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406 太陽を喰らう④

勇者ゼロが仮死状態になることにより、魔王ヴィルが復活した。

魔王ヴィルが地上に戻ると、異世界の”オーバーザワールド”というゲームと接続が完了し、プレイヤーやキャラたちが中心の世界になっていた。

魔王ヴィルと闇の王との戦いの火蓋が切られる。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

サタニア・・・ミサリアと名前を変え、ゼロと共に行動をしていたが、命を落としていた。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。

 ― ダーク・デストロイ ― 


 闇の王が勢いよく向かってきて、正面から剣を振り下ろしてきた。

 魔王のデスソードで受け止める。


「この一撃は重いだろう? これが闇の王たるものだ」


 腕輪を確認する。

 魔力は正常。コツは大分掴めている。


 ドドドドッドドドド


 風圧でステージが砕けていった。


「うわぁああ」

「やべっ」

 逃げ遅れたプレイヤーが、岩にぶつかり、光となって消えていく。


「こんなゲーム初めてだ。絶対生き残ってやる」

 プレイヤーの一人が岩を鎖鎌で砕いていた。


「うわ、同接1万超えてるけど、いつ切れるかもわからない」

「タクト、配信気にしてる場合じゃないだろ!」

 襲い掛かる魔族を避けながら、プレイヤーなりに戦闘していた。


 アリエル王国のギルドのS級の者たちより強く感じた。

 身のこなしが上手く、この状況でも冷静沈着に判断して連携が取れている。


 まぁ、命がここに無いから恐怖が無いのだろう。



 ギギギギ・・・


 闇の王が力を強めていく。

「魔王、プレイヤーが気になるか?」

「お前の攻撃があまりにも荒いから、退屈でな」

「よく言うな」

 

 キィン キィン キィン キィン


「そんな、闇の王が押されてる!?」

 魔族が低い声で言う。


「お前らの相手は俺だよ」


 バチッ 


 エヴァンが剣に電流を流して、魔族に向かっていった。

 

「逃げろ! ダミグラ!」

「遅いね」


 ジジジジジ ジジジジジ


「ぐああぁぁぁああ」

 エヴァンが炎の魔族を撃破する。 


 キィン キィン キィンッ


「魔王、よそ見ばかりするな!」

「フンッ。弱いんだよ」

「なんだと?」

 剣で押し切っていく。


 キィンッ


 闇の王がマントを翻して、剣を弾いた。

 闇の王の攻撃はなぜかスローに見えた。

 動きが完全に読めていた。


 鈍い、こいつ自身が強大な闇の力を使いこなせていないな?

 気づいていないのか?


 ガンッ


 闇の王が軽く飛んで、柱の上に立った。


「接近戦は不利か。所詮、この肉体も人間、仕方ない」

 

 ― ダーク・ホール ―


 二つの大きな球体を手のひらに乗せていた。

 濃い闇が渦巻いている。


「なんだ!? あの魔力!!」

「ガジル!よそ見するなって」

 プレイヤーの声が響く。

 魔族はどこからともなく湧き出てきていた。


 倒しても倒しても、増えていってる?


「ハハハハ、遊ぶのはここまでだ。お前の魔力を削いで、我が力とする魔法だ。この力からは絶対に逃げられない」

「随分しゃべる奴だな」


「おい。そこのガキ」

 闇の王がエヴァンに声をかける。


「は?」

「いいのか? お前の王を助けるより、そっちで魔族と戦うことを選ぶのか?」

「ヴィルにそんなの効かないから」

 エヴァンがジャミラの攻撃を防ぎ、剣を突き刺して紫色の人型の魔族を戦闘不能にしていた。


「甘いなぁ。この魔力は、生ぬるい世界の魔族の王ごときが防げるはずがないのに」


 ドドドド ゴオォオオオ


 闇の王が黒い球体を広げていった。


 元の魔力は使えない。

 だが、俺にはテラから受けた忌々しい力がある。


 最初は愛する者に触れると・・・とか、制約があったようだけどな。


「ん?」

 闇の王が目を見開く。

 魔王のデスソードを消して、人差し指を動かした。


 ゴゴゴゴゴゴ・・・・


 両手がドラゴンに変化していった。


「ヴィル!! それは・・・」

「安心しろ。俺は正気だ」

「・・・でも・・・・・」

 エヴァンがジャミラの攻撃を防ぎながら、こちらを見る。

 思いっきり地面を蹴って、手を振り上げた。


 ジュウウアアアアアア


「!?」

 闇の王が抱えていた2つの球体を切り裂いた。

 煙のように消えていく。


「馬鹿な。フン、今のは少々ミスしたみたいだ。魔族の動きに気を取られてしまってな」

 闇の王が深く息を吐いて、球体を作り出そうとした瞬間。


「がっ」


 ドラゴン化した手で、闇の王の身体を捕らえる。

 持ち上げて太陽に晒した。

 腕は金属のように変化していて、熱さ、冷たさすら感じなくなっていた。


 テラから受けた呪い。

 この力は、完全に掌握していた。


「闇の王、今、そいつから!!」

「はい、ダメダメ。しつこいよ爺さん」

 エヴァンが爺さんの杖を片手でへし折った。

 練っていた魔力が飽和する。


「お前、どうしてわしを殺さない?」

「生け捕りが1体必要かな?って思ってさ。ちゃんと人間の言葉を話す奴じゃないと、色々と聞き取れないだろ?」

「!!」

「久々の拷問、楽しみだなぁ」

 エヴァンが意地悪く笑っていた。


「そこをどくのです!」

 

 ― 氷の斬撃 ―


 レナが剣を持ったままくるっと回る。

 刃のような氷の塊が降り注ぎ、こちらに群がろうとしていた魔族たちが倒れていった。


「っぐ」

 闇の王が力のない手で、腕を掴もうとする。

「っ・・・お前、どうしてこんな力を・・・解けないだと・・・?」

「こっちの世界でも色々あってな」


 ドンッ


「がはっ・・・・」

 近くの柱に押し付ける。


「お前、弱いな」

 闇の王から、黒い蛇のような魔力が流れていた。

 顔が青白く変色していく。

 

「・・・この力は、”オーバーザワールド”の魔力に近い・・・お前が持ってるはずがない。何らかの・・・発動条件が無ければ、バグとして・・・」

「知らねぇよ。そんなの」

 笑いが漏れた。


「”オーバーザワールド”と接続したからなんだ? この世界の魔族の王は俺一人で十分だと言っただろう?」

 プレイヤーたちがこちらを見ておびえている様子が伝わってきた。

 

「ぐ・・・・・」

「クククク、闇の王か、闇に王などいらないだろうが」

 楽しかった。


 久々に、生と死を楽しんでいた。

 闇の王からは少しの恐怖を感じた。

 人間の持つものと近い、敵わないと悟ったときの恐怖を・・・。 


 ドンッ


 もう一度、地面に叩きつけた。

 タイルが黒く染まっていき、亀裂が走っていった。


「全ての闇こそは、我が力・・・俺の力だ・・・」


 ― ソード・マ・・・―


 ガンッ


「!?」

 闇の王が巨大な剣を出すと同時に、ドラゴン化した手で剣をつまむ。


「これがお前の剣か。血の匂いはあまりしないな」

「図に乗るな・・・。たかだか、この体を捕らえたところで、力は・・・」


 ボウッ

 

 闇の王が剣に赤い炎をまとわせる。

 何も感じない。そよ風に触れるような感覚だった。


「・・・・お前・・・・・」 

「なんだ?このしょうもない魔力は」

 闇の王の剣は血の匂いもしない、空を斬ったような見かけだけのものだ。

 テラの力を介してみると、こいつの魔力は滑稽だった。


 人間の闇か。笑わせる。


 バキッ


 剣をへし折って、遠くへ投げた。


 ― コード・リターン ―


 闇の王が俺の手からするりと抜けた。


「ぐはっ・・・化け物が・・・」

 吐き捨てるように言って、首を抑えていた。


「闇の王、ご無事でしょうか!?」

「構うな」

 駆け寄ってこようとした魔族を制止していた。

 

「でも・・・闇の王・・・」

「プレイヤーなんていらなかったのです。ここはレナとエヴァンだけでよかったのですよ」

「ッ・・・・!?」

 レナが冷たい口調で言いながら、魔族を後ろから刺す。


 ドサッ


「まぁ、その通りだね」

 エヴァンが消えていく魔族を見下ろしながら言った。


「俺の力は無限だ。死んだ魔族も、また創り出せばいい」

 闇の王が空中から魔力を集めようとしていた。

 汚らわしい、力ばかりをかき集める。

 ”オーバーザワールド”を漂う闇を、力に変換していく。


「じゃあ、俺も無限だな」

 両手を元に戻して、魔王のデスソードをかざす。 


 エヴァンが少しほっとしたような表情をしていた。


「強がりを。頭まで悪くなったか?」

 闇の王は、俺もこいつと同じ魔力を持っていることに気づいていないようだな。

 魔力が無限というのは、俺も同じだった。

 

 今俺が使用している魔力は、テラの魔力。


 もう一つの魔力は・・・。


「準備はできたのか?」

「・・・これで勝った気になるなよ。本当の闇は・・・」



 サアアァァァァァア


 透き通るような風が、地面を撫でる。


「お兄ちゃん!!」

「・・・レ・・・ムリナ・・・?」

 レムリナ姫が崩れた瓦礫を上って現れる。

 戦場を漂う闇の魔力が、少し揺らいだのを感じた。

読んでくださりありがとうございます。いつも感謝感謝です。

久しぶりにヴィルが大暴れですね。敵のいない世界は、ヴィルにとって退屈でした。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。

次回は週末くらいにアップしたいなと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。

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