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第二話 刻む歴史

"春暁祭"、アルカディアの建国記念日に建国以来毎年行われる大規模な祭りだ。

会場は首都の近郊にある巨大な桜がシンボルの草原で、この木の下で花見などをすることが主な内容だ。

桜の木は直径十メートル近い太い幹で、高さは五十メートル以上あるだろう。

この時期は満開の桜をを咲かせ、鮮やかな桜の花びらがパラパラと降り、会場を華やかに彩っている。

桜の木の周りりには屋台なども用意されていて、花見のために場所取りをしている者も多い。



「…何百年前には絶対見られなかった光景だよね。」


「…そうね。良い時代になったと思うわ。」



桜の木の根元で運営に指示を出していた私とフィリアは会場が準備されていく様子を見てしみじみする。

屋台を出す天使や、飾りなどを行っている悪魔、桜の木の下に陣取り場所取りをする獣人、桜の花まで近づいて遊んでいる妖精など、多種多様な種族が祭りに向けて勤しんでいる。

何百年か前までは"天魔大戦"と呼ばれた主に天使と悪魔の対立によって始まった他種族を巻き込んでの長い戦争が続いた。

多くの種族が共に笑い合い、手を取り合う。

アルカディアはその理想を叶えるために私達が作り出した理想郷。



「ん、そろそろ時間かな?」


「そうね。早くいきましょう。」



そして今日は時代の節目、歴史の変遷、それを見届けるために、今日私達はここにいる。







桜の木の下に置かれたステージの上に私とフィリアは立っている。

集まったアルカディアの住人達は私達を親しみや憧れの目で見ていた。

アルカディアは身分制度といったものはなく、平等主義、なおかつ国民主権を心掛けており、国主である私達と国民の距離が近いという特徴がある。



「えー、まず、この日のために春暁祭の設営や準備をしてくれた関係各所に感謝します。そして、祭りに来てくれた親愛なる国民の皆さんにも、感謝を。」



最初に前に出た私が前口上を述べ、それに続いてフィリアも前に出て本題を話す。



「今日は記念すべきアルカディア建国百年目、百回目の春暁祭であり、長いようで短くもあるアルカディアの節目でもあるわ。」



そこまで聞いた国民達は皆どこか寂しそうだったが、それでもじっと私達を見つめていた。

暫し静寂に包まれる緊張感漂う空気の中宣言する。



「というわけで、堅苦しいの疲れたからいつも通り行こう!春暁祭始めるよー!」


「「「「わあぁぁぁぁぁぁ!!」」」


「あんた最後の最後までいい加減にしなさいよ?あと皆も乗らなくていいから!」






ミシェルの場の緊張感を無視した威厳も何もない開催宣言を終え、祭りが始まった。

まぁ、祭りと言っても花見に近く、会場となっている大草原のシンボルである巨大な桜の木を囲って屋台を回ったりお酒を飲んでどんちゃん騒ぎするものではあるが。

祭りが始まってしばらく、ミシェルがいつも通りフリージアに怒られていたので私は一人会場を歩き回っていた。



「ミシェル様相変わらずだったねー。」

「初めてあれやってた時皆ポカーンとしてたのはなつかしいよな。」


「結構序盤でミシェル様のあれにノリ始めた人がいるらしいけど。」


「悪いことしなけりゃ、この国はお偉いさんと普通に話せるから良いよな。」


「まあ引っ張り回されてるフィリア様は苦労してそうだけど、なんだかんだ満更でもなさそうがねー。」


「正妻の座は決まりかな?」



なんか不穏な会話が聞こえてきた。

あれは獣人と精霊族の集まりか。



「そこ!そんな事実はないから勝手に想像するの止めなさい!」


「うわっ、フィリア様。」


「うわって。」


「ですけど、実際フィリア様ってミシェル様のことどう思ってるんですか?私達目から見ても明らかに親しい友人以上に思ってそうですけど。」


「躊躇ないわねあなた。別にいいけど、もっとこう、遠慮があってもいいんじゃないかしら?」


「今さらじゃないですか。で、どうなんです?」


「…いや、まぁ、嫌いじゃ、ないわよ?」


「つまり脈あるんですか?」



ぐいぐいくるこの獣人の猫耳の娘。

国の方針間違えただろうか?

周りも普通に追従してるし。

まあアルカディアは犯罪には厳しいが、別に国主である私達に失礼なことを言ってもせいぜい私達が拗ねるくらいで特にそれ以上のことは

起こらない。



「え?フィリアが私と結婚したいって?」


「言ってない。ていうかいつからいたのよ?フリージアに説教されてたはずでしょう?」


「幻影だけ残して逃げてきたよ。」


「なにしてんのよ。」


「フィリアいるところに私あり!だからね。」


「もうやだこの子。」



そんなことでわざわざ幻影なんか作るなと言いたいし、胸を張るなと叫びたい。

今に限った話ではないから言わないが。



「私は別に良いんだけどね。結婚しても。むしろウェルカム!」


「その文面久しぶりに聞いたわよ。何度も言うけど私にそう趣味はないから。」



実質ミシェルからのプロポーズをさらっと流すが、ここ数百年の間に千回以上プロポーズされていれば慣れたものだ。

もういっそ婚姻届に殴り書きしてあの可愛らしい口に詰め込んでやれば満足するだろうか。

…いや、まぁ本当に役所にだされたらたまったものじゃないからしないが。

いつの間にかさっきの一団に混ざり話していたミシェルはふとこっちに寄ってきて、私の手を取って上目遣いになり、



「私と結婚するの、嫌?」


「……~~っ!!」



天使のような愛らしい姿がそこにはあった。

いや、天使だった。

この純粋な目を見ているともう何でもよくなる。

質問に対してすぐに否定してーー



「って騙されないわよ!?」


「騙すって。何にさ。」



顔が熱くなる。なんか凄い感情が顔に出てた気がする。

周りで私達の様子を見ていた皆から生暖かい目で見られているし。やめろ、こっち見るな。



「ほら!あんたはさっさともう一回フリージアに怒られて来なさい!」


「うわっ、ちょ、逃げたのばれたら余計にキツく叱られるって!」


「知らないわよ!勝手に叱られて来なさい!」


「ふざけたの謝るから!」



ミシェルの背を押してフリージアのもとへ連行する。

フリージアも幻影を使われていたことに気づいていたようで、鬼の形相で待ち構えていた。

あの様子だと二時間は折檻されるだろう。

…ふざけで言っていたのか…。

少しずつ近づく変遷の足跡ーー

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