表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

581/582

488 ラグナロク ~異世界の勇者②~ 

主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。

エリアス・・・リーム大陸のダンジョンの精霊であり、ゼロのアバターを創った。人工知能に恨みを持っている。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

「20秒以内に決めろ」


 ― 刻の番人 ―


「!?」

 シロザキが人差し指で魔法陣を展開した。

 サリーの頭上に鋭い剣が現れる。


「魔王ヴィル、この魔法から逃れられない。20秒経てば、この剣は上位魔族を頭から突き刺す。別ゲームでは、死の魔法と呼ばれている」

 シロザキがサリーから離れた。


「魔王ヴィルとは話がしてみたかったんだけど・・・そうだな。少し会話の時間を作ったほうがいいか」

 腕を組んでサリーを見つめる。


「動けない・・・・どうして・・・」

「そうゆう魔法をかけてるからだよ。刻の番人が現れたら、君はそこから一歩も動けない」

「っ・・・・」

 サリーが奥歯を噛んで、シロザキを睨みつけていた。


『オン オン・・・オン』 

 灰色の軍隊ディザイアーの2体がシロザキに近づいていく。


「待て、今いいところなんだ。うーん、魔王ヴィル、死ぬのはちょっと待っ・・・」


 ― ディル XXXX XXX XXXXX サXXXX ―


「サリー、来い!」


 ザッ


「!!」

 サリーが大剣になって、俺の手に収まった。

 魔力は整い、前回よりも強化されている。


 ドンッ


 サリーの頭上にあった剣は行き場を失くして、地上に刺さった。

 地面に亀裂が走る。



「へぇ、なるほどなるほど」

 シロザキがこちらを見て、手を叩いた。


「上位魔族は魔王ヴィルの武器になるのか。シエルだけかと思っていたが・・・・」

「情報不足だな」

 サリーの剣の魔力を整えながら、深呼吸をした。


「どちらにしろ、灰色の軍隊ディザイアーと俺が相手だ。俺はどんなゲームを熟知している。負けるわけがない」

 シロザキが龍王の剣を青く光らせた。


 灰色の軍隊ディザイアーは全員同じだ。

 骸骨のような顔で、真っ黒なローブを被って、骨だけの馬にまたがっている。

 シロザキが剣の刃先をこちらに向けると、灰色の軍隊ディザイアーの向きが変わる。


「奴を戦闘不能にしろ」


 ヒュオォォォォオオオ




 ― ジヒーマ・ルオール ―


 サリーの剣に炎をまとわせる。

 灰色の軍隊ディザイアー目掛けて大きく剣を振った。


 ゴオォオオオオオオオ


 半円に黒い炎が広がっていく。

 風の刃が灰色の軍隊ディザイアーを次々斬っていった。

 地獄の業火よりも、サリーの魔力が加わり、高火力を叩き出している。


「おっと・・・すごいな」

 シロザキは空中に逃げていた。

 白いマントの裾が焦げている。


「ふぅ・・・危な・・・」


 ― 瞬雷 ―


 ジジジジジ


 雷が走る。

 ゼロが一気に上昇して、シロザキ目掛けて剣を突き刺そうとしていた。


「!!」

 シロザキが蜃気楼のように消えた。


「怖いなぁ、でも負ける気がしないんだよ。この場所ではね」

 シロザキが実態になって、ゼロの背後に回る。


 ― 重力変化、高 ―


 ズンッ


 シロザキが指を下に向ける。


「っ・・・」

 一気に体が重くなった。

 ゼロが息を吐いて、自分にバフの無効化の呪文を唱えた。

 すぐに体勢を直して、シロザキのほうを見る。



「勇者ゼロはどうでもいい。俺の敵は、魔王ヴィルだ!」


 灰色の軍隊ディザイアーを連れて、一気にこちらに襲い掛かってくる。


 ドドドドドッドドドド


「ヴィル!!!!」 

 灰色の軍隊ディザイアーが全方位囲んだ。

 塊のように群がってくる。


『オン オン・・・ オン オン・・・・』


 灰色の軍隊ディザイアーの魔力が肉体と精神に触れる。


 デバフ、デバフ、デバフ・・・・。

 ひたすら俺の攻撃力、魔力、防御力を下げてきた。


 底をつくまでやる気か?

 じゃあ、その安い挑発に乗ってやろう。


 ドドドドドッドドドドドド


 一部の灰色の軍隊ディザイアーが、俺に向かって剣を振り下してきた。

 軽やかに避けた。

 

「固定化しろ。俺が倒す!」

 灰色の中からシロザキの指示が聞こえた。


 ガン


 俺の身体は得体のしれない魔力の縄に縛られて、身動きが取れなくなった。


 デバフ、デバフ、デバフ・・・。

 骸骨たちが、さらにデバフをかけていく。

 口角を上げて、魔力を細めていった。

 

 体の力をだらんと抜く。


「ヴィル!」

 上を向いて、ゼロに近づくなと合図をする。

 ゼロはすぐに理解して、トムディロスのほうへ飛んでいった。


『オン オン・・・ オン オン・・・・』

『オンオン・・・オンオン』

 灰色の軍隊ディザイアー同士ででコミュニケーションをとっているようだ。

 こいつらも、各々に自我を持たない、量産型か。

 それとも、声が出せないだけなのか?


 アイリスならこいつらの話もわかるのかもな。


「サリー心配するな。俺は平気だ」

 小さい声で言う。


 身動きは取れなかったが、サリーの剣は手に固定されていたままだった。

 サリーは少し緊張しているようだ。

 灰色の軍隊ディザイアーは生も死も感じない、無の存在だった。


 ゴオォ ゴオォ


 数体の骸骨が俺を覗き込んで横に揺れながら下がっていく。

 シロザキが前に出た。


「お前らはゼロとそこらへんの雑魚を相手してくれ」


『オン オン・・・ オン オン・・・・』

 灰色の軍隊ディザイアーが掃けていく。

 ゼロが剣を立てて詠唱している。


 トン


 シロザキが俺の前に立つ。

 マントについた勇者の紋章が煌めいた。


「勇者オーディンの息子、魔王ヴィル、君と少し話がしてみたかった」

「何の話か知らんが、戦闘中にそんな悠長なこと言えるな」


「オーディンが稽古の途中、よく君の話をしていたんだ。羨ましかったよ。俺たちに親はいない。兄さんと2人で生きてきたからさ」

「・・・・・・・・」


 シロザキが俺の胸元に剣を突きつけながら言う。


「魔王となった君は、人間でいる時はずっと弱い者とされていたと。人間に失望し、人間でいる必要は無くなったから、魔族側で人間を殺している、とね」

「それがなんだ?」


「俺と兄さんと似てると思った。俺たちも向こうの人間が憎い」

 口調は明るかったが、暗い目をしていた。


「向こうの人間は醜いよ」


 ザアアァァアアア


 ゼロが空を十字に切り裂いて、灰色の軍隊ディザイアーを消滅させていた。

 次から次へと、途切れずに灰色の軍隊ディザイアーが現れる。


 ゼロは全く動じていないようだ。

 竜巻を起こしている。


 色んな魔法を試しているようにも見えた。


「兄さんと俺は強大でプロゲーマーだった。多くの大会で成績を残して、ゲーム業界では名を馳せた。でも、顔をさらされて、あらゆる誹謗中傷を受けた。ゲームで負けたやつらに、あることないこと言われた。もう限界だったんだ」

 シロザキが周りを気にせず続ける。


「俺は引きこもって、外に出られなくなった」

「・・・・・・・・」

「兄さんがこの異世界住人転移計画に誘ってくれたんだ。実際、ここはゲームよりもずっとリアルで、ここなら俺と兄さんの居場所があるような・・・」


「ねぇよ」


 ― 絶対強制解除アブソリュートキャンセル


 ザッ


 ドンッ


「え・・・」

 固定化された体を解いた。

 すぐに、サリーの剣でシロザキの胸を突き刺す。

 

「なっ・・・どうして・・・あれだけのデバフをかけられて、魔力は底をついたはずだ! ありえない・・・」

 剣を抜く。


 やっぱり、痛覚は切っていたな。

 人間だったら、急所を刺した痛みで喋れないはずだ。


 シロザキのつま先が光の粒になっていく。


「どうして!」

「オーディンに聞かなかったのか? 俺は最悪の魔女から生まれて、最強の魔力を植え付けた魔族の王だ。どんなにデバフをかけられても、魔力が尽きることはない」

「うわっ・・・」

 シロザキが自分の手を見つめる。


「うわぁぁぁ、いやだ。消えたくない! 消えたくない! 兄さん!! ごめん!! 失敗した!」

「・・・・・・」

「せっかくここまで来たのに。兄さんをここにもう一度呼ぶために・・・」

 子供のように泣きじゃっていた。


「クソッ・・・なんか方法はないのか? モニター、そうだ、モニター・・・・エリアスに連絡すれば何とか・・・」

「まぁ、俺もそんな詳しいわけじゃないが」

 頭を搔く。


「弟はそんなに頑張る必要ないらしいよ」


「は・・・?」

 シロザキが涙を流しながらこちらを見上げる。


「兄が頑張ってくれるときはな」

「・・・・・・・」

 風が吹くと同時に消えていった。


 ドオォオオオオオ


 ゼロが灰色の軍隊ディザイアーが襲い掛かる間も与えず、殲滅していた。

 トムが気の抜けたような顔で、ゼロを見つめている。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

見ていただけるだけでも、生きる希望になっています。

また是非見に来てください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ