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第156話「俺たちは数多のネカマに騙されて成長してきたんだ。その程度では騙されないぜ」

 オタク君の発言に、マスター、とろろんマン、おえっぷが首を傾げる。

 めちゃ美の後ろにいるのかなと、体を傾けてみたりするが、当然誰もいない。

 彼らが訝しむのも仕方がないといえよう。

 普段のネットでのめちゃ美は、事あるごとに「うひょー、新キャラはギャルキャラっすよ!」「パンツが何色か確かめる。それがジャスティスっす!」などと語っている。

 若い子は変に気取ったり照れたりして、こんなはっちゃけ方はあまりしない。なので、仲間内からはおっさんと思われていたのだ。

 実際にオタク君は、彼らとネットでオタク会話をする際に、好きなキャラを語ったりはするが、性癖的な会話はやや消極的だったりする。

 対してフルオープンなめちゃ美、どう考えてもおっさんの行動である。


 なので、マスター、とろろんマン、おえっぷの三人は道中で「おっさんが出てくるに違いない」「おっさんでクラッチと同じ高校という事は教師か」「ギャル好きの教師ってやばくないか?」などと笑って話していた。

 それがどうだ。今目の前にいるのは、色黒ギャルである。おっさんとは真逆の存在である。


「マスターに食べ(もん)コンビ、どうしたっすか?」


 無言になった三人を、心配するように声をかけるめちゃ美。

 彼らがフリーズするのも仕方がないといえよう。 

 しばし待つ事数秒、マスターが納得といった顔で手を叩く。


「あぁ、あれか。クラッチお前やってくれたな。その子にいくら払ってめちゃ美役やってもらってるんだ?」


 マスターの発言に、とろろんマン、おえっぷも「あぁ」と笑いながら頷く。

 自分たちが来るので、驚かせるためにオタク君がギャルにめちゃ美役をやってもらった。そういう結論に達したようだ。


「そういや昔、ダークメールとか流行ったよな!」


「あったあった。知らない女の子から間違いメールを貰って、そこから恋に発展すると思わせるドッキリのあれな」


 ゲラゲラと笑いながら、オタク君の背中をバシバシと叩くマスター。


「悪いなクラッチ。俺たちは数多のネカマに騙されて成長してきたんだ。その程度では騙されないぜ」


 マスターのドヤ顔発言に、これまたドヤ顔で頷くとろろんマンとおえっぷ。

 ドヤ顔で語るには悲しい思い出である。


「いえ、本当にめちゃ美ですよ」


「そっすよ!」

 

 本当にめちゃ美だと説明するオタク君とめちゃ美だが、マスターたちは「いやいや」と聞く耳を持たない。

 普段のめちゃ美の行動がそれほどおっさんじみているのか、それとも彼らがネカマに騙された経験から心を閉ざしてしまっているのか。

 話は平行線のままである。

 マスターたちと一緒に来た女性が、めちゃ美を見てある事に気づく。


「ねぇ、この子、ゲーム内のめちゃ美ちゃんと見た目一緒じゃない?」


「ん? そういえば似てるような気がするけど」


 おえっぷがスマホを取り出し、ギルドメンバーのゲーム内での集合写真の画像を開き、めちゃ美と見比べる。

 目の前にいるギャルは、確かにめちゃ美にソックリである。


「自分のアバターのコスプレっす!」


 胸を張ってドヤ顔を決めるめちゃ美。

 ここまで来れば、彼らも信じざるを得ない。この色黒ギャルが、あのめちゃ美だと。


「ネトゲーのフレンドは女の子じゃないと思ったっすか?」


「いや思わねぇだろ。普段の発言省みろ」


 めちゃ美の、ネトゲー仲間にリアルで会ったら言ってみたい決め台詞。

 それを即座に正論で返すマスター。

 オタク君に助けを求めるめちゃ美だが、マスターの言う通り過ぎて、ただただ苦笑いをするしか出来ない。


「でも、めちゃ美がマジでJKだったのは驚きだったけどな」

 

 そう言って、めちゃ美に自己紹介をするマスター。それにとろろんマンとおえっぷも続く。


「そんでもって、こっちがいつも言ってる俺の嫁さんだ」


 マスターに促され、女性が一歩前に出て、オタク君とめちゃ美に挨拶をする。 


「ゲームにはあまりログインしてないから、そんなにあった事ないけど、クラッチ君とめちゃ美ちゃん、宜しくね」


「えっ、マジで奥さんっすか。それって、リアルネトゲよ……」


「めちゃ美! それ以上はいけない!」


 めちゃ美の発言を遮るオタク君。きっと口にしたらいけないタイトルだったのだろう。

 ネトゲー仲間と一通り挨拶を終えたオタク君とめちゃ美。

 自分たちだけ盛り上がってしまい、蚊帳の外になっている優愛たちに軽く謝りつつ、マスターたちを席に案内する。


「席は机を合わせたところと、床があるけど、どこが良いですか?」


「えっ、床に座ってゲームするとか最高じゃん!」


 床に直置きされてるモニターの前に「ヒャッホー」と掛け声をあげながら座るマスター。


「ちょっ、マスター。そのままだと服汚れるから。ダンボール敷くから待って」


「あ、そういやフリードリンクだっけ。酒はないみたいだから、コーラで」


 モニターの傍に置かれているレトロなゲーム機を見つけ、懐かしいと言いながら物色し始めるマスターたち。

 ゲームを始めると、ワイワイ騒ぎながらゲームをしてジュースを飲む姿は、まるで大きい子供たちである。

 しばらくの間、リアルで会ったギルドメンバーとネトゲーの話で盛り上がっていたオタク君。


「ようこそバーボンハウスへ!」


「そんな餌で俺様が釣られクマー」


 だが、次第に客が入るようになり。気づけば満席に。

 客層が三十代ばかりなので、きっとエンジンが名付けた店のおかげだろう。

 そして、店の名前に惹かれて来たものばかりなので、似たようなノリが多い。


「おーい、パーティゲームするけど、面子足りないから誰かやらない?」


「参加きぼんぬ!」


「キター!!!!」


 似たようなノリなため、初対面同士の客だというのに、意気投合をして仲良く遊んでいる。

 もし一人で来た人でも楽しめるようにと、相手をする準備をしていたオタク君たちだったが、不要だったようだ。


「小田倉殿、そろそろ手狭になってきたし休憩に行ってきて良いでござるよ」


 繁盛しているおかげで、第2文芸部の部室は人口密度が高くなってしまっている。

 なので、何人かは休憩に行くように提案するチョバム。

 

「うん。そうだね」


 誰が休憩に行くかを決め、後はよろしくと声をかけ、休憩するメンバーとオタク君は部室をあとにした。

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