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534/594

441 圧倒的

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルは魔王城に戻り、立て直しを計画していた。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

「あんたみたいなガキが一人で私に向かってくるとはいい度胸ね」

 レナの短い髪は徐々に赤くなっていた。


「私はガキじゃないです!」

「ふふふふ、まぁいいわ。私、そうゆうの嫌いじゃないから」

 リミューレが高笑いして、ベラスクスの肩に乗る。

 杖を出して、レナに向けた。


「まずはあんたを殺してやるわ。ベラスクスお願いね」


 グガッ


 ― アーストライア・ボム ―


 ドドドドッドドドドド・・・


 リミューレが漆黒に輝く球をレナに向かって追撃していく。

 ベラスクスがリミューレが魔法を放つ瞬間、爪を立てて何かを付与していた。




 レナが素早く避けながら、魔王城から距離を取っていく。


「すばしっこいわね」

 リミューレがイライラしながら呟いた。



 しゅうぅうううう



 レナから外れた球が、地面に窪みを作っている。

 メイリアが窪みに近づいていった。


「煙? この魔法は・・・・」

「近づくな!」


「!?」

 メイリアがびくっとして離れた。


「普通の闇属性の魔法に見えるが・・・当たれば即死する魔法だ。そこの煙にはまだ、魔力が残ってる。うかつに近づくな」


「即死ぃいい、ひいいぃいい!! 離れてメイリアたん!」

「わっ」

 トムディロスが無理やりメイリアを引っ張った。


「メイリアたんは危ないことしないで」

「ねぇ、レナは大丈夫なの? あの魔法で即死するってわかってるの?」

「そうだよ。あの子が、ひ、一人で戦うなんて無謀じゃない? 2対1なんだから」


「レナなら問題ない。見てみろ」


「?」


「私は逃げ回っているだけじゃありません」

 レナが逃げ回りながら、いつの間にか大きな魔法陣を展開していた。

 巨人ベラスクスの足元が凍り付いていく。


 グガアァアア


 暴れようとしていたが、足が動かないようだ。

 レナの魔力のほうが圧倒的に優位だな。


「なっ」

「ベラスクス、捕まえました。後は・・・」

 氷のブリーズソードを、レナの何倍もある巨人ベラスクスに向かって振り下ろした。


「っ・・・・」

 リミューレが慌てて、ベラスクスから離れる。 


 ― 氷結晶 ― 


 グガッ 


 レナが切り裂いた部分から瞬時に、氷漬けになっていく。


「すぐ楽になります」

 ベラスクスの身体が氷になったのを見て、レナが剣で突いた。


 ― 破壊ブレイク


 パリン


 サアァァァァアアア


 氷の結晶になって砕けていった。

 月明かりに照らされて、きらきらしながら落ちてくる。


「すごい・・・・」

「やばいじゃん。あの子」

 トムディロスとメイリアが氷の結晶を見上げながら言う。


「だよな。やばいんだよ」


「ん?」


「・・・・・・・」

 レナの力はマーリン以上の魔導士ということになる。

 すべて思い出したレナの力は未知数だ。


 このまま魔族の仲間でいてくれたならいいが・・・。



「あーあ」

 リミューレが杖をくるくる回す。


「私の可愛いベラスクスにこんなことするなんて。いいわ、絶対に敵を取ってやるんだから」

「召喚系の魔導士なのですか?」


「ふふ、召喚しかできないと思ってるの?」

 リミューレが杖を長く細い剣に変えた。


「あんたは氷属性の魔法しか使えないのかもしれないけど、私は自分の魔法の属性変化ができるの。勝負はここから・・・」


 ― XXXXX XXX XXXXXX ―

 

 レナがわからない言葉を唱えると、空から氷の縄が落ちてきて、リミューレの両手両足を固定した。

 

 ドサッ


「きゃっ」

 リミューレがその場に膝をつける。


「何!? あんた、魔力を隠して・・・」

 レナが近づいていくと、リミューレが怯えていた。


「異世界の者は心が読みにくいので、少し苦戦しました」

「あんた心が・・・・?」

「はい。ちゃんと楽にしてあげます」


 レナが剣を杖に変える。


 ブオン


「ふふ、ここで死ぬつもりなんかないわ」

「あ・・・転移魔方陣ですか」

 転移魔方陣が展開されていた。


「残念ね・・・・転移魔方陣には気づかなかったの。ここは負けを認めるわ。でも、次会ったときは」


「なんちゃって、次なんてありませんよ」

 レナがにやりと笑う。


「!?!?」


 じゃらん


 リミューレの転移魔方陣は鎖で封じられた状態になっていた。

 何か呟いたときに、2つの魔法を展開していたのか。


「転移魔方陣はレナが無効化しました」

「え・・・嘘・・・・」

 リミューレが地面の魔法陣を見て杖を落とす。

 レナが杖を垂直に掲げる。


 ― 煉獄の炎 ―


 いやぁぁぁあああああ


「痛覚を・・・日蝕の・・・王・・・ぎゃぁぁああああ」

 レナが杖を回すと、リミューレが黒い炎に包まれていた。

 リミューレの叫び声が響き渡る。


「私はいろんな魔法が使えますよ。氷魔法は故郷を思い出すから好きな魔法なんです」

 

 ザアアアァァァ


「火属性が使えないわけじゃありませんから」

「よくも・・・よくも・・・・」

 リミューレがのたうち回りながらレナの足に手を伸ばした。

 触れる手前で、足から光の粒になっていく。


「XXXXナヴXァダXXX」


「!?」

 レナが、冷たい表情で聞きとれない言葉を言い放った。


「どうしてそれを・・・」

 リミューレがはっとした表情をしたまま消えていった。



「レナ?」

 軽く飛んで、レナの傍に降りた。


「怪我はないか?」

「あ、ほら、レナでも簡単にやっつけることができました。だから、安心してください。こちらの世界での強さは、”オーバーザワールド”の世界の敵にもちゃんと通用しますよ」

 レナがころっと表情を変えて、振り返った。

 髪の色が元の色に戻っていく。


「レナなんて傷一つありません」

 魔族のほうを見て、自分が無傷なことをアピールする。


「そ、そうか。そうだよな。我々の強さは絶対的!」

「そうよね! ヴァリ族がどんな者かわからなかったけど勝てそう。じゃなくて、絶対勝たなきゃ!!」

 カマエルとジャヒーが自分たちを鼓舞していた。

 下位魔族たちもちらほら覗いていたが、自信を取り戻したように見える。


「魔族って単純ね。レナはエルフ族の巫女、強さはともかく経験値では上位魔族のはるか上をいくというのに」

 メイリアが小さく呟く。


「いえいえ、これでいいんです。ね、ヴィル」

「あぁ。レナの策略通りだ」

「はい」

 レナが大きく頷いた。


 レナの言う通り、俺が倒すよりもレナが倒すほうが魔族のプレッシャーを解く効果があった。

 魔族に安堵感が広まっていた。


 魔族はレナの強さが理解できていないのだろう。

 あまりにもスムーズに様々なことをこなしていた。


 一つの舞を見ているようだった。


「もしかして、ここって危険なの? メイリアたん、俺の国に行かない? ポセイドン王国」

「どうして?」

「どうしてって・・・ほら、ポセイドン王国なら安全だから。食べ物だって美味しいよ。こんな大きな肉料理とかあるんだから」

 トムディロスがメイリアに身振り手振りを交えて話していた。


「それよりも、そこの地割れ、確認したいから」

「わっ、危ないことしないでね、メイリアたん。俺も行くよ」

 トムディロスは足が絡まりそうになりながら、メイリアについていった。

 メイリアはリミューレが使用した魔法の跡が気になって仕方がないらしい。


 レナとリミューレの戦闘していた場所から動かなかった。



「魔王ヴィル様!!!」

 アイリスとユイナが駆け寄ってくる。


「戦闘時のデータは取れたか?」

「うん。ユイナが録画してくれた」

「今、確認しましたが大丈夫そうですね」

 ユイナが小さなモニターを出して、映像を確認していた。


「れ・・・レナの戦闘を見るのですか!?」

 レナが顔を赤くする。


「そうだよ。不都合でもあるのか?」

「無いですが、なんだか照れます。自分の戦闘の様子なんて見たことないので」

 レナが自分の頬をぱんと叩いた。


「すごい不細工に映ってたらどうしよう」

「誰もそんなとこ見てないって・・・」

 レナが急に手櫛で髪を梳いていた。


「まぁ、今日は夜も遅い。録画の確認は明日にしよう」

「はい! ふぁあ、私も一気に眠くなってきた」

 アイリスが口を押えてあくびをする。


「そういや、エヴァンは?」

「魔王ヴィル様の部屋で寝てますよ。呼んだのですが、パスと言ってました」

「エヴァンらしいな」


 ポケットの仲がじんわりと熱かった。

 ゼロが落とした小瓶か?


 取り出して月明かりに照らす。


「わぁ、綺麗ですね。色とりどりの・・・飴ですか?」

「なんだかおいしそうに見えてきました」

 ユイナとレナが興味深そうに小瓶を見つめる。


「食べ物じゃない。ゼロが落としていったんだ。何に使うかわからないけどな」


 ただのガラス玉だと思っていたが、何か意志のようなものがあるように感じられた。

 ゼロ(あいつ)が残していったものだ。


 どうせ、ろくでもないものだろうけどな。


「んなことより、レナ、あの女に最期、なんて言ったんだ?」

「え、えっと、その・・・いいじゃないですか。レナもヴィルの部屋で寝ます。大きいベッドで寝たいです。ヴィルのベッドが魔王城内で一番ふかふかです」


「言っておくけど、先にエヴァンが寝てるぞ」


「えっ・・・じゃあ、レナの寝る場所は?」

「自分の部屋があるだろうが。ったく、エヴァンといい、サタニアといい、どうして俺の部屋に集まりたがるんだよ。静かに読書してたいんだが・・・」

 頭を搔いた。


「みんな行くなら、もちろん私もいっていいよね? 魔王ヴィル様」


「アイリスまで・・・もう、好きにしろ」


「はーい」

 アイリスが笑いながら歩いていった。

 ピンクの髪がさらさらとなびいている。

読んでくださりありがとうございます。

レナは敵なしの状態ですね。勇者ゼラフとどんなことをしてきたのか・・・。


ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。

次回は週末アップしたいと思います。

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