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51 アイリスの思考回路

「次のダンジョンはここから一番アリエル王国から近いところなどはいかがでしょうか?」

「あぁ、俺もそう思っていた」

 ウルが机に大きな地図を広げて話していた。


「少し挑発してやろうと思ってる」

「なんと・・・」

 ププがにやりと笑う。


「では、ここがいいでしょう。こちらは、周辺に魔族がいないので、大分昔に攻略されたダンジョンになります。しばらく魔族も行ってないので情報は少ないのですが」

 ププが定規を使って、距離を測っていた。

 アリエル王国城下町からは3キロ程度、人間もいるかもしれないな。


「ダンジョンの精霊がアークエル地方の状況に詳しいかもしれません」

「確かにな。ププウルの言う通りだ。今回はそこにしよう」


「はい。目印はたくさんの花と大きな木です。木の根元に入り口があり、行けばすぐにわかるかと思いますので」

「ありがとう、助かるよ」


 腕を組む。

 人間のダンジョンを制圧することで、魔族の活動領域が広げられる。

 アリエル王国から近いダンジョンを魔族のものにするのも悪くない。


 ウルが机から降りて、頭を下げる。


「魔王ヴィル様、あの・・・・先日はありがとうございました。お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません」

 地図を畳んで、視線を逸らす。


「もう大丈夫なのか?」

「はい、魔力も戻ってきましたし、すぐにでも戦闘に出られますので。もちろん、水属性には注意を払います。二度とこのようなミスは犯しませんので」

「あぁ、期待してる」

 ウルの頭を撫でてやると、はわぁと声を出して喜んでいた。


「ウル、もう行くからね!」

「あ、魔王ヴィル様。失礼します」

 ププが嫉妬して、引きずるようにしながら部屋を出ていく。


 あの感じだと、完全に回復したと見て、問題なさそうだな。




「アイリス、次のダンジョンが決まったぞ」

「本当? どんなところ?」

 遠くのソファーに座っていたアイリスが、駆け寄ってくる。


「アリエル王国の近くだ」

「え・・・・? そっか」

 珍しく、少し動揺しているのが伝わってきた。


「行きたくないか?」

「・・・ううん。魔王ヴィル様もいるし、ダンジョンの精霊様も優しいから、大丈夫」

「・・・・・・」

 アリエル王国付近の警備がどうなってるかわからないが・・・。

 近づけなければ、情報も薄い。多少の危険はやむを得ない。


 ただ、アイリスには注意しないとな。



 トントン


「魔王ヴィル様、マキアです。入ってもよろしいでしょうか」

 マキアの声だ。


「・・・いいぞ」

「では、失礼します」

 マキアがゆっくりとドアを開けて入ってくる。


「どうした?」

「サリー様がミゲルという少年がまだ目を覚まさないので、ダンジョンからお帰りになる頃には叩き起こしておくとおっしゃっていました。魔王ヴィル様に、お伝えくださいと」


「あぁ、殺さないように頼んでおいてくれ」

「息はあるので問題はないと言っておりましたので、ご安心ください」

「そうか・・・・」

 なんか、危ない気がするが。

 ミゲルは体力もなさそうだし、サリーが子ども相手に力を抜くことができるのかわからない。


 ジャヒーに任せた方がよかったかもな。


「わかった」

「あと・・・セラを魔王城に置いていただけるとのこと、ありがとうございました。姉妹の時間ができて、とても嬉しいです」

 深々と頭を下げてきた。


「上位魔族も一人増えたことだし、世話もあるだろう・・・って」

「ザガン! あっ!」

 ザガンがマキアの後ろに立っていた。

 後ろから抱き着いて、胸を両手でつかむ。


「あぁんっ・・・・・・ざ、ザガン、何するの?」

「やけに強い欲望の匂いがしたからさ」

「へ・・・」

 アイリスがびっくりして固まっていた。


「やめ・・やめなさい。ザガン・・・こんなところで」

「ん? 今日は何があったんだ? なるほど」

「?」

 アイリスのほうを見てからにやりと笑った。


「本当、最近欲望が駄々漏れじゃないか。前はこんなことなかったのに」

「止めなさい。ジャヒー様に・・・・」


「部下の体がこんなに望んでるんだから仕方ないじゃないか。ジャヒー様にもそう説明するよ」

「っ・・・・・・」

 マキアが唇を震わせる。


「ザガン、俺たちはこれからダンジョンに行く。その辺にしておけ」

「かしこまりました。どうか、お気をつけて」

 ぱっと、マキアの手を離して頭を下げる。

 マキアが胸を押さえてすぐに後ろを向いた。


「留守の間、頼んだぞ」

「承知いたしました。何かありましたらご連絡します」


「あぁ」

「し、失礼しましたっ」

 マキアがザガンを引っ張って、ドアをバタンと閉めた。


「・・・・・・・・・」

 アイリスが、ソファーに座って背を向けていた。


「ま・・・魔王ヴィル様・・・これはラッキースケベイベ? 魔族間ではよくあること?」

「あれは稀だ」

「稀・・・そっか、発生率は低い。やっぱり魔王ヴィル様はラッキースケベイベの属性が付与されている気もする・・・うーん・・・」

 アイリスがぶつぶつ話していた。

 

「んー・・・・」

「・・・・・・」

 さすがに、アレはアイリスには刺激が強かったか。


「魔族は欲・・・・」

「じゃ、忘れよう!」


「え!?」

 忘れるんだ、って言いたいのを飲み込んだ

 アイリスがクッションを置いて立ち上がる。


「私、こうゆう分析できないような感情持つの苦手。早くダンジョンに行きましょ。魔王ヴィル様」

「あ・・・・あぁ」

「切り替え切り替え」

「・・・・・・」

 双竜を召喚して、行き先を説明する。

 アイリスが相槌を打ちながら真剣に聞いていた。

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