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450 IF Root①

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは魔王城から『日蝕の王』の拠点、アルテミス王国に向かっていた。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

ガラディア王子・・・ポセイドン王国第一王子。陸軍のトップ。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

「不思議だね。森を一つ越えた先の国が闇落ちしてるなんて」

 リュウジがモニターで指を動かして、防具を揃えていた。

 朝の陽ざしが眩しい。


「うーん、アクセサリーはリングか腕輪か迷うな。このアバターはアクセサリー3つまでって制約があるから・・・」

「まだ装備決まってないのかよ」

「ポセイドン王国で貰った防具がありすぎて迷うんだよね。闇への耐性付与の防具で固めたほうがいいか」


「適当でいいじゃん。俺らと一緒なんだからさ」

 エヴァンがごつごつした岩を渡りながら言う。


「君ら、いざとなったら俺を見捨てるだろ?」

「バレた?」

「話を聞いてて、大体わかるよ。自分の身くらい、自分で守れるようにするから」


 エヴァンがにやっとすると、リュウジが防具を取り換えていた。


「ヴィル、そういえば、国王と会って何か言われたの?」

「あー、そうだな・・・」


 木の上を小さなリスが走っていく。

 木漏れ日が温かかった。


「当たり障りのない話だった。お前らは来なくて正解だ。あれなら、ガラディア王子とベルギリュス王子と話していたほうが生産性があった」


「どんな話をしたのですか?」

「魔王になってどれくらいなのか、とか、俺たち魔族に何か決まりがあるのか、とか・・・くだらない話ばかりだ」


「魔王と国王が会って、その程度の話って・・・」

「あはは、いかなくてよかったです。レナなら寝てしまいます」

 レナが笑いながら岩を飛び移った。


 地面にはさらさらとした水が流れている。


 ”オーバーザワールド”の敷地は元の世界よりも色鮮やかだった。

 アイリス曰く、クリエイターの理想が詰まっているかららしい。


「あまりに長いから途中で抜けたんだ。ま、ポセイドン王国の本を数冊貰ったのは収穫だったな」

「また読書ですか。そんなに読書ばかりしてると、本になっちゃいますよ」

「ならないって」


 エヴァンが木の枝を避けながら笑っていた。




 軽く飛んで、少し高い岩に上る。

 レナがふわっと隣に並んだ。


「見えてきたな」


「あれがアルテミス王国ですか・・・大きな国ですね。ポセイドン王国と同じくらいでしょうか?」

 大きな城を囲うように、店らしき建物がたくさん立っていた。


 門のあたりには数体のヴァリ族がいて、蒼い結界が張られているのが見える。


「一気に行ったほうがよさそうだ」 

「同感です」


 ガサッ


「ま、待ってくれー!!」

「ガラディア王子」

 ガラディア王子が白い鎧を着て、少し息を切らしながら走って来た。


「うわっ、どうしたの?」


「俺も・・・入れてくれ」


「ん?」

 岩から飛び降りて、ガラディア王子の前に立つ。


「パーティーに入れてほしいんだ」

「軍はいらない。邪魔になるって言ったはずだ」


「違う。俺一人だ」

 ガラディア王子がグローブを外して、剣の柄を握り締めた。


「国王の許可は取ってある。軍はベルギリュスに従うように話した。俺もアルテミス王国に行かせてほしい」

「婚約者のためか?」

「・・・そうだ。シェリアにもう一度会いたいんだ」


「止めたほうがいいよ」

 エヴァンが口を挟む。


「戦うことになる。私情があるならなおさら」

「でも・・・彼女なら俺のことを思い出すかもしれない。目を覚ませば・・・」


「『心に問いかければ、分かり合えるかもしれない』とかそんな都合のいい奇跡なんて起きないんだよ。この世界は理想通り進まないんだから」

 エヴァンが強い口調で言う。

 レナが何か言おうとして口をつぐんだ。


「君は王子だろ? おまけに陸軍を率いる者だ。心中することは許されない、ただ、現れた敵と戦わなきゃいけない。婚約者だろうと関係ない」

「・・・・」

「できるの?」


「もちろん、覚悟はしてる」

 鬼気迫る表情でポセイドン王国の紋章に手を当てた。


「シェリアに会いたいんだ。俺は王子だが陸軍の指揮を執っていた者だ、そこそこ力もある」


「・・・・あ、そ。じゃあ、ヴィルがいいって言ったらいいよ」

 エヴァンが視線を逸らして、前を歩いていく。


「俺は別に構わない。邪魔になったら見捨てるからな」


「それでいい。行かせてくれ」

 

 ― 氷のブリーズソード


 レナが氷の剣を出した。


「ヴィル、もう、ヴァリ族はこちらに気づいたようです」


「わかった。俺から行こう」

 

 ― 魔王のデスソード


 ザッ


 地面を勢いよく蹴って、加速していく。

 飛びながら魔力を練って、属性強化のバフを付与していた。



 ヒュゥウウウウ


 風のような音がした。


 真っ黒なローブを羽織った骸骨のような顔をしたヴァリ族が、3体アルテミス王国の門の前にいた。

 杖をかざしてこちらを見ている。

 どこからともなく黒い影のような飛び回る者たちを集めていた。


『!?』

 ヴァリ族は俺が近づくと、一歩下がった。


「こいつら死神か?」

 上下左右に飛び回り、死をもたらす呪文を唱えているようだ。


「悪いが、俺には全く効かない」



 ザンッ ザザザザザァ


 近づく死神たちを、一体一体切り裂いていく。




 キィイイイイいあああああ

 

 断末魔の悲鳴を上げながら消えていった。


『!!』


 召喚士だったヴァリ族か。

 骸骨だったが、どこか人の面影がある。


 ヴァリ族の3体が素早く杖を回して、シールドを張った。



 ― 絶対強制解除アブソリュートキャンセル


 パリン


 シールドに付与された属性値を無効化する。


 剣を突き立てると、シールドはすぐに敗れた。

 魔力を練り直して、一体のヴァリ族の喉元を切り裂く。


 きゃああぁぁぁぁぁ


『どうしてぇええ、私たちが消えなきゃいけないのぉおお?』

 骸骨のヴァリ族が女の声で悲鳴を上げた。


『XXXが死んじゃったぁぁぁああ。『日蝕の王』に知らせないと』

『今日は祝いの日なのにぃいい。成果をあげたかったのにいい』


「祝い?」

 動きを止める。


 しゅうぅううううう


 一体のヴァリ族が蒸気のように煙を上げて消えていく。


『今日は『日蝕の王』と王妃の結婚の儀がある。結婚、結婚? 結婚・・・』

『結婚式楽しみにしてたのにぃいい。憎い、憎い、憎い、殺さなきゃああああ』

 顔を押さえながら奇声を上げる。



「は?」


 ― 黒雷帝エンペラー


 バチッ バチバチバチバチ


『え・・・・』


 エヴァンが剣を振り下ろして、黒い稲妻を放った。

 一瞬にして消滅させる。


 マントがふぁさっと地面に降りた。

 レナがアルテミス王国を真っすぐ見つめていた。


「必要な情報は聞けたよね?」

「・・・まぁ、不明な部分は多いけどな」


「中途半端に人の頃の記憶があるヴァリ族もいるのですね。厄介です」

「一瞬の判断ミスが命取りになる。攻撃性のあるやつは、なるべく早く殺していくよ」

 エヴァンが剣をしまう。


「俺たちの目的は、『日蝕の王』だろ?」

「そうだな」


「おーい、大丈夫か?」

 リュウジとガラディア王子が駆け寄ってくる。


「問題ない。数体の黒い奴らが一斉に死の呪文を唱えていたようだが、俺には効かないからな」

「死の呪文?」


「あの黒い奴に少しでも触れれば即死する。俺は冥界に行ったことがあるから耐性があるんだ」

 魔王のデスソードを消した。

 異世界の魔力は、完全に使いこなせているようだ。



「なぁ、今倒したヴァリ族、人の言葉を話していなかったか?」

 ガラディア王子がヴァリ族の居た場所に立つ。


「人の言葉だったが、自我があったのかは微妙だ。話すたびに、同じことを言ったり、金切声を上げて叫んだりするからな」


「闇落ちしたヴァリ族にも人の頃の記憶がある・・・なんて、希望を持ってしまうよ」


「駄目だよ」

 エヴァンが冷たく言い放つ。


「ここから先は絶望しかない。特に君のような思い入れがある者にとってはね。嫌だったら引き返したほういいよ」

「エヴァン、少し言い過ぎです」

 レナがたしなめるように言った。


「希望を持たなきゃ進めないことだってあります。ほんの数パーセントにすがりたくなる気持ちはエヴァンだってわかるはずです」

「わかるから言ってるんだよ」


「エヴァン・・・」


 エヴァンがレナから視線を逸らす。


「いいんだ。俺の覚悟が足りなかった。思い知ったよ」

 ガラディア王子が深呼吸した。


「お前ら、グダグダ言ってないで進むぞ」

「あ、待ってください、ヴィル」


「あ、リュウジ、今の戦闘ってデータ保存した?」

「さすがに間に合わなかった。さすが反応早いね。途中から目で追えなかったよ」

「このスピードについてこられなきゃ、簡単に死ぬよ」


「確かに、40%の確率で死ぬ計算だ。装備を調整するか」

 リュウジがモニターを出して、防具を変更していた。


 魔王のデスソードを消して、アルテミス王国の城下町に入っていく。

 門にいたヴァリ族が死んだことが分かったのか、アルテミス王国を漂う闇の魔力が濃くなるのを感じた、

読んでくださりありがとうございます。

戦いが始まりますね! ヴィルもエヴァンもレナも最強なので、無双するかなー?


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

次回は3連休位にアップしたいと思います。また是非見に来てください!

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