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444 出発の朝の夢

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは魔王城から『日蝕の王』の拠点らしき場所に向かう。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 アイリスは幼少型のアイリスに魔王城に戻った後も情報共有していたらしい。

 いつから幼少型のアイリスが離れていったのか、わからないという。


 悪魔がサタニアをさらった理由は一つしかない。

 星の女神アスリアになるのを阻止したのだろう。


「サタニアって、よくさらわれるよな。ったく、強がりなくせに・・・」

 エヴァンが剣をしまいながら、悔しそうな顔をしていた。


「本当にごめんなさい・・・私が悪魔アイリスに気づいていれば・・・」

「遅かれ早かれ悪魔にはバレていただろう。アイリスのせいじゃない」


「でも、向こうの情報が連携されない時点で・・・・」

 アイリスが手を握り締めて俯いていた。

 魔王のデスソードを消して、息をつく。


「エヴァン、リュウジ、レナ、明日は予定通り出発する。準備をしておけ」


「あの、サタニア様は悪魔に捕まって危険にさらされたりは・・・」

「悪魔はたぶんサタニアを閉じ込めておくだけですよ」

 レナが口をはさむ。


「ラグナロクを防ぐためです。サタニアがラグナロクを起こすと思ったんでしょうね」

「ラグナロク?」

「聞いたことあるな・・・確か、本で出てきたはずだ」


「あまり記載のある歴史書は無いと聞きます。神の力が弱まるときが来るんです。神々の恥部と呼ばれるので、口頭でしか受け継がれないのです」


 レナが床に散らばったダンジョンの地図を拾った。


「簡単に言えば、神々の地位を揺るがす危機が起こります。レナも昔、勇者のパーティーだったのでラグナロクにあったことはありますが、話すと長くなります。今は皆さんお疲れなので・・・」

 レナが荒れた机を片付けながら周囲を見ていた。


 空気が張りつめたままだった。

 全員が得体のしれない何かに怯えているようだった。


「ラグナロクのことは、また今度話しますね」


「・・・あぁ、それがいいな」


 アイリスも混乱して余裕がなさそうだ。

 ぶつぶつ言いながら、頭を押さえている。


 何か声をかけてやりたかったが、言葉が見つからなかった。

 アイリスは自分に起こったことに関しては、弱いんだよな。


 人工知能IRISか・・・。




 その日の夜は、不思議な夢を見ていた。

 おそらく、どこか遠くの国の王の話だった。


 王は圧倒的な力を持ち、自国を守っていたが、退屈していた。

 プレイヤー? らしき者たちを多く受け入れ、XXX討伐の拠点となっていた。


 隣にいたのはシエルに似た少女だった。

 王の補佐をしていたのだろう。


 敷かれたレールに沿って動かなければいけない、窮屈な世界だった。

 唯一、小さな洞窟に入ると、精霊のような少女に会うことだけが、開発者の意図していない行動だった。


 消えかかった精霊の名は・・・。


「IRIS?」


「あ、魔王ヴィル様、起きた」


 目を開けると、アイリスがこちらを覗き込んでいた。

 窓から差し込む朝焼けが眩しく感じられる。


「・・・っと」

 体を起こすと、本が落ちそうになった。

 ソファーで本を読んでいてそのまま寝ていたようだ。


「今、私のことIRISって呼んだ? もしかして、私の夢、見てたの?」

「そうじゃないって」


「本当かな?」


「それより、大丈夫なのか? 悪魔のこと」

「うん。一晩考えて、気にしないことにした。ねぇ、魔王ヴィル様、なるべく早く帰ってきてね」

 アイリスが目を細めながら言う。

 満面の笑みとは裏腹に、不安なのが伝わってきた。


「遅くなったら、私が行っちゃうからね」


「わかったって。なるべく早く帰る」

「うん」

 あくびをしながら立ち上がる。


「こいつら、人の部屋で好き放題やってるな・・・」

「魔王ヴィル様、人気者だから」

 アイリスが小さく笑う。


 ナナココとユイナがベッドのほうで寝息を立てていた。

 テラが床で腹を出して眠っている。


 俺の部屋がすっかり占領されているな。

 一応魔族の王の部屋なんだが・・・。


 マントを羽織って部屋を出ていく。




「魔王ヴィル様!」

 廊下を歩いていると、サリーに呼び止められた。

 魔力も体力も大分回復したようだな。


「どうした? こんなに朝早くから」

「魔王ヴィル様、申し訳ございません。油断して捕まってしまい、不覚でした」

 サリーが深々と頭を下げた。


「サリーのせいじゃない。未知の敵相手に、よくここまで耐えてくれた」

「でも、シエルが捕まってしまい・・・」

「俺の選択ミスだ。”オーバーザワールド”をなめてたんだ」

 サリーの目を見つめる。


 ジジジジ ジジジジ


-------------------


『べXXXXX』


『XXXの軍はXXX だからXXXXしないと崩れる』


『XXXX 大丈夫か?』

『XXXの軍はXXXXXX』


 赤い髪を持ち、炎のような魔力をまとい、大剣を扱う女剣士?

 ドラゴンのような力を感じる。


『私はXXXXXXX XXXX』

 負傷した傷にヒールを唱えながら、人々の前に立つ。

 顔はサリーによく似ている気がした。


『かしこまりました。---は――――の武器に・・・・』

 

 砂埃が舞って記憶が途切れていく。


-------------------


 夢の映像の続きが、一瞬だけ脳裏に浮かんだ。

 なんだ? この感覚は・・・。


「魔王ヴィル様」


「!!」


「魔王ヴィル様、いかがいたしましたか?」

 サリーの顔を見てはっとする。


「・・・サリー、俺が魔王になる前に、どこかで会ったことあるか?」


「いえ・・・お会いしたのは魔王になってからかと」

「そう・・・だよな」

 こめかみを押さえて、何回か瞬きをする。


 前世の記憶? いや、俺はそんなもの持っていない。


 本の読みすぎかもしれないな。

 異世界の本にのめりこむと、現実との境目がつかなくなる。


「何でもない、忘れてくれ」

 手を挙げてひらひらさせる。


「?」

「俺が留守の間、魔族を頼むよ。サリーには絶大な信頼を置いてる。シエルのことは俺らに任せてくれ」


「絶大な信頼・・・はい! 私にはもったいないお言葉。必ずやご期待に沿えるように、精進します」

 サリーが曇りが晴れたように、自信に満ちた表情に戻っていた。


「あ、そうだ。これを渡そうと思ってたんだ」

 ポケットから錬金した黒い髪飾りを出して、サリーの髪につける。


「え? 髪飾り・・・・ですか?」

「前に錬金したペンダント、もう使えないだろ? これなら大丈夫だ。どんな攻撃でも一度だけ弾くバフを付与している。今回のように捕らえられることはないだろう」

「私に・・・・・・」

 サリーが髪飾りに触れる。


 異世界の魔術書を参考にして作ったものだった。

 ”オーバーザワールド”の攻撃にも効果があるだろう。


 サリーにとって、レムリナが展開した籠はトラウマになりかねないからな。


「もっと早く錬金できていればよかったんだけどな」

「いえいえ、そんなことありません! とても嬉しいです!」

 サリーが顔を赤らめていた。


「ありがとうございます。大切にします」

「無理はするなよ」


「は、はい・・・あと、魔王ヴィル様・・・」

「ん?」


「レムリナの・・・あの場所にいた者は、どうして魔王ヴィル様と同じ顔をしていたのですか?」

 サリーが戸惑いの表情をこちらに向ける。


「・・・聞いてはいけないことでしたら、見なかったことにします」


「いや、隠すつもりは無い。あれはもう一人の俺だ」


「もう一人の魔王ヴィル様?」


「魔王にならなかった時間軸の俺が存在している。このことはまだ他の上位魔族には話していない。いずれ俺の口から話す」

「かしこまりました」

 サリーはすんなりと受け入れて、それ以上聞いてこなかった。


 マントを後ろにやって、魔王城の出口に向かう。




 外に出ると、エヴァン、レナ、リュウジが集まっていた。


「ヴィル、遅いって」

「お前らが早すぎるんだよ」


「サタニアの転移魔方陣も、セイレーンも無いとなると、飛ぶしかないな。リュウジ、なんかいいもの持ってないか?」

「お願いします。レナは楽したいのです」


「一応あるよ。空飛ぶ船みたいなのだろ?」

 リュウジがモニターを出して指を動かしていた。


「あるのですね!?」

「本当、異世界の奴らってチートだよな」

 エヴァンが息をつく。



 タッタッタッタッタ・・・


「おーい、待ってくれ・・・ぜぇ、ぜぇ・・・」

 遠くからトムディロスが息を切らして走って来た。

 大きく手を振る。


「はぁはぁ・・・ぜぇ、ふぅ・・・・」


「レナの回復魔法必要ですか?」

「大丈夫・・・久しぶりに走ったから死にそうだけど・・・」

 額の汗をぬぐいながら、息を整えていた。


「どうした?」

「俺も連れて行ってほしいんだ」


「えっ!?」

 エヴァンとレナが同時に目を見開いた。


「トムが・・・?」


「何か目的でもあるのか?」

「君らの行こうとしているところは、アルテミス王国、ポセイドン王国とは目と鼻の先にある国だ。俺の国を確認しておきたい」

 トムディロスが珍しく真剣な顔をしていた。


「結構危険な場所なんだけど・・・」

「危険は承知だ。俺は戦力にならないだろうから、いざとなったら俺のことは見捨てていい。自国の民が気になる。頼む」

「・・・・・・・・」

 エヴァンが俺に任せると手で合図してきた。


「プラス1人で5人乗りか・・・まぁ、これならいけそうかな。乗り物は問題ないよ」

 リュウジがモニターをみながらぶつぶつ話している。


 仕方ない。

 連れていくしかなさそうだな。


 許可すると、トムディロスが安堵の表情を浮かべていた。

読んでくださりありがとうございます。

サタニアがさらわれてしまいました。悪魔たちはサタニアをどうするのでしょうね。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

次回は今週中にアップしたいと思います。また是非見に来てください!

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