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452 IF Root③

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは『日蝕の王』の拠点、アルテミス王国に乗り込んでいく。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

ガラディア王子・・・ポセイドン王国第一王子。陸軍のトップ。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 城下町を通る間、ヴァリ族が襲い掛かってくることはなかった。

 アリエル王国から異世界住人が来て、住人が一気に居なくなった頃を思い出す。


 エヴァンも平然としていたが、同じだろうな。 


「データはアイリスに送ったよ。ヴァリ族の五古星とかいう奴らの持ってる能力も調べてもらっている。俺が思うに、五古星の攻撃にウイルスが含まれてるのはわかってる。どんなウイルスかは調査が必要だけど」

「アイリスは何か言ってたか?」


「『魔王ヴィル様、女つくってこないでねって』。3回くらい言ってたかなぁ。アイリスって意外と心配性なんだね」

 リュウジがからかうように言う。


「それは、ヴィルが・・・・・」

「エヴァン」

「まだ何も言ってないじゃん」

 エヴァンが口を尖らせた。

 リュウジが他人事みたいにくすくす笑っている。


「リュウジ、『五古星』って名前について何か知ってるか?」

「いや、初耳だよ」

「どこかで聞いた覚えあるの?」

「そうだな・・・」


 五古星・・・か。


 なぜか馴染みのあるような言葉だった。


 本で読んだものか?


「そういや、リュウジ。さっき、シェリアが撃った球に触れてたよね?」

「データを取得するためにね。質感も重要なデータだ」

 三本の指を見ながら言う。


「生暖かくて、痛みとかは無かったよ。柔らかいボールみたいだった」

「大丈夫なの? リュウジもアバターでしょ? 触れるとウイルス感染するんじゃなかった?」

「俺は元々この世界に入っていたし、事前にアバターのセキュリティ強化をしてからログインしてるから問題ない。もちろん、ユイナのアバターもね」


「へぇ、すごいね」 

 エヴァンが少し腑に落ちないのを隠しているように見えた。


「ヴィル、正面から乗り込むのですか?」

「そうだな・・・まずはシエルの奪還が最優先だ。裏から入って、シエルを取り戻してから奴を殺す」


「では、シエルを見つけるまでは隠れたほうがいいですね」

 レナが指で魔法陣を描く。


 ― 透明化ステルス


 サアアァァァァァ


 頭から透明なベールを賭けられるような感覚があった。


「ステルスの時間は最大60分。切れたらもう一回かけ直します」

「この魔法、レナも使えたのか?」

「レナはこの世界にある魔法のほとんどを使えますよ。禁忌魔法以外ですけどね」

 レナが自慢げにしていた。


「今、俺たち同士しか姿が見えていないってことか?」

「はい! でも、『日蝕の王』は欺けないと思うので、会ったら即戦闘です。覚悟してくださいね」


「・・・不思議な感覚だ。”オーバーザワールド”には無い魔法だな」

 ガラディア王子が自分の手を見ながら不思議そうにしていた。


「ガラディア王子、アルテミス城に裏口があるか?」

「もちろん、案内するよ。一応、城の地図は熟知している。よく通っていたからね」


「あ」

 レナがぴたっと立ち止まる。


「ねぇ、ヴィル。そこのお店にちょっとだけ寄って行っていいですか。すぐ戻ってきますので」

 レナが道の途中にあるアクセサリーショップのような場所を指していた。

 アイリスが好きそうな花柄をモチーフにした見た目だ。


 強そうな武器や防具は置いてなさそうだが・・・。


「レナが装備品にこだわるなんて珍しいな。早く帰って来いよ」

「はーい」

 レナが小走りで店内に入っていった。


「いいの? 一人で行かせて」

「レナなら問題ないだろ」

「ま、確かにね。あの強さならヴァリ族が何体いようが余裕だよな」

 エヴァンが体を伸ばす。


「でも、どうしてまたアクセサリーショップに?」

「結婚式だからじゃない?」

 リュウジが口を挟む。


「ほら、結婚式って参列者も綺麗にしていくものだろ?」

「いや、んなこと考えてないと思うけどな。そもそも参列者じゃないし」

「同感だ。何かつまみ食いできるものでも、探してくるんだろ」


「君ら、出自がバラバラなのに仲がいいよね。羨ましいよ」


 リュウジが笑っていた。

 アルテミス城のほうを眺める。

 太陽が輝いているにも関わらず、闇がとぐろを巻いているように感じられた。




 

 ― 魔王のデスソード


 ズンッ


『グガッ・・・・』

 裏口で見守りをしていたヴァリ族を瞬時に2体切り裂く。

 電子音のような音を立てながら、光の粒になって消えていった。


「自我を持てるヴァリ族と、自我の無くなるヴァリ族、どうやって決まるのでしょうね。今のは自我が無さそうでしたが・・・」

 レナが横からひょこっと顔を出した。


「さぁな」

「隠し扉ってここ? 開かないけど」

 城壁の扉らしき場所をエヴァンが押していた。


「そこはフェイクだよ。地面に隠し通路がある。ちょっと待っててくれ」

 ガラディア王子がマントを後ろにやって、その場にしゃがんだ。


 ― XXXXX XXXX XXXXXX -


 ジジジジ ジジジジ


 地面に青い魔法陣が浮かび上がり、パンッと弾けた。

 中に階段が現れる。


「ここから入る。城の中央へは遠回りになるが、ヴァリ族の知らない道だろう」

「おぉ・・・ゲームって感じだね」

 リュウジが覗き込みながら言う。


「早く入ってくれ。みんな中に入れば扉を閉める」

「わかった」

 階段を下りていく。

 階段はガラスのようになっていて、縁が虹色に光っていた。


 通路は全体的に明るかったが、魔力は感じない。

 元々こうゆう造りなのか。


「階段を下りて道に沿っていけば、城の礼拝堂につく。足を踏み外さないように気をつけてくれ」

 ガラディア王子が扉を元に戻しながら言う。

 最後に手で天井を押していた。


「なんだか綺麗ですね」

 レナが天を仰ぐと、小さな金色の髪飾りが輝いていた。


「レナ、その髪飾り、どんな効果があるんだ?」

「飾ってあったのを頂戴して、少し着飾ってみました。似合いますか?」

 髪を押さえながらエヴァンのほうを見上げる。


「あ、おしゃれだけじゃなく、付与効果は一応ありますよ。お、教えてないですけどね。レナだってたまに可愛いものをつけてみたいのです」


「いいんじゃない?」


「え・・・・」

「レナも女の子なんだからさ。血なまぐさい場所に身を置くだけじゃなく、ちゃんと女の子らしくしたほうがいいよ」


「・・・・・・・」

「似合ってるから安心しな」

 エヴァンがレナを見下ろして笑いかけた。


「・・・・・・・」

 息をつく。

 レナが無言で軽く飛んで、横に並んだ。

 口をもごもごさせていた。


「・・・何か言いたいのですか? ヴィル」

「別に」


「ふふ・・・レナも・・・レナでもこうゆうの、似合うのですね」

 レナが自分で頬を叩いて、ちらっとエヴァンのほうを見る。

 エヴァンとガラディア王子が会話していた。


「なるほど、やっぱりトムも軍にねぇ・・・」

「功績を上げなければ民は認めないだろう。だから、ブレイブアカデミアに入ったんだろうな」


「声を潜めてくれ。シエルに会う前に見つかったら面倒だ」

「りょーかい」

 エヴァンが後ろで手を組んで階段を下りた。


「この通路は声が響かないような造りになってる。アルテミス王国の者だってほとんど知らない場所だ。どんなに騒いだって気づかないよ」

 ガラディア王子が笑いながら言う。


「そうなの?」

「あぁ、この道はシェリアがよく通っていた、王国の聖堂と繋がっているんだ。幼い頃、2人でこの道を見つけてから、ここでいろんな話をした。懐かしいな」

「どんな話をしたのですか?」


「他愛もない話だ。城下町に新しい店ができたとか、何の魔法を使えるようになったとか・・・シェリアは幼いころから聖女として育ってきたから、あまり外に出られなかったんだ」

 懐かしむように壁を触っていた。


「城下町に出られるのも、月に2,3回、シェリアがポセイドン王国に来たのもたった2回だけだった。俺が何らかの理由をくっつけてアルテミス王国に来たとき、この通路で話し込んでたよ」

「小さい頃からお忍びで会ってたってことか」


「王子の身分で、他国の修道女に会うのはハードルが高いんだ。俺は長男だし、次期国王とされているから元々自由がなくてね」

「やるじゃん」

 エヴァンがガラディア王子を小突いた。


「昔からの友人は大事だよね。俺もユイナが大事だよ。例え彼女が、昔のことをあまり覚えていなくてもね」


 リュウジが足をつけると、虹色の光りが波紋のように広がっていった。

 階段を降りると、先には一本道の廊下が続いていた。


「どこかダンジョンに似てるな」

「レナもそう思いました」


「俺はもっとごつごつしたダンジョンしか見たことないけど?」

 エヴァンが壁に手を当てながら言う。


「この通路は”オーバーザワールド”の開発者が遊びで造った道だと思うよ。誰にも見つからないような隠し通路とかあったほうが面白いだろ? 話題性も出るし」

「まさか、落とし穴とかないですよね?」

 レナがぴょんと飛ぶ。


「はっ、突然壁から矢が出てきたり・・・」

「無い無い。ダンジョンより単純なつくりだろうから安心してくれ。道なりに沿って行けば聖堂に出るよ」

 ガラディア王子が笑いながら前に出た。


「俺についてきてくれ。もし万が一ヴァリ族が出てきたら、頼むよ」

「はい! 任せてください!」

 レナが大きく頷いて歩いていった。


「レナってなんだかテンション高くない?」

「いいことでもあったんじゃないのか?」


「ん?」

 エヴァンが首をかしげていた。

 レナの金色の髪飾りが虹色の光りに反射してキラキラしている。

読んでくださりありがとうございます。

感染性胃腸炎にかかって苦しんでおりました。皆様も気をつけてください。


次回は週末にアップしたいと思います。

また是非見に来てください!



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