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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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52 Forever Lost(永遠に失われた)⑩

アイリスは”オーバーザワールド”の闇の王を倒して、仮死状態になってしまった魔王ヴィルを復活させるため、勇者ゼロと共に『ウルリア』へとたどり着く。


『ウルリア』の中心にあるエリアスのダンジョンの電脳空間には、『ウルリア』の子供たち135人の脳が保存されていた。

アイリスは電脳空間にいる子供たち135人を蘇らせるため、禁忌魔法を使ってアバターに脳を適合させてきたが、『ウルリア』の呪いを名乗るミサリアの一言で崩れていく。


子供たちはアバターで生きることより、死を選んでいた。


主要人物

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

ミサリア・・・ゼロに降りかかる『ウルリア』の呪いを擬人化した存在と名乗る。


ポロン・・・『終焉の塔』崩壊時の生き残りの少女。奇跡的に蘇った『ウルリア』の子供の一人

リョク・・・望月りくという転移してきたVtuberであり、『ウルリア』の天使だった。戦闘後に消滅。

イベリラ・・・終焉の魔女。生まれてすぐ亡くなったゼロを蘇らせるために、禁忌魔法を使い『ウルリア』の寿命を吸い取って魔力を蓄えていた。魔王ヴィルとの戦いで、消滅する。


”オーバーザワールド”・・・異世界の体感型ゲーム。魔王ヴィル、ゼロたちのいる世界と徐々に接続が完了しつつある。


『ウルリア』・・・海に沈んだリーム大陸にあった都市。寿命は短く、子供しかいなかった。リョクが天使だった頃の管轄だった都市でもある。『ウルリア』の子供たちとVtuberだけの世界を創ろうとしたが、魔王ヴィルとの戦闘に敗れて、沈む前に保管した子供たちの脳だけが残っていた。

「死にたくないやつは手を上げてくれ。そいつだけ、離れててもらう」

「ゼロ! 何するの!?」

「お前らの意志を知りたい。生きてる限り、ここから出られる可能性はある。俺が探す。約束する! それでもお前らは死にたいか?」

 ポロンの声を無視して、ゼロが子供たちに呼びかける。


「・・・・・・・・・」

 しんと静まり返っていた。


「・・・わかったよ」

「違う、違う、ゼロ、そんなはずはない!」

 ポロンが首を振って近くにいた少女の手を握る。


『ポロン・・・』

「ねぇ、サリナは違うよね? 魔法使えるって喜んでたじゃん。これからはずっと一緒だって話してくれて・・・」

『ごめんね。ポロン』

 サリナがポロンの額に、自分の額をくっつける。


 ジジジジ ジジジジ

 

「!?」

 ポロンの額にぴりっと電流が走る。

 サリナの右指は透けていた。


『私はもう駄目みたいだよ』

「そんな・・・そんなこと言わないで。信じて、このアバターはサリナだけのものだから。ちゃんと適合して、こうやって話もできてるし」


『へへへ、死ぬのは怖くないよ。ポロン、一人にしてごめんね。一緒にギルドを作って、冒険に出かける夢も、お祭りの屋台で美味しいものたくさん食べる夢も、叶えられなくてごめん』


「・・・・・・・」

『ポロンは私の分も生きて。リョク様が言ってたこと覚えてる?』

「生まれ変わりの話?」

『そう。大人になって、また会えたらいろんな話をしてね』

 サリナが力なく笑って、ポロンから離れる。


「いやだ、いやだよ。お願い、サリナ」

 ポロンが涙をこぼしながら首を振った。


「もう一度聞くが、生き残りたいやつはいないってことでいいな?」

『いいよ』

『こうやって少しずつ体が崩れていくほうが怖い』

『俺たち、どうなっちゃうんだろうって。体が分離し始めてる。脳までおかしくなったらって思うと、今すぐにでも殺してほしい』

 少年が自分の腕を見つめながら言う。


『本当は脳が保管されてるときもずっと怖かったんだ。リーム大陸が沈んだ時も・・・このまま消えちゃいたいって思ってた』

『私もだよ』

『拷問してきた人間たちも見てきたし、あんなふうに叫びながら死にたくなかったよね。太陽の光を浴びれなかったのは残念だけど。もう、楽になりたい』

 全員が何の抵抗もなく、死を受け入れていた。


「待って! お願い!」

 ポロンがゼロの前で両手を広げる。


「お願い・・・ゼロ、もう少し待って!! 話をさせて!」

「アイリス、ポロンを部屋に連れて行ってくれ」

「・・・・わかった」

 アイリスがポロンを連れて飛び上がる。


「止めて!! 私の大切な!! 大切な仲間なの! 私には、もうここにいるみんなしかいないの!」

『ごめんね。ポロン。ポロンが来るの待ってるから。転生するまで待ってるね』

 サリナが叫ぶように言う。


「・・・・・・・」

「離して! お願いだから・・・アイリスは方法があるって言ってたじゃない」

「もう、できない。あそこまで脳とアバターが分離してしまったら、元に戻らないの。人工知能を埋め込めばできないこともないけど、彼らの人格は失われてしまう」

「そんな・・・じゃあ、最期までみんなの傍にいさせて・・・」

 ポロンが何度も首を振っていた。


「駄目。邪魔になるから。ゼロの、ね」

「いや・・・こんなの・・・」

 アイリスが抵抗するポロンを押さえつけるようにして、部屋に向かって飛んでいく。



 カンッ


 ゼロがアメジストの剣を地面に突き刺した。 

 地面に聖なる魔力が流れる。


「痛みはない。すぐ楽になる。でも、魔法は・・・少しびっくりするかもしれないから、みんな目を閉じててくれ。なるべく早く終わらせるから」


『ありがとう。ゼロ様』


「・・・・・・・・」

 子供たちが目を閉じる様子をじっと見つめていた。


 すっと息を吸う。



 ― 祈りの業火 ―



 ゴオォォォオオオオオオオオ


 ガシャン しゅうぅぅぅぅ


『ありがとう。ゼロさ・・・』


 子供たちが一瞬で白い炎に包まれる。

 アバターも、ガラスの筒も、テーブルも寝床も、武器も、防具もすべて真っ白な炎が焼き尽くしていった。


 ミサリアがふわっと飛んで、ゼロの横に立つ。


「炎なのに吹雪みたいな魔法ね」

「・・・・・・・・」

「大丈夫。ちゃんと消えていってるわ」


「これで満足かよ・・・」

 ゼロが下を向いたまま、剣を握り締める。

 子供たちのほうを見ずに、手を震わせていた。


「どうしたの? そんな声を荒げるなんて。彼らの望みを叶えてあげただけでしょ?」

「俺は・・・こんなことをするために生まれてきたのか・・・?」


「ん?」


「生かして殺す・・・なんて、辛いに決まってるだろ」

「・・・ゼロにもそうゆう感情、あるのね」

 ミサリアが涼しげな顔で言う。


「呪いにはわからないだろうな。こいつらより、俺のほうが死ぬべきなのに、なんで俺が殺してるんだよ」

 ゼロが額に剣を押し当てて目を閉じていた。 

 ぐっと奥歯を嚙む。


「なんで俺が生きてるんだ・・・・。どの物語を見たって、勇者が子供を殺す世界なんてありえないだろ。こいつらは、俺さえいなければ、あの終焉の魔女さえいなければ、普通に大人になって、夢だって叶えられたかもしれないのに・・・クソが・・・・」


「安心して。誰も苦しんでない。雪が積もってるみたいだよ。ほら」

「・・・・・?」


「ゼロの言う通り、痛みはなかったみたいね。静かに消えていった」

 ゼロが顔を上げると、辺り一面真っ白になっていた。



 子供の声は無くなった。

 ガラスの筒が出す電子音も無くなった。

 ただ、真っ白な炎だけがうっすらと広がっている。


「綺麗な魔法ね・・・天使が使う魔法によく似てる。遠い昔で、忘れちゃったけど」

 ミサリアが目を細める。


「お前は呪いなんだろ? 俺を殺せないのか?」

「呪いは死よりも生きる残酷さを選ぶに決まってるでしょ」

「・・・だよな。言うと思ったよ」

 ゼロが片膝を立てて座り直す。

 マントを後ろにやった。


「でも、私がいるから貴方は呪いが体から切り離されてるのよ。もう少し感謝してもらってもいいと思うんだけど?」

「こんなことをさせておいて、どうやって感謝すればいいんだよ」

「ふふ・・・そうね。これから、私はゼロについていく。これは貴方の生と共にある契約だから、拒否できないわ」

 ミサリアが笑みを浮かべた。


「残念ね」

「本当にな」

 ゼロが長い息を吐いた。



「一人にさせてくれ」

「いいけど、呪いからは逃げられないからね。自害しようとすれば、その前に私が貴方の心臓を掴んで苦しめるから」

「性格悪いな」

 ゼロがアメジストの剣の魔力を、すっと変化させる。 



「わかってるよ。一人でこいつらを弔ってやりたいだけだ。といっても、弔い方なんてわからないから、他ゲームの情報を引用するしかないけどさ」


「ゲーム・・・・?」

 ミサリアが首をかしげる。


「俺はエリアスに色々情報入れられてるんだよ。その中に、天界へ死者を送り出す魔法がある。効き目はあるんだか知らないけどな」



 ― 天界への導き ―


 さああぁぁぁぁ


 アメジストの剣を小さく回して、たくさんの光の玉を出現させた。

 ふわふわとしながら、真っ白な炎の中に入っていく。


「送り火? っていうのか?」

「そんな毒々しい剣から、よく聖なる魔法なんて出せるのね」

 ミサリアが光の玉を一つ引き寄せて言う。


「その剣、”オーバーザワールド”の闇属性の剣でしょ? 流れる毒は調整しているのね。勇者は光属性の剣を持ったほうが闇に呑まれず馴染むのに、なんでそんな剣なんか・・・」

「美しい剣だろ?」

 ゼロが柄の部分に埋め込まれたアメジストを触りながら言う。


「何でも使いこなせるのが勇者だ。闇の剣であっても問題ない」

「あ、そ」

 ミサリアが興味なさそうに呟いて、離れていった。


 アメジストの剣をしまう。


「さてと・・・・・死んだら声はいつまで届くんだろうな」

 光の玉と真っ白な炎を見つめながら、歌を口ずさむ。

 一度も聞いたことはないが、自分の中にインプットされている、死者を送る歌を・・・。

読んでくださりありがとうございます。昨日七夕でしたね。

七夕にこの話を出したかったなーって思いながら1日過ぎてしまいました。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。

また是非遊びに来てくださいね。次回は今週中にアップします。

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