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「あ・・・悪魔!?」
「そう、一応、私も仕事しなきゃ。ミハイル王国で契約した勇者は君で間違いないね」
「っ・・・・」
一人の青年の額に、汗がにじむ。
「見つかってよかった」
悪魔の少女が黒い剣を持って、崖のある場所で、青年を追い詰めていた。
ミハイル王国で勇者となり、海を渡って魔族を倒し、力の無い小さな村を救って名を挙げていた。
「名前はワルド。ラグナロクに備えて、星々を降ろす力と加護を与えられていた。次の啓示まで、ミハイル王国にいる契約だったけど、どうゆうこと?」
青年が凛とした目つきで剣を構える。
「俺は困っている者を助けるために勇者になったつもりだ。ミハイル王国でくすぶっているわけにはいかない。いつか仲間を集めて、魔王を倒し、世界が魔族に怯えなくてもいい世界を・・・」
「人間は、よく契約を勘違いする」
悪魔の少女が剣を浮かせた。
手のひらに本を出して、ページをめくっていく。
「魔王討伐の依頼なんて契約にない。ましてや、村の者を助けることも」
「え? だって月の女神は・・・」
「村の者を助けたってことは、魔族を殺したってことでしょ? 月の女神の加護を使って、多くの魔族を殺して回っていた。さぞかし、気分が良かったんでしょう。力なき村の英雄になることは・・・」
「あ・・・悪魔のお前にはわからない」
「ふうん」
悪魔の少女がつらつらと浮き出てくる文字を読んでいた。
「ほら、見て」
悪魔の少女が更地になった、ミハイル王国に目を向ける。
雨が上がり、虹がかかっていた。
「この国は新しい勇者が必要とされてる。君は必要なくなったよ」
「・・・・そうか」
悪魔の少女が口に指を当てて、意地の悪いことを考えていた。
「もしかしたら、勇者がいなかったから、滅んだのかも」
「・・・・・・嘘を言うなよ。やったのは、魔王だろ? 俺じゃ最初からどうすることもできなかった。戦闘は見てたよ。あんなの敵わない」
「ふふ、そうだったね。だから、ここで隠れてたんだもんね」
「何もかもお見通しか・・・」
ワルドが諦めたように剣を下げた。
ワルドは加護がなければ普通の人間だ。
ただ、プライドが許さなくて英雄でありたかっただけだった。
「勇者はよかったな。こんなところで、死にたくなかったんだ。できればもっと、人を救いたかった」
「さようなら。弱き勇者、ワルド」
「・・・・・」
ワルドが言葉を発する前に、悪魔がワルドの心臓を一突きする。
ドサッ
草原の上に一人の青年の遺体が転がった。
少女がピンクの髪を後ろにやる。
「これは、契約とは関係ない。異世界のあらゆる情報から、私が導き出した持論だけど・・・・」
剣と本を消した。
「自国の苦しみを見捨てた時点で、君に勇者を名乗る資格はなかったよ」
黒い翼が空高く舞っていた。




