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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第三章

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201 メタルドラゴン

「レナ、ほら、北の果てが近いぞ」

「まだ眠いのです・・・・もう少し飛んでていいのです」

「ったく。そう言うなら自分で飛べよ」

「こっちのほうが楽なのです」

 レナを引きずりながら、飛んでいた。

 ユイナがクスクス笑っている。


 なんで俺がこんなことを・・・。


「ほら、この森の先がエルフ族の村のあった場所だろ? 懐かしくないのか?」

「嘘ですよ。だって、まだ温かいです。北の果てはこんなに温かく・・・」

 レナが目をこすって顔を上げた。


「あれ・・・・? こんなことって、どうして・・・?」

「吹雪いてないな。もう、北の果てのエルフ族の村は近いはずなのに、今までずっと雪が降っている場所はなかった。うっすら積もってるけどな」

 方位磁石を確認する。方角はこっちで間違っていない。

 レナの表情がみるみる青くなっていった。


「そんな・・・・」


「雪が急に止むことってあるのでしょうか?」

「それは、レナが暮らしていたときもありましたけど、ここまで広範囲で雪が止むのは見たことありません。レナもたぶん・・・初めて見ます」

 足元に広がる森も地面も真っ白だったが、雪は降っていなかった。

 積雪量も、前来たときより少なくなっている。


「エルフ族の村が無くなったことと何か関係があるのか?」

「・・・・わかりません。でも、ここは確かにエルフ族の村の方向です。あの森は、よくみんなで遊びに出ていた場所なのです」

 レナが真剣な表情で遠くを見つめていた。


「以前よりずっと温かいですね。雲は分厚いのに、どうしてなのでしょう・・・」

「ヴィル、『時の祠』に行く前に、エルフ族の村があった場所に行ってもいいですか? なんか、変な感じがするのです」


「あぁ、どちらにしろ満月まで待たなきゃいけない。あと、数日はあるはずだから、休める場所があれば休もうと思っていたところだ」

「・・・・・・ありがとうございます・・・」

 レナが銀色の髪をなびかせて、すっと前を飛んでいった。


 ドドドッド


「ん?」


 ドドドドドドドーン ザザザザザー


「きゃ!?」

 何か崩れるような音がした。

 雪が舞い上がって、視界が白くなる。  


「な、なんでしょう? 今の音?」

「速度を緩めろ。音はエルフ族の村のほうからだった」


「・・・・・・・・」

「わかりました」

 ユイナが星空の髪飾りを外す。

 速度強化の付与効果が解けて、飛行速度がゆっくりになっていった。


「レナ様、これ、ありがとうございます」

「あ、はい・・・これは・・・」


「さっきの音はきっと、さっきのは雪解けの雪崩ですよ」

 ユイナが目を細めて遠くを見つめた。

 レナが不安そうに、星空の髪飾りを受け取って、握りしめていた。


 自然に雪崩が起こったのか? 

 ダンジョンの精霊セツの影響か?異世界住人が来たからか?


 いや、あの音は違う。

 何かの手が加わった、岩の崩れるような音だった。


「何か・・・変です・・・・」

 レナが重々しく呟く。


「急ごう」

 周囲に注意を払いながら、エルフ族の村のあったほうへ向かった。



「!!!」

 ビリっとした力を感じる。


「魔王ヴィル様、どうしたのですか?」

「下がってろ」


 ― 魔王のデスソード― 


 剣を出して、目を凝らす。

 ユイナとレナが前に出ようとした瞬間、地響きが起こった。


 グァァァァァアアアアアア


 耳を突くほどの咆哮だ。

 地上から飛んできた岩を、剣で切る。


「ドラゴン!?」

 ユイナが指を動かして、空中を見つめる。


「ヴィル? どうゆうことですか?」

「あれは、魔族のドラゴンじゃない・・・・異世界のドラゴンだ」

「え」

 見覚えがあった。

 マーリンたちのいたダンジョンで見たドラゴンだ。


「あ! モニターに情報が表示されました。どうして・・・今まで表示されたことなかったのに」

「なんて書いてあるんだ?」

「メタルドラゴンって・・・」

「そうか。やっぱり、ヤツか」

 雪が履けて、ドラゴンの尻尾が見えた。


 俺とアイリスで倒した鉄の鱗を持つドラゴン・・・。

 どうして奴がここに?


 グルルルル


 気配を察したのか、重たい足で雪を踏みつけながら、周囲を気にしている。

 でかいな。しかも、本当にこの1体だけなのか?


 確かにこいつは力があるが、電気が走るような感覚はおそらくこいつだけではない。


 ― 氷のブリーズソード― 


「レナ! お前じゃ太刀打ちできない! 状況を見極めろ」

「っ・・・許せないのです。ここは、ここだけは!!!」


 レナが浅く息を吐いて、エルフ族の村のほうへ突っ込んでいった。


 世話が焼ける奴だ。

 だから、俺一人でいいって言ったのに。


「ここはエルフ族の村です! 勝手な侵入はダメです」

 雪の上に立って、剣を構えた。

 メタルドラゴンの赤い目がレナをとらえる。


 ザザザザザーッ


「はっ・・・・」

 レナを抱えてドラゴンの息を避けた。

 図体が大きい分、煙が広がるのが早かった。


 マントで煙を避けながら上昇する。


「勝手な行動をするな! お前は弱いんだから。エヴァンにも言われただろ?」

「で・・・でも、あんな奴がエルフ族の地に」

「・・・ったく、ここでレナが死んだらどうするんだよ・・・」

 あのドラゴンはかなり手ごわい。


 俺もあのときアイリスがいなければ、どうなっていたのかわからない。

 『時の祠』はドラゴンの縄張りに入っているのだろう。

 近づいた瞬間、周辺に数体のドラゴンの気配を感じた。


 厄介だな。

 ドラゴンの死角を探って、『時の祠』まで行くタイミングを見計らうしかなさそうだ。


「ユイナ、離れててくれ。あれは・・・・」

「石化させるブレスですね」

 ユイナが空中を見てから、先に言った。驚いて、ユイナの指を見る。


「書いてあるのか?」

「いえ、モニターにはメタルドラゴンとだけ。攻撃力、防御力の欄は空欄になってます。技名も書いてありません」


「じゃあ、どうしてわかるのですか?」

「あれは、異世界にあるゲームのドラゴンなんです。私もプレイしたことがあるので知っています。かなり昔の作品で、クリアしたのは幼い頃ですが」

 メタルドラゴンは、巻き上がった雪で俺たちを見失ったのかきょろきょろしていた。


「そういや、リュウジもメタルドラゴンについて知っていたな」

「リュウジ・・・ですか」

 メタルドラゴンがここにいるということは、リュウジもどこかにいるのだろうか。


 ユイナが手早く装備品を変えていく。


「ゲームの記憶が確かなら、メタルドラゴンはかなり強いのですが、目は退化していて光に弱いんです。武器を夜明けの弓矢に変更。光属性を付与します。石化を防御する装備品は無いので、ブレス攻撃からはうまく逃げるしかありません」

「そ、そうなのか」

「身のこなしを最大限に上げられる、疾風の手袋を装備します」

 白い手袋をはめて、夜明けの弓矢を持っていた。

 いつもの自信のない雰囲気はない。


 ユイナの目はしっかりと敵を見つめていた。

 異世界のゲームで、体験したことあるからなのだろうか。


「すみません、ヴィル様」

「なんだ?」


「以前、ヴィル様がメタルドラゴンに会ったとき、確かにリュウジもいたんですよね?」

 呼吸を整えながら聞いてくる。


「あぁ・・・さっきも話した通りだ。異世界から、こっちに姿を映していると言っていた。お前とは違い、アバターで転移してきたわけではないらしい」

「リュウジって?」

「ユイナの知人らしいな」

「へぇ、本当にただの知人ですか?」

「・・・レナ、よくこんな状況で、そこを突っ込めるな」


「じょ、冗談ですよ」

 レナが咳払いをして、氷のブリーズソードを持ち直す。


「ユイナの知り合いであっても、レナの大切な故郷を奪うのは許せないのです」

「わかってます。私も同じ思いです。ちゃんと、リュウジと話さなきゃ」

 ユイナが小さく呟いて、メタルドラゴンめがけて弓を引いていた。


「ここは私に任せてください!」 


 パァンッ


 ユイナの放った矢が弧を描く。

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