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65 Past(過去)①

アイリスは異世界のゲーム”オーバーザワールド”の闇の王を倒して、仮死状態になってしまった魔王ヴィルを復活させるため、勇者ゼロと行動を共にする。

時空の魔女ライネスにより、”オーバーザワールド”のイベントスキップが発生し、ゼロは未来のルートに飛ばされた。

未来のルートでは、ゼロは闇の力をコントロールするため、ゼロとメイリアはアポロン王国のブレイブアカデミアに入学することになった。


主要人物

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いで蘇った、堕天使アエルの魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

ユイナ・・・異世界から来たアバターで動く少女。

      女性の転移は不可能とされていたが、魔女になることで転移可能となった。使い魔は猫。

ミサリア・・・ゼロに降りかかる『ウルリア』の呪いを擬人化した存在と名乗る。

      未来において、死んだことになっている。


”オーバーザワールド”・・・異世界のVRゲーム。ゼロたちのいる世界と、接続が完了した。

「夜中に魔法防衛術の授業があるのか。呪いの類を弾くねぇ・・・」

 ゼロが部屋のベッドで寝ころんで、モニターで授業を眺めていた。


「部屋は快適、文句なしだ。しばらく野宿してたから、布団ってありがたいな」


 カタカタカタカタ


 魔法石を入れた瓶が窓のふちで揺れていた。

 ゼロが起き上がって、瓶を持つ。


「なんだよ? 不満か?」

 椅子に座って背もたれに寄りかかった。


「この魔法は、とあるゲームの世界では王が使う魔法らしい。魔法石は意志を持ち、様々な道具として主に仕えるっていう魔法だ。アバターに埋め込めば、人間として生活することも可能とのことだ」

 ゼロが魔法石に話しかける。


「俺は王じゃないから、別に仕えなくていいよ。アバターは、エリアスに頼むから安心しな。しばらくこうやって・・・」


 サアァァァァァ



『へぇ、面白い魔法使うじゃない』

「!?」

 時空の魔女ライネスが、暗闇の中から現れる。

 片方の青い瞳でゼロを見つめた。


「ライネス」

 ゼロが瓶を引き出しの中にしまう。


『手紙読んでくれた? 既読になってるのは確認したけど』

「勝手に人の部屋に入ってくるなんて悪趣味だな」


『でも、会いたかったでしょ?』

 ライネスが小さな砂時計を回す。


「その魔法、”オーバーザワールド”では見かけないね。そっか、君は色々違う勇者なんだもんね。ブレイブアカデミアにも入学できたみたいだし、順調にイベントこなしてるみたいだね」

 ライネスの声がクリアになった。

 窓際に寄りかかって、外を見つめる。


「ちなみに、この先も闇の王を倒すまでいくつかルート分岐が・・・」

「こっちも色々聞きたいことあるんだけど、何しに来たんだ? また、未来へスキップさせる気? それとも、今からルート変更可能とか?」


「ねぇ、この未来には、ミサリアって子いないんでしょ?」


「・・・・・・・」

「変な感じだよね。イベントスキップって、当の本人はスキップした部分が抜けてるから。プレイヤーが好まない気持ちもわかるよ」

 ライネスがふっと笑って窓に触れる。


「君の闇の力、呪いが無くなったのになぜか濃くなってるんでしょ? ちゃんと知りたいよね? 何が起こったのか」

「・・・あぁ」

 ゼロが低い声で頷く。


「そうだよね。ちょっと待ってて。『ウルズの塔』バラモスとの戦闘・・・っと」

 ライネスが砂時計を月の形の杖に変えた。


「ちなみに、ミサリアが生き残るルートってあったのか?」

「んー、ルート管理は時空の神カイロスの仕事だからわからないかな。私はただの魔女だよ」

「魔女・・・」


「そ、時空の魔女」



 ― XXXXXXXXXXX

    XXXXXXXXXXXXXXXX -


 ライネスが前髪で片目を隠したまま、少し揺れながら詠唱する。

 杖を降ろすと魔法陣が展開された。


 ゼロとライネスが光に包まれる。


 シュッ






「ここは・・・・・・・?」

 瞬きをすると、ごつごつした岩でできた塔の最上階にいた。

 黒い影から目だけ光っている武器を持った魔族が現れる。


 ― 烈火の聖 ― 


 ゴオォォォォォオオ


 アイリスが剣から聖なる炎を放つ。


 ザザー 


 黒い影の魔族たちが、うめき声をあげながら消えていく。

 ユイナがすかさず、弓矢を放ち、黒い影から出てくる魔族を打ち抜いた。


「ここはバラモスとの決戦の場所だよ。君がスキップしたルートのイベント」

「過去を見てるってことか。つか、アイリスとユイナしか戦闘していないじゃん。俺は?」

 ゼロが周囲を見ながら言う。


「君はそこだよ」

 ライネスが窓のほうを指さした。


 ゼロがアメジストの剣を構えて、天井の一点を見つめていた。


「何やってるんだ?」

「バラモスはあの黒点から現れるんだ。だから、ゼロは奴が出てくる一瞬を狙ってるって状態」

「なるほど」

 ゼロがふわっと飛んで、過去の自分に近づいていこうとする。


『待って、ゼロ』


「え?」

 振り返ると、ミサリアがすり抜けるようにしてゼロの傍に駆け寄っていった。


「言っておくけど、これは君が通った過去を見せてるだけだから。話しかけても、何も反応しないよ」

「わかってるって」

 ライネスが長い髪を触りながらゆらゆらと歩いていた。


 ゼロが過去の自分を見る。


『どうした? 呪いは戦闘には入らないんだろ?』

『そうよ。戦闘には入らないんだけど、やらなきゃいけないことがある』

『何するつもりか知らないけど、あまりうろうろするな。俺とアイリスとユイナがいればこの場は十分だ。ミサリアはリヴィアナたちと・・・』

『・・・・・・・』

 ミサリアが少し寂しそうにほほ笑む。


『・・・・?』

『・・・戦況見てればわかるでしょ? 待っても待っても、黒点からバラモスは現れない、黒い影の魔族は途切れず襲い掛かる。あの黒点は、何かを求めてるのよ』



 ゴオォォオオオオオオ


 アイリスが聖なる炎を放ち、次から次へと湧き出る魔族を切り裂いていく。


『どうして呪いがそんなことわかるんだよ。いいから、ここは危ないから離れててくれ』

『ゼロ、私のこと覚えてない? 思い出せない?』


『は?』


『昔も・・・・いえ、昔のことはもういいわ』

 ミサリアが黒い髪を後ろに流した。


『ゼロに初めて会って、アエルの姿と重なって・・・色々思い出したの。ううん、覚えていたんだけど黙ってた。ごめんね』

『何する気だ?』


『私がおとりになる。奴はこの世界の者の命が、自分の真下に来る瞬間を狙ってるのよ。贄が必要ってこと。だから、バラモスが現れたときは、確実に倒して。ちゃんとストーリーを進めて、ヴィルを救ってね』

『は? 待てって。意味がわからな・・・』


『ゼロの呪いは私が持っていくから』


 ― 魔女のウィッチソード ―


『!?』


 ドンッ


 追いかけようとするゼロの前に剣を突き刺した。

 剣がぐるぐる回転しながら、輝くシールドを展開する。


『さようなら』

『まさか・・・・ちょっ・・・』

 ミサリアが軽く地面を蹴って、黒点の真下に走っていく。


「ライネス! このルートは避けられないルートなのか?」

「私はわからないよ。さっきも言った通り、ルートを読めるわけじゃないんだから。カイロスなら知ってたかもしれないけどね」

 ライネスが杖を両手で持ったまま、ミサリアのほうを眺めていた。


 ― XXXXXX XXXXXXXXX ― 



 ミサリアが天秤を出して、軽く掲げる。

 

 カラン


 小さく、天秤が傾きかけたとき、雷鳴が轟いた。


 ドン ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


『!!』

 黒点が雷に変わり、真っすぐミサリアに命中した。

 一瞬で、その場に横たわる。


『ミサリア!!!』

「ミサリア!!」

 2人のゼロが同時に叫んだ。


『どうしたの!?』

 アイリスが剣で魔族を抑え込んだまま、ゼロのほうを見る。


 ガハハハハハハハ


『アイリス、魔族の出現が収まってきました。ここは私に任せて、ゼロのところに』

『うん』

 天井からバラモスが降りてくる。


 ダアァン


 風が巻き起こる。

 2メートル近くある人型で、大きな角を二本生やしていた。

 有り余る魔力で、地面に足をつけた瞬間、塔にひびが入っていた。


『ガハハハハハ、やっと出られたか。おかしな制約をつけやがって』

 両手の鋭い爪からは、血の匂いがする。


『バラモス・・・』

『よく、その娘は知っていたな。そうだ、俺は”オーバーザワールド”のゲーム上に存在しない上質な贄と引き換えに、姿が固まるようになっていた。プレイヤーはわからなかっただろうな。アホどもが、次から次へと『ロー』にやられて死んでいったよ。ハハハハハ』

 バラモスが灰色の皮膚を引っ張りながら言う。


 空気がピンと張りつめた。

 アイリスが剣を構えたまま睨みつける。


『『ロー』たち、もういいぞ。あとは、この俺バラモス様が直々に倒してやろう』

『あっ・・・・』

 ユイナが一歩下がる。


 『ロー』と呼ばれていた黒い影の魔族が引いていった。

 ユイナが汗をぬぐいながら、装備品を変更していく。



『サタニア?』 


 アイリスがミサリアのほうを見て呟いた。

 ミサリアは目を閉じたまま動かなかった。


『あ? なんだ? これ・・・』

 ゼロがミサリアに近づいて、座り込む。

 ミサリアの顔はサタニアの顔に変わっていた。


『呪いじゃなかったのか? 死なないんじゃなかったのか? お前は確か、七つの大罪にさらわれた魔女。どうして・・・』


「ライネス・・・どうゆうことだ?」

「それは自分のほうがわかってると思うよ」

「・・・・・」

 ゼロがふらっとしながら、こめかみを押さえる。



 ― 転生って知ってる? ベリアル ―


「っ・・・・声が・・・」

「今の君の脳内は、この時の君の脳内と同じようになってるはず」

 ライネスがゼロの頭にそっと触れる。


 ゼロがミサリアを抱きかかえながら呆然としていた。


「私は君らのこと、あまりよくわからない。でも、この場面だけは知っておくべきだって思ったから連れてきたんだ」

 ライネスが壊れた天秤を見つめながら話していた。

読んでくださりありがとうございます。

夏休み折り返しになってしまいました。しばらく休んでると自分が何の仕事してたのか忘れますよね。

★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

皆様も体調管理気をつけてくださいね。次回は来週アップします。

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