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第153話(リコルート)「そうか、それじゃあ冥土喫茶ってのが気になるから一緒に行くか?」

「小田倉君と姫野さんそろそろ交代の時間じゃね?」


 村田姉妹の姉の方、花音が時計を指さす。


「あれ。もうそんな時間だっけ?」


 そんなに時間が経ったかなと思い、オタク君は時計に目をやる。

 時計は既に昼の一時を指していた。

 いつの間にと驚くオタク君。

 周りを見渡すと、あれだけいた客も、手伝いに来たクラスメイトも居なくなっている事に気づく。

 

「そっかそっか、それじゃあ私も」


「優愛はまだ居残りだからね」


「えー、なんで!?」


「さっき他のクラスの出し物見に行きたいって抜け出したんだから、その分残ってもらうよ」


「えーっ」


 抗議の声を上げる優愛。

 オタク君とリコと一緒に文化祭を周れると思っていたのだから、残念がるのは当然である。

 とはいえ、オタク君からめちゃ美のクラスの出し物を聞き、居ても立ってもいられず一旦クラスの手伝いを抜けだし、一時間以上場を離れていたのだ。

 居残りになるのも、また当然である。


「それじゃあ僕と交代しましょうか? 特に行くところがないので」


「あー、それは流石に悪いから良いよ」


「そうだぞ。小田倉はあまり優愛を甘やかすな」


「代わりにリコと交代するから大丈夫だよ」


「しねぇよ!」


 大体小田倉は優愛を甘やかしすぎなんだと小言を言うリコ。まるで娘を甘やかしすぎる父親を叱る母親のようである。

 それに対し「そんな事ないと思うけどなぁ」と困り顔で頬を掻くオタク君。将来はさぞかし子供を甘やかしてしまうだろう。


「ほら小田倉、行くぞ」


「あっ、はい」


 先を歩くリコの後をついて行き、オタク君も教室から出ていく。

 教室から出て数歩歩き、立ち止まるオタク君。

 そんなオタク君を怪訝な表情で見るリコ。


「どうしたんだ?」


「いえ、行く場所決めてないので、どうしようかなと思って」


「そうか、それじゃあ冥土喫茶ってのが気になるから一緒に行くか?」


「良いんですか?」


「ん? 一人で行くより誰かと行った方が良いだろ」


「そうですね。分かりました」


 文化祭で男女二人きりで一緒にいたら変な噂を流されるかもしれない。

 しかも相手はオタクである自分だから、リコに迷惑がかかるだろう。そんな事を考えて良いのか聞いたオタク君。

 相変わらずの自己評価の低さである。

 

 本当に自分が一緒で良いのか悩んだが、せっかくの文化祭なのに一人で食事をとるリコを想像したら、それはそれで悲しい気分になる。

 なので、リコの言葉に甘える形で一緒に行く事にしたオタク君。


「いらっしゃい、お坊ちゃんお嬢ちゃん」


 校庭にある、天幕のみのテント。そこには椅子と机とずらりと並んでいる。

 ここが冥土喫茶である。

 この冥土喫茶で忙しそうにあくせくと給仕しているのは、PTAや町内会のおじちゃんおばちゃん達である。

 オタク君とリコが適当な席に座ると、割烹着を着たおばちゃんが礼儀正しくお辞儀をする。


「あら、もしかしてカップルかしら。若いって良いわね」


 そして礼儀を投げ捨てた。

 メニューを置き、決まったら呼んでねと言って、おほほほと笑いながら去っていく。


「去年優愛と来た時もこんな感じだったのか?」


「いえ、去年は『若いって良いわね』と言いながら旦那さんとのノロケ話を聞かされた以外は、普通でしたよ」


「そ、そうか」


 文化祭ならではのフリーダム対応である。

 カップルと言われ、リコが気を悪くしてないか気になるオタク君だが、特にリコが気にした様子が無くほっとする。

 残念だが、リコはめちゃくちゃ気にしていた。


(小田倉とカップルって、アタシみたいなちんちくりんでも、周りからはそうやって見えるのか)


 普段はオタク君や優愛と出かけると妹と間違われがちのリコ。

 身長にコンプレックスがあり、周りから見たらそう思われても仕方ないと半ば諦めていた。

 オタク君に恋心はあるが、こんなチビ相手ではオタク君が周りから変な目で見られるかもしれない。

 故に、この恋は諦めかけていたりした。


「……小田倉はさ、迷惑じゃなかったか」


「なにがです?」


「アタシみたいなチビが恋人と思われて」


「そんな事ないですよ。逆に僕なんかでリコさんが迷惑に感じてないかと思ったくらいですし」


「そうか、アタシは気にしてないから大丈夫だ」


 そう言って、横を向くリコ。

 これ以上オタク君を直視したら、にやけてしまいそうなので。


(やっぱり怒ってるのでは!?)


 リコの反応を勘違いし、この後オタク君があたふたしていたのは言うまでもない。

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