ダーズ荒野撤退戦
ジンは何とか敵に悟られないようにさりげなく撤退戦を始めてもうすでに数十分、規模は六十人程度で中隊規模まで膨れ上がっていた。
(全く、いくらなんでも指揮系統がおざなりすぎるぞ!)
ジンは心の中で悪態を突く。
「隊長!敵の攻勢がさっきより強え!」
ダリルが必死に叫ぶ。
いつのまにか隊長呼びだなとジンは心の片隅で思ったが、状況はそれどころではなかった。
「もう感づかれたか」
ジンは苦虫を噛み潰したような顔で呟くとダリルに声を飛ばす。
「ダリル!おまえから見て本陣と俺らとの距離はどのくらいある!」
「わからねー!砂煙で見通しが悪すぎる!」
「もう一度肩を借りてもいいか?!」
「構わねーが、弓に気をつけろ!さっきからちらほら飛んできやがる!」
「わかってるすまん!」
そう言ってジンはまたダリルの肩まで素早く飛び乗り右翼本陣の位置を確認する。
「くそ」
そう言ってすぐに降りて線戦に復帰するジンにダリルが問いかける。
「どうだった!」
「だめだ、もう本陣が全く見えない!完全に孤立した!」
ジンの発言に皆が絶望感で支配される。
「トール!」
急にジンに呼ばれたトールはびっくりして返事をする。
「はい!」
「何かいい案はあるか!」
ジンの質問にトールは思考を回す。
「ただの延命措置になるだけだろうけどダーズ荒野を挟む森林に逃げ込めば今よりはマシな状況にはなるかもしれない」
「俺も同じ意見だ、ダイナ、ガオン!少し時間を作れ!」
そう言うと、ジンはこれまで開戦してしてから刀をしまうことなく握っていたが刀をしまうとダリルの肩にまたしても乗る。
「聞けお前ら!我々は完全に本陣から孤立した!これより我々はダーズ荒野の左右にある森林に撤退する!隊列は俺を先頭に薄い扇形だ!面ではなく点で敵兵を突破する!それと今まで通り途中にいる部隊はできるだけ拾っていく!いいか!」
ジンは手振りを使って説明すると筋肉ダルマ達も理解したのか返事をする。
「「「おお!」」」
事ここに置いてもはやジンの実力を疑う者はおらず皆がジンに従う意思を示した。
それだけの武をジンは示したのだ。
「トールお前は少し後方に下がって指揮を簡単な指示を任す!ダリル引き継ぎ孤立部隊があったら俺に報告だ!ダイン、ガダン、ミシェル背中は任す」
そう言うとジンはダリルの肩から飛び降り刀を抜く。
「いいか!お前らに求めるのは戦果じゃねー!生き残れ!進めええええええ!」
「「「おお!」」」
ここに決死の撤退戦が始まる。




