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473 The Seven Deadly Sins⑩

主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 くらっ


「・・・・?」

 止まって頭を押さえる。

 急に目がかすんで、前が見えなくなった。


「どうした? ヴィル」

「いや、何でもない。早くサタニアのところへ行っててくれ」

「了解」

 深呼吸すると、焦点が定まって来た。

 なんだったんだ? 今のは・・・。


 ゼロが真っすぐサタニアのほうへ飛んでいった。

 魔力に異常がないことを確認してから、追いかけていく。



「サタニア!」

 アスリアがぴたっと止まって後ろを振り返る。


「ゼロ!? どうしてここに?」

「アイリスがゲートを開けてくれたんだ。ここに繋がったんだよ」


 ガシャンッ


 ドドドドドドドドドド・・・


 隙を狙って攻撃を仕掛けてきた天使と堕天使たちが、オートモードの羅針盤に攻撃されていた。

 

「無事ですか?」

「あんまり・・・僕、死ぬかも」

 横たわって天使を手当てしているミハイルに近づいた。


「ミハイル、こいつら撤退できないのか?」

「なんなんですか? あれは」

「サタニアだよ。別の世界にいた頃の、な」


「別の世界・・・?」

 ミハイルが顔をしかめながら、傷を癒していた。


「お前らが束になって敵う相手じゃない。死にたくなかったら引いてくれ」

 砂埃が立ち、地面が大きく揺れる。


「ゼロと俺で何とかする。その天使たちが消えると、国も無くなるんだろ?」

「ゼロ・・・あぁ、アエルですね」

 ミハイルがゼロのほうを見る。


「ミハイル、逃げてくれ。ヴィルの言う通りだ」

「天使としてのプライドが・・・とも言ってられませんね。このままじゃ全滅します。ウリエルに逃げるよう説得します。でも、天使の審判からは逃れられないので一時的ですよ」


「わかってる」

 ゼロが低い声で言う。

 


「がはっ」

 隕石が巻き起こす風圧で、遠くの堕天使たちが吹っ飛ばされていた。

 翼は折れて、動けなくなっている者もいる。


「あっちの安全なところにいてください。リミュエル」

「うん・・・ありがとう」

 リミュエルが腹を押さえながら苦しそうに立ち上がった。 

 よろよろしながら木々のあるほうへ歩いていく。


 ミハイルが上空から指示しているウリエルのところへ飛んでいった。



 魔王のデスソードの魔力を整えて、周囲を警戒しながらサタニアに近づいた。

 


「ゼロ、『クォーツ・マギア』に転移したんじゃ・・・」

 サタニアが黄金の羅針盤から離れて、地上に降りてきた。


「色々あって、一時的に戻って来れたんだ」

「そう。ゼロはあの羅針盤見たことないもんね・・・驚いたでしょ?」

 サタニアが目を伏せる。


「見てないけど、知ってるよ」

「きっとこの世界も終わってしまう。ヴィルが私のこと、殺してくれなかったら、あの針が落ちてくるまで生きなきゃいけない・・・誰もいない世界で、たった一人・・・」


 羅針盤の真下に突き出た刃を見ながら言う。

 刃先は真っすぐにサタニアのほうを向いていた。


「・・・・・・」

「あと、この世界で私の罪が確定してしまった。魂についた罪は誤魔化せないのね。七つの罪を背負っているだけではなく、悪魔を代償に甦って、さらに罪を負ってしまった。ゼロは戻って・・・」


「いや、一人では戻らない」

「え?」

 ゼロが手を差し出した。


「俺と『クォーツ・マギア』に行こう! サタニア」

「は? 無理に決まってるじゃない。だって・・・」


「迎えに来たんだよ。黄金の羅針盤の解き方は知ってる、俺もベリアルだった頃の記憶があるんだ。ヴィルと同じことができる。でも、一度羅針盤になってしまった心臓は、元通りにできないけどね・・・・」

 ゼロが悲しそうにほほ笑む。


「他の方法がある」

「そんなのないわ。設定に無いもの」

 サタニアが困惑していた。


「・・・・・・」

 ゼロはアメジストの中にサタニアの心臓を閉じ込めるつもりなのだろう。


 俺たちの知る神話は13の章に分かれていた。

 序章にある、心臓を錬金する方法がある。

 女神を愛する者にしかできない、はじまりの魔法だ。


「天使の攻撃が止まってきたね」

「え・・・・」

 サタニアが振り返る。

 天使と堕天使たちは、ぼろぼろになりながら逃げようとしていた。


 無傷の者はほとんどいない。

 前線で指揮を執っていたウリエルでさえ、片方の翼を負傷していた。

 こちらを警戒しながら、天使たちが上空へ上がっていく。


「じゃあ、あとは、その羅針盤だ。サタニア、俺を信じてくれ」

「信じるって・・・」

 サタニアが戸惑いながら、胸を押さえる。


「ゼロ、無効化は俺がやる」

 魔力を溜めながら、大きく息を吐く。


「お前は錬金に集中しろ。チャンスは一度きりだ。失敗すれば、サタニアは死ぬんだからな」

「ヴィル・・・・」


「任せて。今度こそ、絶対に君を救う」

「でも・・・・・・・・」

 ゼロがポケットからアメジストのペンダントを出した。


 ガシャン


 ドドドッドドドドドド・・・



 遠くのほうで星が流れて落ちる音が聞こえた。

 魔王のデスソードを両手で持って目を瞑る。


 ― ラXXXX ヴィXXXXXX

XXXXアXXXX ラーXXXXXXX ―


 ガシャン


 剣から放たれた魔法に、黄金の羅針盤が包まれた。

 

 ピシッ


 羅針盤の石化が始まる。


「あ・・・・・」

「大丈夫だ。サタニア、俺がいるだろ」

 ゼロが倒れそうになったサタニアを抱えて、羅針盤の傍に行った。


 アメジストのペンダントを石化していく羅針盤に当てる。


 ― シュXXXXX

アリアXXX ネヴェXXXXX ―


 ゼロが俺と同じ、神話の詠唱を始めた。

 サタニアの鼓動が弱まっていく。

 目を閉じていくサタニアに、ゼロの詠唱が早くなる。


--------------------------------------------


「月の女神、全て終わった」

 剣は持っていなかった。

 シエルは星の女神アスリアのいた場所で、祈りを捧げていた。


「ほぉ・・・星の女神アスリアが死んだか」

 青と白のドレスに身を包んだ月の女神がふらっと入ってくる。

 『星の塔』はほとんど崩れていた。


「ユグドラシルの地下に眠っている奴らはどうなってる?」

「安心しろ。みな、次のゲームへの道ができている。欠陥品バグとされることもないだろう」

「そうか」

 肩の力を抜いた。


「これで俺が死んでも文句はないな」

「ククク、そんなに死にたかったか。まぁ、主要キャラがいなくなり、もうすぐこのゲームは光が無くなり眠りにつく。私も、居場所を移さなければいけないな」


 月の女神が細い杖を持って、アスリアのいた場所を見つめる。


「星の女神か。美しい最期だった、アスリア」


「なぁ、きっとここに残るべきだったのは、ゼアルだったと思わないか?」

「ん?」

「とぼけるなよ」

 しゃがんで砂になった羅針盤を手ですくう。

 指の隙間からさらさらと流れていった。


「ベリアル(俺)じゃないのが正解だ。ゼアルがいればアスリアを救えた」

「アスリアが決めたんだ。これが運命だ」


「神話ってなんだよ。愛がどうとか・・・俺はそうゆう感情を持たないように創られている。アスリアを愛したのは俺じゃない、ゼアルだ」

「そうだな」

 雲が途切れて、月明かりが差し込んだ。


「愛は魔法の原点だ。魔法が使えるなら、きっとお前にもわかる日が来る」

「この荒廃した世界で? 勘弁してくれ」

 軽く笑った。


「アスリアがいなくなれば、もう魔法を使う必要も無い」


「ここは異世界の者に捨てられた世界だ。もうこの世界に執着するな。その肉体アバターも、異世界の者が創ったものだ。人間の想定範囲を超えた動きはできない」

 月の女神が蒼い瞳でこちらを見る。


「遠回しに死ねって言ってるのか?」

「そうだ」

 

 ガッ


「!?」

 月の女神に額を掴まれる。


「お前はよくやったよ。ゆっくり眠れ、ベリアル」


 バタンッ


 力が入らなくなって、その場に倒れた。


「また、皆と再会するだろう。そのときは・・・」


「ベリアル様!!」

 シエルの駆け寄ってくる音が聞こえた。

 視界が狭くなっていく。


 シエルと月の女神が会話していたが、最後まで聞き取れなかった。 

 ほのかにアスリアの匂いのする部屋で、自然と眠りについていた。


------------------------------------


「アスリア様!!!」

 気づいたらサタニアの周りを七つの大罪が囲んでいた。

 アメジストのペンダントをつけたサタニアが、自分でも驚いたような顔をしていた。


「え? ゼロ、何やったの?」

「神話の手順の通りに、魔法を使っただけだ」

 ゼロが両手を上げる。


「神話の手順? 胡散臭いんだけど・・・」

「いいじゃん、『星の女神』じゃなく普段のサタニアに戻ったでしょ?」


「・・・うん。信じられないけど」

 ゼロが軽く伸びながら笑った。

 サタニアが疑いの表情で、自分の手を見つめていた。


「ねぇ、ヴィル。ゼロは何したの?」

「見てなかったって、こっちはこっちで集中してたんだ」

「ヴィル!」


「アスリア様、申し訳ございません! こんな想いをさせてしまい」


「いいのいいの。えっと、それより、強欲のバラモスはここに来ないままなの?」

「彼は洞窟に閉じこもってまして・・・」

「ジオニアスが強引に引きずり出そうとしたのですが、シールドを」


「オベロンのせい」

「僕?」


「オベロンが無視したって、バラモス言ってた」

 アベリナが、オベロンを指す。


「声が小さくて聞いてなかったんだって。アスリア様、違います。僕は・・・」


「相変わらずなのね」

 オベロンが焦って弁明しようとしていた。

 サタニアが七つの大罪の者たちと笑っている。


 ゼロがほっとしたような表情を浮かべた。




「魔王ヴィル様!」

 アイリスがこちらに駆け寄ってくる。


「向こうで待ってろって・・・ったく」

「あれ・・・? 体の感覚がずれて、感知・・・」 

「アイリス?」


 ドサッ


 突然、アイリスがひざまずいて倒れた。


「アイリス!?」

 魔王のデスソードを消して、アイリスに駆け寄っていく。

読んでくださりありがとうございます。

最終章だというのをひしひしと感じております。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

是非また見に来てください。次回は今週中にアップ予定です。

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