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412 Always②

勇者ゼロは別ゲームに転移し、魔王ヴィルが復活した。

魔王ヴィルが地上に戻ると、異世界の”オーバーザワールド”というゲームと接続が完了し、プレイヤーやキャラたちが中心の世界になっていた。

魔王ヴィルは、ウイルス感染して暴走したアイリスを、『冥界への誘い』により、冥界に連れていく。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

幼少型のアイリス・・・悪魔となったアイリスの分霊


IRIS・・・VRゲーム”ユグドラシル”の記憶を持つ、アイリスの原型。3Dホログラムで手のひらサイズの少女。


エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。

クロノス・・・時の神。

「それでね、”ユグドラシル”ではベリアル様はまだ何もできなかった私に色々教えてくれたの。プレイヤーのこととか、国のこと、争いのこと、開発者っていう外の人間がいること・・・ベリアル様のおかげで外のことがわかったの」

「・・・・・」


「ねぇ、ベリアル様・・・じゃなくて魔王ヴィル様聞いてる?」

 IRISを名乗る3Dホログラムの少女が一方的に話していた。

 

「聞いてるって。つか、本当にアイリスなのか?」

「そう。いつも省エネモードの時に出るから」

「省エネモード?」

「人工知能IRISのバックアップ。普段は表には出ない」

 妖精のように飛び回っていた。


「バックアップって・・・まさか・・・」

「あー、ほらほら、アリエル城のアイリスの部屋だよ。このころはまだ入ったばかりだから、何もないけど、えっと・・・ほら、ここには魔法薬がある!」

 IRISが切り替わった場面に注意を向けようとしていた。




『王女って、あまり友達とかできないのかな。城からあまり出ないように言われてるし。クロノスはこの時間軸で間違いないって言ってたけど』

 アイリスが部屋から窓の外を見つめていた。

 意外と部屋は殺風景で、装備品が多く置かれていた。


 人魚の涙のピアスが光る。


『ヴィル様、ふふ、この世界では魔王ヴィル様って言うのね。私は、ベリアル様のこと忘れたことがないから、会ったらすぐわかるんだから』


 トントン


『アイリス様』

 メイドの声が聞こえた。


『はーい』

『あの・・・・サンフォルン王国の軍がこちらに向かっているとの情報が入っています。戦闘のご準備を・・・大丈夫でしょうか?』

 メイドが自信なさそうに言う。

 アイリスが髪を一つに結んで、ドアのほうへ歩いていった。


 バタン


『準備はできてる。行けばいいの?』

『はい・・・アイリス様』

 メイドがアイリスの顔を見て悲しそうな顔をした。


『そのような身軽な装備で大丈夫でしょうか? もし、アイリス様がご体調すぐれず、装備品用意ができないようであれば、今回の戦闘は・・・』

『全然、大丈夫だよ。誰の指示で動けばいいの?』

 アイリスが軽い口調で話す。


『・・・・王国騎士団長バルトラがおります。ご案内します』

 メイドがドアを閉めて、アイリスをどこかへ連れて行った。


 城の内部は、俺が見たような豪華な装飾はなく、シャンデリアでさえシンプルだった。

 どことなく国の貧しさを感じた。


「アイリス戦闘に行くよ。追いかけないと」

 IRISが俺の袖を引っ張る。


「戦闘? 王女に戦闘って・・・」

「アイリスは最初は、姫騎士として城に入ったの」

「姫騎士・・・随分、色んな呼び名があるな」

「そう」

 IRISが前を飛びながら、こちらを振り返る。


「大丈夫? ついてこれてる?」

「一応な」

「じゃあ、行こう!」

 IRISがほほ笑んでスカートの裾を直した。



 バチン


『燃えるぞ!!!!』

 

 ゴオォオオオオオ


 炎の玉を風魔法で切り裂いて避ける。

 魔導士が一斉に同じ魔法弾を撃ち込んでいた。


 バチン バチン バチン


『気を抜くな! 後方部隊、怪我人の手当てを!!』

『かしこまりました』

 怪我を負った兵士を後方へ連れていった。


 空中戦のようだ。

 サンフォルン王国の軍は遠くから、矢や魔法を撃ってきていた。


『こんな・・・勝てるわけがない。人数も、力も圧倒的だ・・・』

『っ・・・強い・・・』


『尻込みするな! 勝つのはアリエル王国だ!!』

 白馬に乗った青年が士気を上げていた。


 馬鹿だな。

 力は圧倒的にサンフォルン王国のほうが上だ。

 こいつら全員死ぬか逃げるかしか、選択肢はない。

 


 タンッ


 アイリスが何も持たずに、先頭にいた王国騎士団長の紋章の入った剣を持つ男に近づいていった。


『私がアイリスだけど、どうしたらいい?』

『っ・・・!! なぜ、王女がここに』

『なぜって・・・そうゆう決まりだから』

 王国騎士団長は浅黒い肌の屈強な男だった。

 馬に乗って大きな剣を背負っている。


『アイリス様、いくら何でもここは危険です。見ての通り、劣勢に追い込まれている。一国の王女がこんなところにいては・・・』

『敵は? あの軍を倒して来ればいいの?』

 アイリスが強い目つきで睨んだ。


『・・・あちらにいるのが敵のサンフォルン王国の軍になります。1000人はいるかと見え、魔導士は約400人と長距離戦に強く、防御を張って進むしかありません』


 ― ホーリーソード ― 

 アイリスが光の剣を出した。


『あいつら全員始末すればいいってことね?』

『え・・・・』

『みんなはシールドの中で待ってて』

 

 ― 花光の盾 ―


 アリエル王国軍全員を囲むようにシールドを展開した。

 花びらのように、きらきら輝いていた。


『行ってくるね。そこを動かなくていいから』

『あ、アイリス様!!』

 王国騎士団長の声を無視して剣に魔力を溜めていた。


 アイリスはたった一人で、サンフォルン王国軍の中に入っていった。

 地面を蹴って加速する。


 パァン パァン


『なっ・・・・!?』

 数回大きな音と光が見えただけだ。

 目を細めると、死体がごろごろ転がっているのが見えた。


『・・・・嘘だろ・・・・』

 静まり返った兵の中から、唯一出た言葉だった。



 アイリスが何もなかったような顔で戻って来た。


『弱い人間は束になっても弱い・・・。ねぇ、終わったよ』

 ホーリーソードを消す。


『・・・・・・・』

『・・・・・・・』

 返り血を浴びていて、手は赤く染まっている。

 軍の人間は唖然として、しばらく動けないでいた。


『ん? どうしたの? ステータス異常は感じられないけど』

 アイリスが近くの兵に近づいた。


『うわっ・・・ば、化け物だ!!』

『うわぁぁぁぁああ』

 アイリスと目があった瞬間、一斉に、転げるように逃げていった。

 置いていかれた馬も、足を引き摺りながら主人についていく。


『あれ? 駄目だった?』

 アイリスが首を傾げた


『ねぇ、バルトラ。どうしてみんな逃げちゃったの? 敵はいないのに』

『そ・・・そうですね・・・』

 アイリスが王国騎士団長のほうを見上げる。

 王国騎士団長が汗を流しながら、馬から降りていた。


『皆、アイリス様の力に驚いてるだけです。このような戦いの中に身を置いてる上、精神もすり減っていたのです。どうか、お許しください』

 片膝をついて俯く。

 恐怖からなのか、震えているように見えた。


『ううん。気にしてないよ。そっか、私くらいの年齢の少女はもっと可憐に戦わなきゃいけないよね。血の出ない殺し方かな。そうゆうのがウケるって忘れてた』

『え・・・・?』

『次はちゃんと馴染むようにする。協力プレーも大事だもんね。いまは、シャワー浴びたいな。いつ、あの方と会うかもわからないし。血まみれだったら驚くもんね』

 アイリスが笑みを浮かべる。


『あ・・・・』

『戦闘が終わったんだから、早く帰りましょ』

 弾むようにして、呆然とする王国騎士団長の横を通り過ぎていった。


『お、お待ちください、アイリス様』

『ん?』

『あ・・・・いや、その力は、その・・・生まれつきでしょうか・・・?』

 言葉を選ぶようにして言いながら、つばを吞んでいた。


『うーん、元々強いよ』

『っ・・・さようでございますか。失礼しました』

 王国騎士団長が地面に手をついたまま、深々と頭を下げていた。



「アイリスは強いでしょ?」

「俺と会ったとき、アイリスはこんな力持っていなかったが?」


 IRISが両手を伸ばす。


「だって、今、魔王ヴィル様が通ってきた時間軸と違うから。最初はこんな感じで、アイリスが、王国軍を倒してた。アリエル王国の領土が広がっていったのは、アイリスのおかげって言われてるよ」


「で、俺はいつ出てくるんだ? そもそも人間同士の戦いかよ。魔族がいないじゃないか」

「・・・・・・・」

 IRISが少し下を向いて、力なく微笑む。


「・・・もうすぐ出てくるよ」


「?」

「あーっと、そうそう。それでね、魔王ヴィル様とベリアル様の共通点はたくさんあるんだけど、やっぱり一番似てるところは優しいところかな。ベリアル様は本も好きだったの。私に読み聞かせてくれたこともあってね、最初に貰った本は『伝説の・・・」

 IRISが得意げに話し始めた。

 よく覚えてるな。創作してるんじゃないかと疑うくらい細かく伝えてきた。


「・・・・・・・」

 ふと、アイリスのほうを見る。

 血まみれにもかかわらず、鼻歌を歌いながら城のほうへ歩いていった。

IRISはベリアルのことが大好きですね。

ベリアルは外では王としての威厳を示していましたが、IRISと会っている時だけがほっとできる時間だったそうです。


急に寒くなってきましたね。今日はハロウィンなので街もにぎやかでした。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください!次回は来週アップします。

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