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【完結】ギャルに優しいオタク君【コミカライズ&書籍化】  作者: 138ネコ
リコルート

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238/292

リコルート 2

「おはようございます。優愛さんと委員長、もう来てたんですか」


 オタク君が教室のドアを開けると、優愛と委員長が既に教室に来ていた。


「おはよう。私も優愛ちゃんも今来たところだよ」


「オタク君はリコと一緒に来たの?」


「あぁ、来る途中で偶然会ってな」


 偶然の部分を強めにいうリコ。そうでもしないと「本当は一緒に登校しようって言ったんじゃないの?」と優愛が弄ってきそうなので。

 まぁ、優愛の性格上、偶然を強調したところで弄ってくるのだが。

 しかし、この日は違った。


「へ、へぇ。そうなんだ」


 特に何も追求しようとしない優愛。

 同じく委員長も、何も追求しようとしない。

 何故か?

 彼女たちが、オタク君の席で何かをしようとしていたからである。

 優愛と委員長が、可愛くラッピングされた小袋を片手に、オタク君の席でコソコソと椅子を退かしているところで、オタク君とリコが教室へやってきたのだ。

 何をしようとしているのか一目瞭然である。

 この後、弁解しつつチョコを渡そうとした優愛が思わず「これ、義理じゃないから!」と言ってオタク君にチョコを渡したり、委員長が対抗して「私も義理じゃないよ!」と言い出したりして盛大な自爆をするのだが、なにはともあれ、ハッピーバレンタインである。


「……小田倉、何見てるんだ?」


「イエ、ナンデモアリマセン」


 リコのクッキーは義理じゃないのか気になって、リコを見るオタク君だが、残念だがリコは引っかかってくれなかったようだ。

 クッキーとは違い、甘い女ではないようだ。


 そして、迎えた放課後。

 オタク君は勝利を確信していた。

 優愛が教室に残り村田姉妹やクラスの女子と共に、今年のバレンタインの事で談話中。

 委員長は気が付けばどこかへ消えており、部室に向かっているのはオタク君とリコの二人きり。

 オタク君は何気なくスマホを取り出し、隣を歩くリコに気取られないようにメッセージを送信する。

  

『悪いけど、部室には遅れて来てくれるかな』


『了解でござる』


『ついにですな。頑張るですぞ』


『こちらスネークっす。第2文芸部の近くに人影はないっす。相方、今がチャンスっすよ!』


 事前に今日を告白日にするとチョバム、エンジン、めちゃ美に話していたおかげか、三人からすぐさま返事が届く。

 もはやお膳立てされたような展開である。

 ここまで告白するための展開が用意されてしまえば、オタク君でなくても思ってしまうだろう。この告白は、絶対に成功すると。 

 隣を歩くリコを見て、この後自分が告白する事を考えると、痛いほどの鼓動を感じる。


「ん? 小田倉どうしたんだ?」


「あっ、なんかチョバムとエンジンとめちゃ美が部活には遅れるって連絡今来ましてですね」


「ふーん。そうか」


 リコがオタク君に聞いたのは、挙動不審になっていたので何か気になる事でもあったのかである。

 オタク君は気づかれていないつもりだが、時折リコをチラチラ見ている事に、リコ自身は気づいていた。

 どうしたの問いに対して、聞かれてもいないのにチョバムエンジンめちゃ美が遅れると、少し焦りながら早口言葉で返したオタク君。 

 怪しいが過ぎる。


(さては小田倉のヤツ、女の子のキャラの画像でも見てたか。あの焦り方は多分えっちな格好のやつだろ)


 お色気シーンの時に話しかけたらキョドる弟を思い出し、その姿が今のオタク君と被ったのだろう。

 オタク君の怪しい行動に対し、えっちな画像をたまたま開いてる時に話しかけてしまったのだろう。リコはそう結論付けた。

 そして、その事を部室についたらどうやって弄ってやろうかと考えるリコ。

 今日は優愛と委員長がまだ部活に来る気配はなく、チョバムとエンジンとめちゃ美が遅れてくるので、時間はある。

 顔を赤らめ、オロオロと焦るオタク君の姿を想像するだけでニヤつきそうになるのを、必死に堪え、ようやくたどり着いた第2文芸部。


 オタク君の後に続き、リコは部室に入ると、ドア側を陣取り小悪魔な笑みを浮かべる。


「小田倉ぁ、さっきめちゃくちゃ焦ってたけど、何を見てたんだ?」


 時間があるとはいえ、どれくらい持つか分からない。

 なので早速オタク君をからかおうとするリコが、上目遣いでオタク君を見る。


 オタク君が振り返ると、リコの予想通り顔を赤らめていた。

 一目見て分かるくらい真っ赤な顔をしたオタク君を見て、更に煽るように「ん~?」と少しだけ首を傾げてみせる。

 だが、彼女はすぐに気付く。いつものオタク君と何かが違うと。

 顔を赤らめながらも、困ったり誤魔化そうとしたりせず、ただただ真剣な目をしているだけ。


(やべっ……もしかして怒らせちまったか)


 まっすぐ自分を見てくるオタク君に対し、今度はリコが目を逸らす。

 もしかしたら、今のは調子に乗り過ぎたかもしれない。

 いや、普段から弄ってたせいで、オタク君の限界に達してしまったのかもしれない。

 一度弱気になると、思考はマイナスへマイナスへと向かって行くリコ。

 ごめんなさいの一言が上手く言えず、「あの」「その」を繰り返してしまう。

 リコの目線にあうように、姿勢を変えるオタク君。

 そんな動作に対して、思わずビクついてしまうリコ。


「リコさん!」


 スーッと軽く息を吸い、オタク君がリコの名前を呼ぶ。

 

「は、はいッ!」


 いつもより大きめの声量で名前を呼ぶオタク君に驚き、思わず両手がにゃんこのポーズになってしまうリコ。

 オタク君がリコの名前を呼んで、数秒が経過していた。

 まるで時が止まったかのように微動だにしないオタク君とリコ。

 壁にかけられた時計の針が、カチカチと時を刻む。


 どれだけの時が経っただろうか?

 時間にして数秒か、数十秒か。

 重い空気の中、ついにオタク君が口を開く。


「リコさん。好きです、付き合ってください」

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