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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第一章

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19 情報のすり合わせ

 人間たちの死体は恐怖の表情のまま硬直していた。


「SS級だろうが、ギルドでもてはやされてようが関係ないな。最期を魔王の城で迎えられたことをありがたく思え」

 鞘に納められた剣が、転がっている。


 俺に会ってから一度も剣を抜くことができないとは。

 最後に魔法を解いた時、一振りくらいはしてくるのかと思ったが・・・。


 哀れだな。


 何か、魔族のものとして使える装備品はないか探していた。


 どれも部屋にあるようなものだ。

 賞金で遊んでいるからか、こんなものか。


「ププウル、すまないが、こいつらの装備品の中で役に立ちそうなものを取ってもらえるか?」

「かしこまりました。魔王ヴィル様」

「よっと、人間は体のほかに装備品が多すぎて。面倒ですね」

 ププとウルが5人の元へ寄ってくると、下位魔族に指示して死体を運ばせていた。




 ゆっくりと、魔王の椅子に腰を下ろす。

「さすがでございます。魔王ヴィル様、あのような美しい魔法を間近で見ることができて感動しました」

「魔王ヴィル様の魔法を直に見たのは初めてですが、大変うれしく思います」

 魔族たちから感嘆の声が上がっていた。

 カマエルとゴリアテの、張り詰めたような殺気が和らいでいく。


「私は許しません。あのような汚らわしい人間どもが、魔王ヴィル様の魔法によって死ぬなんて・・・・・。あ、死体なら八つ裂きにしてもいいわよね。今からでも・・・」

 サリーが尖った爪を舐めた。


「やめとけサリー。後始末が大変なんだ。掃除するほうの身にもなってみろ」

「フン、変態メガネには言われたくないわ」

「相変わらず品がない」

 カマエルがため息を付くと、サリーが睨みつけていた。


「こうやってこれからも、魔王城に近づこうとする者は後を絶たないだろうな」

 足を組んだ。


「でも、向こうから来るのは好都合だ。手間が省ける」

「あの魔導士、多額の懸賞金の話をしていましたね」

「あぁ、あいつらはあんなのでも、ギルドのSS級のパーティーだった。これから、どんどん出てくるだろう」

 魔族が持ってきた、つまみの菓子を食べながら言う。

 葉を揚げたものらしい。


「いっそのこと、こちらから仕掛けるというのはいかがでしょうか?」

 カマエルがメガネを上げて口角を上げる。


「私の力なら、ギルドの1つや2つ、殲滅できると思いますが」

「お前が強いのはわかってる。が、人間たちの動きを甘く見るのも危険だ」

 頬杖をつく。


「力では勝つだろうが、バフなどの戦略をかけられた場合は一気に逆転する可能性もある。人間は魔族より力が弱い分、戦略的に来るからな」

「・・・はい・・・・・・」

「それで・・・今まで魔族は・・・」

 ププがしゅんと尻尾を下げた。


「こっちの戦略は変わらない。一つ一つ人間に取られたダンジョンを奪い返し、魔族の領土を広げていく」

「かしこまりました」


「最近の様子だと、一つのダンジョンに多くの人間が襲撃するような形になっているようだ。見張りを強化するように」

「はい! 我々にお任せください」

 ププが明るい声で言う。


「さっきみたいに、俺が直接手を下すのもいい。余裕があったら俺を呼んでくれ」

 手には俺を散々馬鹿にした人間どもを殺した快感が残っていた。

 アリエル王国のギルドではないようだったけどな。


「そうでしたね。上位魔族で戦闘し、何かありましたらすぐにお知らせいたしますので、ご安心を」

「あぁ、頼む」

 カマエルが目を細くして微笑んでいた。


 今のギルドのクエストは、ただ魔族のダンジョンを攻略するというものではないらしい。

 俺のいたときとは、全然違う、クエスト内容になっているようだ。


 単独のパーティーでは、今の魔族に敵わないことがわかったのだろう。

 理解と伝達が早いことが、人間の面倒な部分だ。



「魔王城の敷地に入ったものは俺が手を下すか。向こうも俺目当てだろうからな」

「承知しました。敷地内も常に確認するようにします」

「心強いよ」

 人間のいたところを見つめる。


「私は冷静に対処できますので・・・・ただ、他の、特にゴリアテやサリーたちは制御するのが難しいでしょうね。さっきみたいな態度を取られたら、すぐに殺してしまう」

 カマエルが冷たい視線を横に送る。


「俺だって我慢できるからな」

「私だってそれくらいできるわよ。失礼なこと言わないで」

「お前はさっき、魔王ヴィル様の前に手を出そうとしていたじゃないか」

「あんただって・・・」

 

 ガーガー言い合っていた。

 ププウルがため息をついている。


 魔族は強いし忠誠心はあるが、確かに衝動的に殺しそうだな。

 今のように、情報を引き出して殺す・・・というのは、難しそうだ。 



「あの・・・魔王ヴィル様・・・・」

 くるんとした角の生えたジャヒーが近づいてくる。


 魔力は少し弱かったが、ようやく歩けるようになったか。

 胸の谷間に付いた傷が生々しいが・・・。


「ジャヒー、大分回復したな」

「はい、この度はあのような醜態を見せてしまい、恥ずかしく思います」

 少し怯えながら近づいてきた。


「言っただろう? お前はあの環境の中、よくやったよ。引き続き南西のダンジョンの見回りを頼む」

「あ・・・ありがとうございます!」


「ちょっとジャヒー、勘違いしないでね。魔王ヴィル様はみんなに優しいんだから」

 サリーがヒールをカツカツさせながら近づいていった。


「あら? サリー、どうしたの? 随分見ない間に太ったようだけど、食べすぎじゃないの? おばさんになると代謝が悪くなるって言うじゃない?」

「おばさん?」

 ジャヒーが意地悪く笑っていた。


「誰がおばさんよ。ぶりっ子が」

「それだけ悪態をつけるってことはだいぶ良くなったってことだな。ジャヒー」

「えぇ、あと一日で全快するわ」

「ほぉ・・・そりゃよかった」

 ジャヒーが上位魔族の列に並ぶと、ゴリアテが軽く笑っていた。


「魔王ヴィル様、ダンジョン奪還のほうの進捗はいかがでしょうか?」

「あぁ、アイリスに任せてこちらに来た」


「え!?」

 魔族がどよめいた。


「アイリス・・・て、あの人間の女か?」

「人間? 魔王ヴィル様、そ、そんな人間に任せるなんて・・・」

 ジャヒーが悔しそうに俯いていた。


「・・・・安心しろ、アイリスは俺の奴隷だ」

 足を組んで、魔族を見下ろす。


「さ・・・左様でございますか・・・」

「あいつはなぜかダンジョンの精霊に好かれるんだ。今、2つのクエストを攻略し、魔族のダンジョンとなった。残り3つのダンジョンのクエストを攻略中だ」


 サリーが目を瞑っていた。

「・・・私が行けたら、私のほうがお役に立てるのに」

「サリーはダンジョンを守るほうに専念にしてもらいたい。今、魔族のダンジョンのどこに危険があるかわからないからな」

「はい・・・魔王ヴィル様」

 サリーがぱっと表情を明るくした。 


「5つのダンジョンが魔族のものとなったら、また魔族を配備してくれ」

「かしこまりました。でも、あの小娘なんかに、クエストの攻略などできるのでしょうか?」

「さぁな、行ってみないとわからないが、2つ攻略したことだけは確かだ」

 窓の外を見つめる。


 アイリスは何者なんだろうな。

 なぜ、簡単に異世界クエストを・・・。


「俺は部屋に戻るよ。何かあったら呼んでくれ」

「かしこまりました」

 席を立って階段を下りる。ジャヒーがすっと近づいてきた。


「どうした?」

「これ、よろしければ・・・リルの木の実です。ダンジョンの魔族からの差し入れで・・・お口に合えばとのことです」

「ありがとう。もらっておくよ」

 親指くらいの木の実の瓶だった。


「し、失礼します」

 慌てて下がっていった。

 ギルドでは空腹を押さえる木の実として重宝されていたな。



 廊下に出ると、ジャヒーとサリーの言い争う声と、カマエルの叱るような声が聞こえてきた。

 他の魔族たちの笑い声が聞こえる。


 一晩寝てから、アイリスのいるダンジョンへ向かうか。

 寝不足のまま行ってしまえば、また、最下層で眠りについてしまうからな。


 厄介ごと抱えていなければいいが・・・。

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