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8.何気にヒドイエイデン様に質問です


「とても仲良しなのね」


 エイデン様から離れて近づいていくとアンナが生暖かい目で言った。エイデン様と話したら少し落ち着いた私は、少し歯切れ悪くこたえる。


「……そうかしら?」


「少なくとも私にはそう見えたわ。貴女は何を見てノーステリア様との関係を疑ったの?」


「……隣に並んで気安い口調で話してたわ」


「それだけ?」


 アンナは困った顔で首を傾げた。……だってノーステリア様はとてもお綺麗で、完敗だと思ってしまったのだもの。


「それほど心配はないとは思うけど……。気になるなら何気なく聞いてみたら?」


「何気なく?」


「そうよ。過ぎた悋気は嫌われるわよ」


「!!!」


 ビシリと指をさされて言われた言葉に慄いてしまった。私ったら、さっきエイデン様に嫉妬に駆られた顔で迫ってしまったわ。綺麗って思って欲しくて頑張って支度したのに……。じんわりと涙がにじんでくる。それに気づいたアンナが少し慌てて言った。


「そんなに落ち込まないで!さっき見ていた限りでは貴女の『エイデン様』は怒ってたりしてなかったわ」


「……明日話を聞いてくれるって言ってたわ」


「ほら!大丈夫よ。明日会えるのだから元気を出して!さっきの貴女は見方によっては子犬みたいで可愛らしかったわ」


「…………ありがとう」


 最後の一言は要らなかったのでは、と思いながらもお礼を言った。




 次の日からクラスでの授業が始まった。私の所属する高位クラスは女子生徒が少なく7人しかいない。アンナがいてくれてよかった。


 クラスに入ると最前列の席に見るからに高貴な雰囲気の女子生徒が座っていた。優雅に巻かれた青みがかった銀髪に緑の瞳、私達の学年で一番高貴な身分のエイブラムス公爵令嬢だわ。彼女を挟んでふたりの女子生徒が並んでいる。


 私達は失礼のないよう礼をしてから最後列の端の席に座った。後から入ってきた女子生徒もそれぞれ少し離れて席につく。……派閥があるから距離をとるのは仕方がないわよね。


 私達の国には公爵家が3つあって、常に勢力の綱引きが行われている。このクラスにはエイブラムス家派がふたり、他の公爵家派がそれぞれひとりずついる。私とアンナの家は派閥に無縁ではないけどそれほどは縛られてない。


 男子生徒は人数が多いから平気だけど、人数が少ない女子生徒は寂しいわよね……。これで3年間過ごすのね、と少しだけ悲しく思った。


「私、アンナがいてくれて本当によかったわ」


 小声で言うと、「私もよ」と返してくれた。




 放課後になり、エイデン様が迎えに来てくれた。並んで学園の廊下を歩くなんて恋人同士に見えてしまうかも。思わず顔がニヤけてしまう。


 馬車に乗り伯爵家のタウンハウスに向かうとココが元気よく走ってきた。薄茶色の毛並みが柔らかそうに跳ねる。


「ココ!今日も元気だった?」


 私は膝をついてギュッと抱きしめた。数日ぶりのココの感触、癒やされるわ。そう思いながら目をつぶっている間、ココは静かに尻尾を揺らしていた。


 気が済んだので顔を上げると、私を見下ろしているエイデン様と目があった。立ち上がるのを待って歩き出したので、ココと一緒について行く。行った先のサンルームにはお茶の用意がされていた。私の好きなチーズケーキもあるわ!


 機嫌よくケーキを食べていると、眉間にシワを寄せたエイデン様がこちらをじっと見ていた。

 ……忘れてたわ。きっと「昨日喚いてたのは何だったんだ」とでも思ってるわよね。まずは謝ろう。

 私は手にしていたフォークを置いた。


「昨日はごめんなさい。お仕事中だったのに……」


「それは構わないが、何かあったのか?」


「これと言っては無いのですが……、少し不安になってしまったんです」


「何に?」


 あ、間違えたわ。不安なんて言ったら理由を聞かれてしまうわよね。悋気はいけないって言われたし、どうしよう?

 ちらりと視線を上げるとエイデン様の黒い瞳が真っ直ぐにこちらを見ている。……誤魔化してもきっと無駄よね。


「ノーステリア様が凄くお綺麗で、不安になってしまったんです」


「…………そうか。だが、人は美醜では測れないものだと思うぞ」


 私が純粋にノーステリア様の美しさと自分を比べて落ち込んだと解釈したのね。それも何気にヒドイ。この際聞いてしまおう。


「エイデン様はノーステリア様をどう思ってるんですか?」


「見た目はともかく話しやすいな。お互いに王宮事務官を目指してるから上手くいけば付き合いも長くなるだろうし、敢えて構えないようにしている」


 名門伯爵家のご令嬢なのに王宮事務官を目指してるなんて、自立された考えをお持ちなのね。見た目だけでなく中身も素敵だわ。エイデン様もなんて合理的な考え方。


「それは未来の同僚として大切にしているってことですか?」


「大切とまでは言わないが……、最近は兄君と話すことがあるからその関係で気には止めている。見ているだけだがな」


 ぎゅっと眉間に力が入った。わぁ、「面倒そうだから」って顔に書いてあるわ。


「ノーステリア様は何かあるんですか?」


「言い寄る男は多いだろ。その中でもひとり凄いのがいて、最近ではあいつも絆されてきてるな」


「え!?そうなんですか?」


 私が驚いた声を出すとエイデン様は眉間にシワを寄せて、「相手は悪いヤツではないとは思うがな」と頷いた。


 あんなに浮世離れしたようなお綺麗な方でも絆されちゃうことってあるのね……。少しだけ親近感を覚えた。


 よし。私もエイデン様を押し続けよう。





お読みくださりありがとうございました。

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