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中途半端ブルース  作者: 根立真先


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10/24

10話 はじめてのライブ

 ロックとギターに没頭する毎日を過ごしていた僕は、このロックとギターによって、表向きには、それまでよりも大分明るくなったように思う。

 しかしそれでも、心の奥では相変わらず自信がなく、恥ずかしく、常に劣等感を抱えていた。


 よくこんな事があった。

 女の子も一緒にみんなで話していて、たまたま自分が言った事がすごくウケて盛り上がったりすると、「俺、調子に乗ってると思われないかな」と思い、その後、急にしゅんと静かになってしまったりするのである。

 いつも周りの目ばかりを気にして、自分の気持ちも性格すらもうまく出せずにいた。

 そしてこの頃は、活発な生徒からはよくイジられる事が多かった。

 ごく一部の本当に親しい生徒には、いくらイジられても全然許せるのだが、それ以外の生徒にイジられると、顔では笑っていても、心では相手を本気で憎み見下した。

 僕は人一倍臆病な分、人一倍プライドが高く、人一倍感情の起伏が激しい分、人一倍とりつくろっていた。


 高校生になっても心の中では相変わらずモヤモヤとしていた自分だったが、そんな僕にとって、とても大きな出来事が起こる。

 高校三年生の時、バンドを組んでライブをやる事になったのである。

 しかも僕がバンドのリーダーで、練習日やスタジオの手配、ライブのブッキングといった事を全て率先してやったのだ。


 これは、それまでの自分の人生からしてかなりありえない、画期的な事だった。

 これが所謂「好き」のエネルギーなのだろう。

 僕は人生で初めて、積極的になったのである。


 初めてのライブ。

 それが決まってからはもういてもたってもいられなかった。

 一ヶ月前、家のポストに自分がやるライブのチケットがライブハウスから届いた。

 そのチケットを見て、まだ一ヶ月前なのにメチャクチャ緊張した。

 早くその日になってくれ!という気持ちと、もうあと三ヶ月待ってくれ!という気持ちとが入り混じった変な心持ちだった。

 この一ヶ月間は、浮き足立ったまま、どうも落ち着かないままに過ぎていった。


 そして...

 ついにライブ当日。

 いよいよである。

 入念に支度をして、忘れ物チェックは何回やったかわからない。

 遠足に行くのか戦場に行くのかわからないような、期待と不安でいっぱいの面持ちでライブハウスに向かった。


 現地に着いてからはもうとにかく、ずっとフワフワした状態だったが、全てが新鮮で楽しかった。

 ライブハウスで関係者しか入れない楽屋を出入りしている自分に酔いしれた。

 自分が特別に思えて、人より大人に思えて、大人になれたような気がしてすごく嬉しかった。

 やがていよいよ時間になり、ライブハウスのスタッフさんから声がかかり、ついについに、本番を迎えた。


 まだ暗いステージに上がり準備を始める。

 ワクワクと恐怖でいっぱいになりながら入念にチューニングをする。

 準備が整うとメンバー全員顔を見合わせて、確認するように、確かめ合うように頷きあった。


 演奏開始。

 バンドの演奏開始と共に、それまで暗かった世界が、パッと一気に明るくなる。

 派手でカラフルな、太陽みたいに熱い照明を浴び、汗だくになりながらお客さんを前に演奏をする。

 緊張はしているが、まるで夢の中にいるようだった。

 何か、今まで味わった事のないような興奮と恍惚。

 もうとにかく夢中で演奏し、パフォーマンスも欠かさず、そこには、それまでにはない全く新しい自分が存在していた。


 ライブは無事成功し、やがて興奮の一日はあっという間に幕を閉じた。

 この日、僕は生まれて初めての充実感と満足感をいっぱいに味わったのである。

 そして、高校を卒業したらプロを目指そうと、この時密かに決意した。

 これしかないと思ったのだ。

 もう僕は、完全に音楽の魅力に取り憑かれてしまったのである。


 それからしばらく経ったある日の夜、進路の事で母と話をする時に、僕は思いきってこの決意を打ち明けた。

 僕は完全におっかなびっくり状態でリアクションを待っていたが、意外にも親は好意的で、むしろ「あんたはサラリーマンは向いてない」とも言われた。

 とりあえず応援するスタンスだという事であった。


 準備は整った。

 僕は運動も勉強も嫌いだったし、他に出来そうな事も何もなかったので、もうこれからはギターに全てを賭けようと決めた。

 僕はプロのミュージシャンを目指して歩んで行く事を心に誓ったのである。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 いいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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