し飛ばすだけだ。


 風の大魔術が放たれた。


 暴風が、大気を弾き飛ばしながら突き進む。


 アルゴは魔剣を構えて、青竜の背から跳んだ。

 空中に身を投げ出したアルゴは、魔剣を振り抜いた。


 一瞬、無音の時間が訪れる。

 暴風が分散し、やがて威力を落としながら終息していく。


 魔剣は暴風を切り裂いた。

 アルゴは無傷。


 地上へと落下していくアルゴ。

 青竜はアルゴ目掛けて滑空。


 そして再び、アルゴは青竜の背中に降り立った。


 青竜は加速する。

 怪鳥まであと少し。


 怪鳥は鳴いた。

 その鳴き声で空気が大きく震える。


 怪鳥の羽が激しく振動。

 無数の羽が射出。

 アルゴと青竜に向かって、羽が飛ぶ。


 青竜は急旋回。

 空中で身を捻り、怪鳥の羽を躱す。

 しかし、大量に放たれた羽を全て躱すことはできなかった。


 青竜の鱗に、羽が突き刺さる。


 それでも、青竜は戦意を落とさない。

 青竜は空中で旋回し、急上昇。

 その後、両翼を盾に見立てて、前に突き出した。


「小僧! いいな!」


「はい!」


 青竜は降下を開始。

 翼を前方に固定した状態で、重力に身を任せて急降下。


 怪鳥の羽が、青竜へと襲い掛かる。

 青竜は、それを全て両翼で防ぐ。


「キイイイイイイイイイイイイッ!」


 怪鳥は、怒りをぶつけるように鳴き声を上げた。

 このままでは青竜に身を寄せられてしまう。

 アルゴの脅威は十分理解している。


 怪鳥は青竜から離れることを選んだ。

 翼を動かして距離を取ろうとした瞬間、怪鳥の赤い瞳は青白い明滅を捉えた。


 稲光。轟音。


 青竜が放った雷撃魔術だ。

 雷撃は怪鳥に命中。


 だが、怪鳥は殆ど無傷だった。


「キイイイイイイイイイイイイッ!」


 怪鳥は空を飛びながら、再び鳴いた。

 その程度の魔術では、この身を傷つけることはできない。


 怪鳥は嘲るように鳴いた。

 そして、青竜と十分距離を取ったことを確認し、怪鳥は旋回を開始した。


 全身穴だらけにしてやる。

 敵意をぶつけるように、怪鳥は青竜を睨みつけた。


 だが、その時、怪鳥は異変を感じた。


 バランスがおかしい。

 体が左側に流れる。高度を維持できない。


 それもそのはず。

 怪鳥は、左翼を失っていたのだから。


 怪鳥は左翼を失ったことに気付き、激しく動揺した。


 何故だ!? 何が起きた!?


 いや、理由は分かっている。


 アルゴだ。アルゴに左翼を斬り落とされたのだ。

 あの雷撃が放たれた瞬間、隙を突いてアルゴに斬られたのだろう。


 怪鳥は、高度を維持できずに地上へと落下を始めていた。


 まずい。このままでは。


 怪鳥は四つの目で周囲を確認。

 青竜は追撃してこない。おそらく、青竜はもう戦える状態ではない。


 ならば警戒すべきはアルゴ。

 アルゴはどこだ? アルゴの姿がない。

 いや、冷静に考えろ。彼は飛ぶことはできない。

 いまごろ地上に落ちているはず。


 それならば、今やるべきことは―――。


 怪鳥は左翼に全神経を集中させた。


 次の瞬間、失った左翼の再生が始まる。


 数舜後、左翼は完全に再生され、怪鳥は両翼を動かした。

 体勢を立て直し、再び空へ上昇しようと激しく翼を稼働させる。


 だがこの時、怪鳥は気付かなかった。


 思ったよりも高度が落ちており、城壁よりも少し高い位置で浮いていることを。

 そして、城壁の上から飛び立つ一人の人間がいたことに。


 闇の中で鋼が輝いた。


 鋼は美しい軌跡を描き、闇を裂いた。


 怪鳥は自覚した。

 己が持つ二つの頭。

 それが切断されていることに。


 ああ……アルゴくん。どうやら、君の勝ちのようだね。

 まいったね。この私が人間に殺されるなんて。

 ハハッ。なるほどね。人間ってのは、面白いもんだね。


 ああ……マグヌス陛下。

 申し訳……ありません。


 怪鳥の二つの頭部と体は、そのまま地面に落ちていった。

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