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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第二章

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188 願い②

「ん・・・・?」

 ポケットに魔力を感じて、オブシディアンを取り出した。


「あ、エヴァン様も着いたみたいですね」

「そうだな。思ったより早いな。あと3日はかかりそうだと思っていたが」

「ふふ、レナ様頑張ったのですね」

 石が海のように青く光っていた。


「次光るときは、ダンジョンの精霊に会ったときだな」

「はい」

 マントを後ろにやって、オブシディアンをポケットに仕舞った。


 開かずの扉を通ると、ダンジョンの仕掛けはほとんど無くなっていった。

 最下層に近づくにつれて、ダンジョン自体が明るくなり、狭かった道も広くなっていった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 水の音が聞こえる。

「っと、行き止まりだな」

 急に道が途切れて、崖になっていた。

 覗き込むと、川が勢いよく流れているのが見える。


「本当です。どうして急に道が?」

「んー、引き返すか。どこかで隠し扉みたいなものがあるのを見逃したかもしれないな」

「待ってください」

 引き返そうとすると、ユイナが服の裾を掴んできた。


「ヴィル様、反対側の壁に小さな穴が見えます」

 ユイナがメガネをくいっと動かして、前に出る。


「ほら、あそこです」

 指さす方向にじっと目を凝らすと、凹んだ箇所が見えた。


「多分、あの先に続きの道があると思うんです」

「そうか? ただの窪みにしか見えないが」

「こうゆう突然途切れた道には、続きがあるんです。ロールプレイングゲームの定番です」

 自信ありげに言う。


「・・・・・・・・」

 また、意味の分からん言葉が出てきたが・・・まぁ、ユイナの言うことを信じるか。

 仕掛けの多いこのダンジョンの、正解を導き出してるのはユイナだからな。


「えっと、こうゆうときは、地面とか壁に渡る方法を示す文字があるはずなのですが」

 ユイナがその場にしゃがみ込んで、砂を払っていた。


「あっ」

「面倒だ。飛べばいい話だ」

 ユイナを抱えて飛び上がる。

 砂が落ちると、空中に細い橋が架かった。


「!?」


「・・・あ、やっぱり道が、そのまま歩いてみると橋が架かるようにできていたんですね」

「なるほどな。見えない道か。まぁ、いい」

 真っすぐ凹んだ壁のほうへ向かった。

 ユイナの言う通り、近づいてみると窪みに見えた場所は丸い穴のようになっていて、先には道が続いていた。


 サクッ


 地面に降りる。さっきよりも足元が柔らかくなっている気がした。

 岩場だったが、草原を歩いているような感覚だ。


「よくやったな。お前のゲームの知識は大したもんだ」

「役に立てて、よかったです。プレイしているときは、こうゆう知識を使う日が来るなんて思っていませんでしたが」

「かなり助かったよ」

 ユイナがほっと胸を撫でおろしていた。


「・・・でも、裏を返せば、異世界住人はほとんど同じような知識を持っている可能性があるということです・・・」

「あぁ、そうだな」

 ギルドの連中どころか魔族でさえ、こんなにスムーズにダンジョンの仕掛けを解くことはできないだろう。

 願いを叶える四元素のダンジョンが、人間がたどり着くことの難しい果ての地にあることが幸いだな。




 ズズズズズズズ


 はっとする。

 ダンジョンの精霊の魔力を強く感じた。


「ヴィル様?」

「・・・この先に、ダンジョンの精霊が居る・・・」

「え・・・・・」

 ユイナを後ろにやって、ゆっくりと最下層の部屋に近づいていった。


 突然、強い風が吹き込む。



『ほぉ、もうこの場所に来るとはな。お前らが、最速だ。もう少し時間がかかると思ったんじゃがな』


 広々とした薄い緑色に光る部屋があった。

 4本の柱の真ん中の岩に、杖を持った老人が座っている。

 周囲には色とりどりのガラスの置物が輝いていた。


「綺麗・・・・」

 ユイナがメガネを外して、ガラスを見つめていた。


『ここへは、北の果てのダンジョンの精霊から道を聞いたようじゃな。キサラギとも面識があると聞く』

「あぁ、お前がダンジョンの精霊か?」


『そうだ。わしが東の果てのダンジョンの精霊、名前は・・・そうじゃな。「日出る場所」からヒイとでも名乗ろうか。わしらは四元素のダンジョンの精霊でいいんだが、お前らは名前を気にするからな』

 ヒイがすっと立ち上がって近づいてくる。


『お前は、魔王か?』

「そうだ」

『その者はなんだ? 人間とは違うな』

 ユイナが少し戸惑いながら、前に出る。ヒイが興味深そうにユイナを見つめていた。


「私は異世界から来ました」

『異世界?』

「はい。こちらの世界とは別の・・・」

 ヒイが眉をぴくっとさせた。 



 グンッ


 突然、杖を回してユイナに襲い掛かってきた。

「きゃっ・・・・」


 ガンッ


 魔王のデスソードで杖を止める。

 風のような動きだった。杖の先はいつの間にか、鋭利な刃物になっていた。


「何のつもりだ?」

『魔王が手出しをするか?』

「こいつは、魔族にとって重要な情報源だからな」

『ほぉ・・・』


「そ、装備品を盾に変えます。防御力を最大まで強化、ほ、他のステータスは落として・・・シールドバリアを1度発動させるアクセサリーを・・・」

 ユイナが指を動かして、短剣を盾に持ち替えていた。


『・・・それが異世界の力か』

 ユイナの動き一つ一つを舐めるように見ていた。


「なぜ急に、ユイナを狙った?」

『見てみたかったのだよ。異世界から来た者の実力を』

 魔王のデスソードに力を入れると、ヒイが杖を回して下がった。


「知ってるのか?」

『もちろんじゃ。異世界から人間どもが来ていることは、眠っていたセツ以外の四元素のダンジョンの精霊ならよく知っておる。皆、ある男の願いを叶えたのだからな』

「テラか」

『そんなところじゃ』


「!」

 テラは4つのダンジョンを回って、願いを叶えたのか。

 でも、誰が異世界の者であるテラを導いた?


 何かが引っかかる。


『今のは、お遊びじゃよ』

「え・・・・」

 ユイナが手を止めた。


「違う、ユイナを殺そうとしていただろう?」

『ふぉっふぉっふぉ、魔王の目は誤魔化せんか』


「・・・・・・・・」

『殺そうとした。殺されなくてよかったのぉ。一瞬、いけると思ったんだが、わしも衰えたか』

「ダンジョンの精霊で攻撃的な者はいなかったが?」

『精霊、それぞれじゃよ。今まで、お前は相当運がよかったのだろうな』

 あごひげを触りながら笑っていた。 


『それにしても、その得体のしれない能力は何なんだ? 一瞬でステータスを変更できる。ダンジョンの精霊がそのような願いを叶えてはいないだろう。体はあるのに、命が無いような、でも、死んで無いし・・・不思議な感覚じゃ』

 眉間にしわを寄せてユイナを見る。


「この体はアバターで、仮の肉体なので」

『ん・・・仮の肉体・・・面白い例えをするな』

「いえ、例えでは・・・」


「そんなことどうでもいい。異世界とこちらの世界を結んだダンジョンの精霊は、お前じゃないのか?」

 魔王のデスソードを降ろす。


『違うな。わしは、アリエル王国の人間たちを消した、ダンジョンの精霊じゃ』

「消した・・・って・・・」

『言葉通りじゃよ』

 ヒイがにやりとしながら、祭壇のほうへ歩いていく。


『ある男がこのダンジョンに来てな、最初は異世界とこちらの世界を結んでほしいと頼んできたんだ。四元素のダンジョンの精霊にも得意不得意がある。わしは、切るのは得意だが、結ぶのは苦手じゃ』

「・・・・・・・・・」

 3択で外したな。


 サタニアのところか、エヴァンのところか・・・。


「異世界住人を転移させたのはどのダンジョンの精霊だ?」

『北の果てのダンジョンの精霊、セツだって教えなかったのだろう? まぁ、残り2つの内どちらかじゃな。魔王直々に来るということは、一刻も早く異世界転移を止めたいのか』

「あぁ」

『まぁ、わしらは中立。来た者の願いを叶えられるのなら、叶えなければならない。そうゆう役割の精霊だからな』

 岩に座って、杖を付いた。


「け・・・消してほしいって。そんな願いを叶えるなんて」

 ユイナが震える声で言う。


『ん? 異世界の人間であるお前がそんなこと言うのか?』

「っ・・・・」

『お前はあの男の願いのおかげでここにいるのではないのか?』

「私はっ・・・」


「こいつは他の異世界住人とは違う」


『・・・・・・』

「・・・・・・」

 ユイナとヒイの間に入る。


『ふぉっふぉっふぉ、魔族の王が人間を庇うとは。わしがここでじっとしている間に、世の中も随分変わったのぉ。わしには、そいつが他の異世界住人と何が違うのか、さっぱりわからんがね』

 ヒイが目をしばしばさせながら、笑っていた。

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