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第二話 亜ノ間口カリス



皇歴1600年。



カンブリア帝国、皇帝の執務室では

第16代皇帝ハルキゲニアが机に突っ伏して泣いていた。


手元には一通の手紙がある。

現在絶賛戦争中の敵国の王から届いたものだ。


【オウ、ハルキゲニア。


 無様だナ?


 敗戦まけ る奴は 不運バッドラック と ダンス っちまったの

 ヨ… 】



…何たる侮辱!


怒りと屈辱で顔が赤らむ。

勝者気取りでなぶるつもりか!


悔しい…!こんなのって…!


(実際、この時カンブリアは滅亡間近であった。

連戦連敗の毎日で、いっそ諦めて降伏しようか

考え中だったのだ)


このまま終わりたくない…!

この窮地を脱する力が欲しい。


誰か…!誰でも構わない!


どうかカンブリアを助けてくれ!


(ハッそうだ!

我が国に代々伝わる秘術があった!

決して使うなと言われているが…構うものか!)


…皇帝は禁じられていた秘術を行い、

その結果異世界から1人の女性が召喚される。


彼女が【亜ノ間口(あのまぐち)カリス】である。



亜ノ間口(あのまぐち)カリス視点】


西暦200×年、日本。


その日私は家に居た。


どこにでもある平凡な家庭の休日の昼下がりに

自室でゴロゴロ読書していると

突然、光に包まれた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


気が付くと床の上に寝ていた。


目の前には目の覚めるような美形の金髪男がおり、

私の顔を覗き込んでいる。


男は私の手を固く握りしめ、

今にも求婚してきそうな勢いで話しかけて来た。


「私はハルキゲニア・Z・カンブリア。

カンブリア帝国の第16代皇帝です」


瞬間、気絶したふりをした。


関わり合うのは避けた方が良いと判断したのだ。

黙っていれば超イケメンなのに、

残念な人っているものね…

突然現れた目の前の男に対し、冷静に判断を下す。


そんなことを考えていると、ギュッ!と

握られた手に痛みが走る。


「痛た!なにするのよ、このド変た…」

思わず目を開けてしまう。

目に入ったのは彼が身につけた高価そうな装飾品。


…凝った細工の腕輪だった。

指輪にはめられた石も、

本物の宝石の風格を感じる。

随分古そうなデザインなので、

何かいわくもあるかもしれない。


大のインドア派でオカルトマニアな私は、

ある時この世に呪われた宝石があると知るや

文献、逸話など読みまくった。


そこからアンティークジュエリーにも興味が及び、

本を見たり古道具屋をのぞいたりして

結構宝石には詳しい方だと思う。

男が着ている服の生地は絹の様に見える。


―カリスが慎重に目の前の男を観察していると、


「…失礼しましたマドモアゼル。」

目の前の金髪が何やら喋っている。


「…異世界から救国の英雄を召喚するという儀式を

私は行ったのです。」


これは…本物かもしれない。


異世界召喚?冒険だわ。

私は…

全てを手にしてしまうかも!


状況を受け入れたカリスは即座に態度を改めた。

大輪の華のようにニコヤカに微笑むと、


「ご丁寧にありがとうございます!

ハルキゲニア陛下。

私は異世界、日本国から貴方の為に参りました

亜ノ間口(あのまぐち)カリスと申します。


先程は取り乱してしまい、申し訳ありません。

突然のことで動揺してしまって…

もう大丈夫です。」

控えめに話しながらもその手はしっかりと

ハルキゲニアの手を握って離さない。


カリスは熱のこもった目で見つめながら言った。

「私は18歳で、当然ながら未婚です。

恋人も婚約者も縁談も一切ありません。

お目にかかれて光栄です」


こうして、カンブリア帝国を救い、

カンブリア帝国を傾ける

赤字の聖女が召喚されたのであった。


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