前夜
フォルム侯爵家を後にしたジンはその夜、家族で食卓を囲んでいた。
「とうとう、明日ね」
沈んだように言うルイにジゲンは優しい笑みを浮かべる。
「心配することはない、必ず帰ってくる」
「あなたのことは心配していないわ」
バッサリと切られてガクッと肩を落とすジゲン。
「ジンちゃん?今からでも遅くはないわ。やっぱり戦争なんていかなくていいのよ?」
「母上にそう言われると決心が鈍りそうになります」
ジンは思ったことをそのまま伝えるがその後にですがと続ける。
「それでも俺はいこうと思います。戦い方をいくら知っていようが覚悟なき者にその力を正しく振るうことはできないと師匠は言いました。自分の覚悟というものをしっかりと見つめてきます」
たしかにジンの言っていることはルイにもわかる。
覚悟を持たないものが力を手に入れたとしても正しく使うことができない頭ではわかっているがどうしてもジンが戦場に行くことへの拒否反応が出てしまう。
それもまた、親として普通の感情である。
ジンはまだ齢にして十三歳だ。覚悟がどうこう言う年齢ではないのだ。
「でも!」
それでも尚食い下がろうとするルイをオウカが止める。
「お母様、兄様は大丈夫です」
「オウカちゃん」
ジンはオウカの援護射撃を受けて驚いていた。
最初この話をした時にはオウカもルイと揃って反対していたからだ。
「兄様は頑固ですからね、行くと言えば行くのでしょう。でもきっと帰ってきます。私の兄様に不可能はないのですから」
重すぎる信頼に苦笑いが出てしまうジンだがその信頼を裏切ることはできないとまた新たに誓う。
それでも納得がいっていなさそうなルイにジンは席を立って近づく。
「母上、大丈夫です。何の心配も入りません。俺だって無駄に何年も修行していたわけではないのですから」
そうジンがルイの肩に手を置いて言うとルイが心配そうにその手に自分の手を重ねるのだった。
ジンが夕食を終えて自室に戻るとすぐに部屋のドアがノックされる。
ジンがドアを開けるとオウカとリュウキが立っていた。
「二人ともどうした?」
ジンがそう尋ねても黙ったままの二人にジンがクスッと笑う。
「なんだ、にいちゃんとこに遊びにきたのか?」
ジンがそう言うと二人は顔を見合わせて頷いた。
それからジンは二人を部屋に通すと二人が寝付くまで談笑を交わした。




