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202 記憶と作戦

 パンッ


 ユイナの矢は、まっすぐ雲の中に消えていった。

 メタルドラゴンが上を向いた瞬間、まばゆい閃光が走る。


「確認してきます」

 ユイナが地上へまっすぐ降りていく。

 剣を振って後に続いた。


「想像通りの反応で安心しました」

 メタルドラゴンの様子を見つめながら指を動かした。


「今のはなんだ? メタルドラゴンの動きが止まったが・・・」

「目くらましです。やっぱり効きますね。弱点も、ゲームでやったメタルドラゴンと同じものです。いけそうです」

 指を細かく動かして、何かを確認しながら言う。


「あぁ・・でも、やっぱり、この夜明けの弓矢は攻撃力はないようです。ステータスは私が大剣を持ったときよりはるかに低いです。私のアバターの適正なのか・・・メタルドラゴンは心臓が弱いのですが、私の力じゃ貫けません・・・ヴィル様・・・」

「俺に任せろ。奴の心臓は一度貫いている」


「わかりました。では、私は奴の動きを止めることに集中します」

「あぁ、頼んだ」

 雪を蹴って、マントを後ろにやる。



「ヴィル、ユイナ、危ないのです!!!」

 レナが大声で叫んだ。


「・・・・!?」


 ドッドッドッドドドッドドドドッドドド


 別のメタルドラゴンが走ってきて、大きく尻尾を振りかぶる。

 早い。すぐに鱗が迫ってきていた。


「あっ・・・・」

 ユイナを引っ張って、飛び上がる。

 雪を巻き上げて、ドラゴンの視界を遮った。


「2人とも、だ・・・大丈夫ですか?」

 レナが近づいてくる。


「問題ない・・・が、危なかったな。奴の攻撃は当たればただでは済まない」

「はい・・・レナ様、ありがとうございます。油断してました」

「ほかにもメタルドラゴンがいるなんて」


「2体か・・・あの夜明けの弓矢に集まってきたのか?」

「たぶん、そうだと思います。多用はできませんね。この地には、ほかにもメタルドラゴンがいるのかもしれませんから・・・・」

 ユイナが矢の先を確認しながら言う。


「その弓矢は、どれくらい、あのドラゴンたちを止められるんだ?」

「動きを完全停止させられて、30秒です。ただ、確率的には50パーセント、50パーセントの確率で失敗します。さっきのような閃光を放つ弓を射る場合は、ダウンタイムが必要で、1分間休まなきゃいけません」


「連続して打つことはできないってことか」

「はい。申し訳ないのですが・・・。モニターに表示されている説明にはそう書いてあります。私も使った感じ、この情報は合ってると思いますし、ゲームでやったときもそうでした」

 ユイナが空中を見ながら話していた。



 グラァァァアアアアアアアア

 ガァアアアアアアアアア



 メタルドラゴンが呼応するように鳴いていた。

 殺気に満ちている。


「早めに蹴りをつけたほうがよさそうだな。どこにこいつらの仲間がいるのかもわからん」

「そうですね」

「レナも戦いたいのです!!」

 レナがふわっと飛んで近づいてくる。


「戦わせてください」

「お前はダメだ。ここで待ってろ。ユイナ、近づくぞ」

「はいっ」

「あっ・・・・」


 レナを置いて、ユイナとメタルドラゴンの近くに降りていく。

 魔王のデスソードを持ち直した。


「的中率を上げるため、メガネ型のスコープを装着します。これで的中率が70パーセントになりました。あとは運なのですが」

 ぱっと、装備品が切り替わる。


「あぁ、俺が2体の心臓目掛けて走る。その間に、さっきの弓を討ってくれ」

「はい。でも・・・あの、も・・・私がもし失敗したら・・・?」

「お前に心配される必要はない。俺は魔王だ」

 剣の刃先の闇の魔力を強めていく。


 ザザザッ


「行くぞ」

「はい」

 スピードを上げて、きょろきょろするメタルドラゴンに接近していく。

 後ろからユイナが弓を放つ音がした。


 グアッ


 メタルドラゴンが矢に反応する。


 ダアン ダアン ダアン ダアン ダアン

 ザザザザザザザザザーッ


「・・・・・・・・・」

 2体の動きが止まらない。失敗したのか?

 反対側にいたメタルドラゴンが鋭い爪で引っ搔いてきた。


 ガン ガン ダン ドドドッドド


 避けながら、滑りそうになる。雪はやはり邪魔だな。


 ― 黒龍炎ブレス― 


 闇の炎を吐く。

 周辺の雪が解けて、ドラゴンの尻尾に当たって消えていった。


 ユイナは1分間待たなければ次の魔法は打てない。

 見上げると、ユイナがおどおどしていた。


「ヴィル様、すみません!!!!」

「いい、気にするな」


 グアアアアアアア


 メタルドラゴンが石化するブレスを吐いた。

 雪の下にあった小さな草が石になっていく。マントを翻して、避けていく。


「どうしよう・・・効かないなんて・・・どうして?」

「ユイナ、慌てず次に備えろ!」

「はい! すみません」

 メタルドラゴンは図体が大きいわりに、動きが早い。


 ザッザッザッザッ ドドドッドドドドッドドッド


 次々に攻撃を繰り出してくる。

 いったん飛ぶべきか? いや、地面にいたほうが時間が短縮できる。

 このまま2体の攻撃をかわしながら、次の機会を狙ったほうが効率的だ。


 一瞬の隙が命取りになるが、1分くらい問題ない。


「!!」


 後ろから迫りくる尻尾に、剣を突き立てた。 


 バヂンッ


 弾かれて、体勢を直す。

 前のメタルドラゴンよりも硬い鱗だ。

 おそらく、この世界にあるものの、何よりも硬い。まともに当たれば、俺でもただでは済まないだろう。 


「ヴィル様! 準備ができました!」

「わかった」

 ユイナが3発目の弓を討った。剣を構えて、体勢を低くする。


 グルルルルルルル


 1体のメタルドラゴンが空を仰いだ。


 ダッダッダッダダダダダダダダダダ


「!?」

 メタルドラゴンが走りながら爪で引っ掻いてくる。

 動きが止まらない。


 こいつら、どうゆうことだ? 

 ユイナの弓を無効化してるのか? 


 ザッ


 仕方ない。いったん、作戦を立て直すか。

 地面を蹴って、ユイナのいるほうへ向かう。


 メタルドラゴンが翼を広げようとしていた。こいつらに、空を飛ばれると面倒だな。


 刃先を地上に向ける。


 ― 地の反逆者レヴェナント― 


 ドッドッドッドッド


 雪解けの土から5体の土人形を出現させる。

 まぁ、シズほどうまくは出せないけどな。


 グアッ?


 剣を回して、適当に動かした。ギルドの人間と同じくらいの強さだ。

 脆いが、あれに気を取られている間は、こちらに攻撃を仕掛けてこないだろう。


「ヴィル様、すみません。今調べていたのですが、スコープ装着した想定的中率が40パーセントに下がってしまって・・・」

「あいつらが、1回目の攻撃で順応したんだろう」


「はい・・・甘かったです。メタルドラゴンは記憶力が高いことを忘れていました。攻撃は何発も打てますが、1回打つごとに確率が下がっていってしまうかもしれません」

 ユイナが空中を見つめて、確認していた。


「今・・・・どうにか夜明けの弓矢を変形させられないか調べているのですが・・・今の装備品じゃ足りないみたいです・・・役に立てなくてすみません」


「ユイナ」

「メタルドラゴンはゲームでは何度も倒してきたのに。何か・・・私が見過ごしてる弱点があったのかもしれません・・・確か私が倒したときは目くらましして、他のメンバーが魔法で強化してる間に・・・」

 口に手を当てて、ぶつぶつ話していた。


 俺がユイナの装備品を錬金するという手もあるが、あの人形を一度止めなければいけない。

 今、メタルドラゴンの興味は5体の人形に向いているが、止まれば空中戦になるだろう。


 何か策を練り直すしかないな。



「ヴィル、レナが氷魔法でユイナの弓矢をコーティングするのはどうですか?」

 レナが氷のブリーズソードを握りしめながら近づいてくる。


「ん?」

「閃光を放つまで、レナの氷魔法で光魔法を隠すのです。きっと、あいつらは気づかないはずです」

「それはいいかもしれません! おそらくメタルドラゴンは弓矢が放たれた瞬間の魔力に反応していますから・・・」


「できるのか?」

「はい。氷の魔力を纏わせるのは基礎魔法なので簡単です。溶かすタイミングも任せてください。レナは確実に見極めます」

 言いながら、魔力を高める。

 レナは戦いのコツを掴んできているようにも見えた。


 エヴァンの言う通り、戦闘の記憶が抜けているだけなのかもな。


「了解。次の攻撃で決着をつける。準備してくれ」

「わかりました」

 レナが白銀の髪をふわっとさせて、頷いていた。

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