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第157話(委員長ルート)「えへへ、私も好き」

 文化祭の賑やかな空気が漂う校舎。

 だが、そこだけはまるで別世界のように静まり返っている会議室。

 普段は教師たちが教員会議に使う場所なので、特に生徒が寄りつかない校舎の隅にあるからだ。

 そんな会議室だが、文化祭と、その準備期間中は文化祭実行委員会の本部として設営されている。


「大きな問題じゃなくて良かったですね」


 そんな会議室の前に、オタク君と委員長はいた。

 文化祭で何かトラブルがあると、解決するために文化祭実行委員が呼び出される。

 今回は『メイド喫茶』について、オプションと呼ばれる内容が些か行き過ぎてないかというクレームが、一部の教員や保護者から来ていたために、そのメイド喫茶の担当である委員長が呼び出しを貰ったのだ。


「うん。でもわざわざついて来てくれてありがとね」


「いえいえ、僕も担当ですし」


 本来は委員長だけが呼び出されていたのだが、オタク君もそれについて来ていた。

 委員長の手伝いをするために、副委員長になったオタク君にとって、実行委員もお手伝いの範疇である。

 お礼を言って微笑む委員長に対し、オタク君はやや苦笑いを浮かべる。

 今回の内容はオプションが行き過ぎではないかという問答。下手をすればその場でメイド喫茶が中止になる可能性もあった。

 なんとかオプションの説明や健全性を理解してもらえるように説明するオタク君。彼の大立ち回りにより、中止は回避する事が出来た。

 もし口下手な委員長だけでは、上手く説明が出来ず、中止になっていたかもしれない。いや、なっていただろう。

  

「雪光さん」


「ん? 何かな?」


「良かったら、このまま僕と文化祭を周りませんか?」


 オタク君、突然のお誘いである。

 

(えっ、これって二人きりで文化祭を周りたいって事かな、ううん、きっと鳴海さんたちも誘ってって意味だよね。でもでも、もしかしたら……)


 思わず顔を赤らめフリーズする委員長。わずか数秒の事ではあるが。

 もじもじしながら、オタク君の顔を見つめ「えっと」を繰り返す事、更に数秒。


「二人きりでって事かな?」


「はい」


 笑顔で答えるオタク君。

 

「は、はい!」


 余裕の笑みを浮かべるオタク君に対し、委員長はいっぱいいっぱいの返事

である。

 しかし、何故急にオタク君が委員長を二人きりで文化祭を周ろうなどと提案したのか?


(雪光さんが実行委員として呼び出されても、これならすぐに手伝える)


 そう、委員長のお手伝いをするためである。

 呼び出しを聞いてから自分も同じ場所に向かう事も出来なくはないが、もしかしたら聞き逃してしまうかもしれない。

 それに、委員長と離れていて到着するまでの間に何かあったら。

 そう思ったオタク君は、一緒に行動する事を提案したのだ。

 気遣いと鈍感の合わせ技である。

 優愛たちには、実行委員の呼び出しがいつあるか分からないので委員長と行動を共にするという内容をスマホで送るオタク君。


「それじゃあ、雪光さんどこか行きたい場所ありますか?」 


「特に決めてないかな。小田倉君は?」


 特にないと答えようとして、少し考え込むオタク君。


「それだったら、吹奏楽部の出し物見に行きませんか?」


「吹奏楽部……あっ、もしかして今第二期をやってるあのアニメの影響かな!」


「正解です。雪光さんも見てます?」


「うん。そういえば先週が丁度文化祭の披露の話だったよね」


「そうなんですよ。吹奏楽ってあまり興味なかったけど、あのアニメ見てたらちょっと吹奏楽の演奏を聞いてみたいなって思って」


「あー、わかる。漫画やアニメで見ると興味出ちゃうよね」


 先ほどまでドギマギしていた委員長だが、共通のオタ話題に切り替わると、気持ちも切り替わったように饒舌に話し始める。

 他の生徒が通らない会議室前の廊下で、会話に花を咲かせながらオタク君と委員長が歩いて行く。

 文化祭の喧騒から離れている事もあり、完全に二人だけの世界である。


「小田倉君は、吹奏楽……好き?」


「好きですよ」


「えへへ、私も好き」


(こっそり告白ごっこ……なんちゃって……)


 子供のような遊びである。

 自分から疑似告白をさせておいて、恥ずかしそうに笑う委員長。

 よく分からないが、委員長が嬉しそうなので微笑み返すオタク君。


(うん。私、やっぱり小田倉君の事が好きなんだ)


 少女はそのドキドキすらも楽しいと思う。

 時折目が合うたびにはにかむような笑顔を向け、オタク君も同じように返す。

 好きな漫画やアニメの話をしながら、オタク君と委員長は吹奏楽部の出し物をやっている体育館へと足を運んだ。

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