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第48話「両親が家に居ない、という事か」

 本日の授業を終えるチャイム音が鳴り響く。

 本来ならこの後に帰りのSTをして、担任が連絡事項を伝える。

 しかし、オタク君はさっさと荷物をカバンにまとめて帰宅の準備をし始めた。


 優愛の様子が気になって、すぐにでも見舞いに行きたいオタク君。

 何度か優愛にメッセージは送ったが、数件しか返事が返って来ないのが余計オタク君を焦らせたようだ。


「ごめん、体調悪いから帰ったって伝えておいてもらえる?」


「オッケー。何か連絡があったら優愛の携帯にメッセージ送っておくね」


 授業中もどこか上の空だったオタク君を見て、村田(妹)は察しているようだ。

 まぁ、クラスメイトも察しているので誰も何も言わない。


「ありがとうございます」


 村田(妹)にお礼を言うと、オタク君は走って教室を出て行った。

 体調不良設定はどこに行ったのやらである。


 下駄箱で靴を履き替え、校門を出て駅まで走っていくオタク君。


(何か栄養になる物を買って行った方が良いかな?)


 ここまで走ってきて、息が上がり始めたオタク君。

 少し歩きながら、お見舞いの品を考える。


(冷蔵庫や戸棚には、食材は十分にあったはず) 


 今まで勉強会などで何度も足を運び、その度にオヤツなどを作っていたオタク君。

 既に鳴海家の台所事情は把握していたりする。


 となると、後は優愛が食べたい物を把握するくらいだ。

 携帯の画面を開き、優愛にメッセージを送る。 


『優愛さん、何か食べたい物とかありますか?』


『ごはんと話し相手』


 食べたい物を聞いているのに、ごはんとはこれ如何に

 

「……もしかして、ちゃんとご飯食べれてないのか?」


 普通家に誰か居れば、ちゃんと食事を食べさせてくれるはずだ。

 なのに優愛は食べたい物と言われ「ごはん」と答えた。

 そして話し相手が欲しいと答えた。つまり。


「両親が家に居ない、という事か」


 だとしたら、まともな物を食べていない可能性があると推測するオタク君。  

 コンビニに立ち寄り、電子レンジですぐに食べられる、チンするごはんを買って行く。

 おかずは冷蔵庫のありあわせですぐに作れるだろうが、米だけはどうしても時間がかかってしまうからである。 


『今電車に乗ったので、もう少しで着きます』


『はい』


 いつもとは違い、簡素な返事だけが返ってくる。

 それだけ優愛が弱っている証拠であろう。

 オタク君の焦る気持ちが募っていくばかりである。


「着いた」


 優愛の家に到着したオタク君。

 インターホンを押すと同時に、玄関のドアが開かれた。


「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”オ”タ”ク”く”ん”」


 開くと同時に、パジャマ姿の優愛が、中から泣きながら飛び出して来た。

 号泣したままオタク君に抱き着く優愛。


「ちょ、落ち着いてください」


「だって」


 このままで居れば、ご近所様からどんな目で見られるか分からない。

 抱き着いたまま離れない優愛の腰に手を当てて、下手なフォークダンスのようなカニ歩きで玄関に入って行く。


 ドアを閉め、改めて優愛に向き直るオタク君。


「どうしたんですか」


「だって、お父さんもお母さんも出張で居ないし、頭は痛いし気持ち悪いし、お腹が空いて、私このまま死ぬんじゃないかと思ったら怖くて」


 体調が悪くなると、心が弱くなる。

 そんな状態で独りで家に居るのは、相当辛かったのだろう。


 それでも親に迷惑をかけないように必死に耐えていた優愛。

 しかし、オタク君の顔を見て、安心した瞬間に溜めていた反動が出てしまったのだろう。

 

 鼻をすすりながら、取り留めのない感じで説明する優愛。

 オタク君は、優愛の背中をポンポンと叩きながら「そうですね」と優愛が満足するまで相槌を続けた。


「ところで優愛さん、お腹空いていませんか?」


 落ち着いたころを見計らって、優愛に声をかけるオタク君。

 返事代わりに、優愛のお腹からくーという可愛い音が聞こえて来た。

 優愛が言い訳をすると、オタク君は苦笑いで返した。


「お昼まだだったから!」


「そうなんですか。じゃあ今から作りますね」


 優愛には部屋で寝るように指示し、台所に立つオタク君。

 

「マジかー……」


 思わず小声でツッコミを入れる程の惨状がそこにはあった。

 食べた後のカップ麺や、コンビニ弁当の残骸が積み上げられているのだ。 

 一つだけ食べかけのカップ麺がある。多分食欲が無くて食べられなかった分だろう。


 片付けをしたい所だが、まずは優愛の食事が優先である。

 とりあえず料理をするスペースだけ空けて、料理を作り始めた。

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