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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第二章

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144 目的とは・・・

「様子はどうだ?」

「はい。まだダンジョン攻略しようとする異世界住人は現れません。ただ・・・・」


 カマエルがメガネを上げた。

 魔王の間に集まった魔族たちが顔を合わせる。


「・・・ププウルの話では急速に力をつけているとのこと。私の管轄でも、力の弱い魔族の住む祠などは、警戒を強めています」

「私も遭遇しましたが、今までの人間とは違う・・・なんというか、ステータスが高いとかではないのですが、戦いにくいような、すぐに逃げられてしまいましたし」

 シエルが口に手を当てる。


「奴らは何か奇妙な魔法などを使ってこなかったか?」

「魔法は弱いのですが、見たことがないものでした。なんだか、奇妙なことだらけです・・・」

「そうです。なぜか、武器が変わったり、魔力が変化したり、力が強いわけじゃないのに、異世界住人は得体が知れません」

 ププウルが主張してきた。


「こんなの初めてだわ。私が負けるとは思えないけど」

「私もです。絶対に負けない自信はあるのですが」

 サリーとジャヒーが弱気になっているのがわかった。


 ダンジョンから戻ってきて1か月。


 目立った変化は無いが、異質なものに対する上位魔族の不安が募っていた。 

 エヴァンの読みだと、もうすぐ魔族に何らかの攻撃を仕掛けてくるとのことだ。


 アリエル王国に偵察も出したが、有力な情報は少なかった。

 城下町に人が入るようになったのは聞いているが、異世界住人がどれくらいいて、どれほどの戦力を持つのかは把握していない。

 十戒軍らしき者たちがサポートに回り、巧妙に隠していた。


 椅子に座り直して、水に口をつける。


「異世界住人には上位魔族が恐れるほどの力はないわ」

 サタニアが一歩前に出る。


「所詮、異世界の人間よ。びくびくしてると相手の思うつぼじゃない」

「サタニア様・・・・」


「貴方たちは誇り高き魔族なんでしょ? 今まで、人間たちから魔族を守ってきたのよ。自信持ちなさい。たかが、こっちの世界に来て数か月の奴らなんだから」

「・・・・・・・」

 サタニアが強い口調で言うと、魔族たちの空気が変わった。


「それでも弱音を吐く魔族がいたら、私が鍛え直してあげる。私は異世界住人なんて恐れないから」

 サタニアが腕を組んで息をついた。


「サタニアの言う通りだ。異世界住人を必要以上に恐れるな。何が来ようと、魔族が強いことには変わりないんだからな」


「魔王ヴィル様・・・」

「も、申し訳ありません。深い歴史の持つ魔族であるにも関わらず、こんな小さなことに動揺してしまい」

 カマエルがメガネを触りながら、頭を下げる。


「つい、弱気に・・・」

「私も・・・すみません」

「上位魔族として、自分が恥ずかしいです」

「異世界から来た人間どもの好きにはさせません。ダンジョンは魔族のものとなったのですから、守り通します」


 上位魔族が口々にすると、集まった魔族全体の士気が高まっていった。

 上位魔族の不安は、魔族全体の不安につながる。


 まぁ、異世界住人の能力は俺も把握しているわけではない。

 こいつらが、恐れるのはもっともだけどな。





「なんとしてでも、異世界住人を止めなきゃ」

 部屋に戻るなり、サタニアが強い口調で言う。


「あの場を収めるとはな。なかなかだな、サタニアも」

「私は自分の信念に従ったまでよ。がたがた文句を言う魔族は、本当にあの場で斬り殺すつもりだったんだから」

「頼もしいよ」


 紫色の髪を流して、本棚の前に立つ。


「異世界がどんなふうになっているか知らないけど、アバターでこっちの世界に転移してくるなんてムシがいい話よ。そんな遊び感覚で来られるなんて冗談じゃない」

 上位魔族の前では余裕ぶっていたが、異世界住人の転移計画を一番恐れているのはサタニアのようだな。


 日々、焦りが伝わってきた。


「向こうの世界は混沌としてるんだろ? 病か何かか?」

「近いものはあるかもね」


「病というのは辛いものなのか?」

「そりゃ・・・って、ヴィルは病気になったことないの?」

「無いな」

 ソファーに座る。


「病気の者の傍にいたことはあるから、苦しいことは見ているよ」


 シュゥゥゥゥ



「きゃっ」

 サタニアがびくっとして後ろに隠れる。


「アエル・・・」

「ご無沙汰しております。やはり魔王城はいいですね、いい場所ですね。落ち着きます」

「勝手に落ち着くなって」


 堕天使アエルが急に現れた。

 黒い翼を広げて、ぱっと消す。


「出たわね。変態堕天使!」

「変態だなんて失礼な。私なりの愛を伝えてきているつもりですけどね」

 アエルがサタニアの髪の匂いを嗅ぐ。


「や、止めて! ぞわぞわする」

「つれないですね。せっかく久しぶりに来たというのに」

 サタニアが怒るほど、アエルは楽しそうにしていた。


「つい、先日もいただろうが・・・・」

「そうでした? 私、時間が得意じゃないんですよね。それはそうと、異世界住人の転移計画が着々と進んでいましてね。まぁ、馴染めなくて戻っていく人間もいますが、大体のメンバーが定着してきましたよ」


「戻る?」


「えぇ、彼らは異世界にも肉体があるのですから、戻ろうと思えば自由に戻れるわけです。本当、厄介な奴らですよね」

 アエルが黒い羽根を見つめながら言う。


「私がうっかり落としてしまったこの羽根も、異世界住人の魔道具になってしまいました。一瞬でアリエル王国に戻れる優れもののようで」

「それ、本当に迷惑なんだけど」

「うっかりで、落としちゃうんですよね。生え変わりの時期が近付いておりました」


「・・・・・・」

 バサバサと黒い羽根が落ちていた。

 サタニアが険しい顔をする。


「アリエル王国にいたくないからって、どうして毎回魔王城に来るんだよ」

「今回はミハイル王国の堕天使ミイルが連日愚痴って来るので、逃げてきたんですよ。こっちだって忙しいのに」


「魔王城を逃げ場として使うなって」

「まぁまぁ、異世界住人の情報も欲しいでしょう? あ、ここにあるリンゴ、いただきますね」

 リンゴをぼりぼりかじる。


 アエルはすっかり魔王城をうろうろするようになってしまった。


 他の魔族からは見えないようになっているらしいが。

 サタニアは気が抜けないと常にびくびくしていた。


「え? 今、ミハイル王国・・・・って言った?」

「はい。ミイルは・・・まぁ、だいぶ昔に堕天していましてね。それにしても、不気味な王国ですよね。あ、サタニアはどう思います? あの国、随分サタニアに好意的だったようですけど」

「し、知らないわ。あんな国」

 ツンとしてそっぽ向いた。


「まだ、あそこに十戒軍はいるのか?」


「ちらほら、残党がいます。まぁ、あの国はいいように利用されただけですね、異世界住人も入れてないようですし。それよりも、ヴィル・・・」

 アエルがぐぐっとこちらを覗き込んできた。


「そういえば、ヴィルはどんな願いを叶えたくて、ダンジョンを探しているのですか?」

「?」


 どんな・・・・?


「ヴィルは手を戻したいのよ・・・愛する人に触れられない呪いをかけられたから」

「本当ですか? ヴィル」


「そうだな・・・」

「・・・・・・」

 右手を見つめる。


 願いを叶えるダンジョンの精霊に会って、自分にかかった呪いを解いてもらうつもりだった。

 この1か月間、異世界住人の動向を確認しつつ、おもむろに未知のダンジョンを探していた。


 でも・・・。


「今、その呪いを上手く利用しようと考えてませんでした?」


「!!」


「そうなの? ヴィル?」

「・・・あぁ・・・アエルには嘘をつけないようだな」

 アエルの言う通りだ。


 アイリスへの感情が、ほんの少し薄れてきている。

 思いも言葉も仕草も、霞んできているのがわかった。


 なぜ、あんなに執着していたのかわからないほどだ。


 最愛の者に触れるとはなんだ?


 じゃあ、俺は何の目的を持つ魔王なのだろう。

 憎んできた人間は消え失せた。ダンジョンは手に入った。


 何が俺を生かしている? 

 魔族を守るため・・・なのか?


「愛は形がないから、少しの衝撃で薄らいでしまうんですよ。ヴィルにかかった呪いはそれを早める」

「ヴィル・・・?」

「私はその忌まわしい呪いを取ってもらうことをお勧めしますけどね。あの魔女が創った究極の呪いですから」

 サタニアが首を傾げた。


「誰の呪いだろうが・・・・関係ない。魔族の敵として現れる、異世界住人をつぶしていくまでだ。願いを叶えるダンジョンは渡さない」


「それは良かった。このまま、異世界住人と仲良くしだしたらどうしようと思っていましたから」

「ありえないな」

 

 サタニアが俺の背中から顔を出して、アエルのほうを見る。

「ねぇ、用件は終わったの?」

「えーっと、あ、忘れてました。重要なことを伝えにきたんですよ」

「重要?」

 アエルがエメラルドのような瞳でこちらを見る。


「勇者オーディンが、アリエル王国に戻ってきました」

「!?」


 心臓がドクンと鳴った。


「あいつ・・・生きてたのか?」

「はい、詳細は知りませんが、アリエル王国の住人を消したときに、どこかのダンジョンにいたらしいですね。どこか、までは知りませんが」

「へぇ・・・・」

 口に手を当てた。


「テラも予想外だったみたいですけど。面白いことになりましたよ。異世界住人に伝説の英雄として伝えてきた人間が現れてしまったのですから」


 ボッ


 アエルがリンゴの芯を燃やす。

 小さく煙が上がった。 


「サタニアはオーディンの名前を知ってるか?」

「もちろんよ、姿は見たことないけど、誰もが知る勇者だもの。アエル、オーディンはダンジョンの攻略に来ないの? いくつものダンジョンの攻略経験があるんでしょ?」


「今は指導者に回ってるんですよ。異世界住人に、こちらの世界のことを叩きこむつもりですね。見ていて退屈しません」

 アエルが思い出し笑いをしていた。


「どうゆう風の吹き回しでしょうね。面白いことになってきました」


「指導って、オーディン自ら?」

「えぇ。異世界住人、あぁ、アース族から新しい勇者を作るつもりなのでしょうか。できるかはわかりませんけどね。勇者は人が選ぶものじゃありませんから」

「え・・・・・・」

 サタニアが目を丸くしてこちらを見る。


「だって・・・」

「確かに、面白い話だな」

 アエルにつられて笑みが漏れた。


 奴が生きていたとはな。


 一度は殺したが・・・。


「貴方ならそう言ってくれると思っていましたよ。勇者の息子、魔王ヴィル」

 あいつが裏に回っていたか。

 異世界住人はますます、この世界に順応していくだろう。

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