出撃前日
ジンは出撃の前日にリナリーの元に訪ねていた。
「明日、テイランに出撃します」
ジンはリナリーに会って早々にそう告げる。
「そう、ですか」
リナリーは少し戸惑いながらそう言うとお互いに沈黙する。
ジンがこの空気をどうにかしようと戯けるように言う。
「心配しなくても大丈夫ですよ」
微笑んで言うジンにリナリーは目に涙を溜めてジンを見つめる。
「わかりました。帰りをお待ちしております」
リナリーはそう言うと、だけどと言葉をつなげる。
「帰ってきたら、どこかへ連れて行ってください。ジン様とまだデートもしていません。どうか約束してください」
そう言ってリナリーは自分の髪を結っている青色のリボンをスルリと外すとジンの手を取って手首に巻きつける。
「約束の証です。どうか私の分身だと思ってお側に置いてください」
ジンは自分の手を包むリナリーの手を取って跪く。
「必ず、守りましょう」
そう言ってリナリーの手の甲にキスを落とすのだった。
リナリーとの話が終わり続いてジンはキリルと応接間で対面していた。
「どうやら君は飛んだ馬鹿者のようだ」
キリルに会って早々挨拶もそこそこにそう言われたジンは固まってしまう。
「たしかに私は君に少しばかり厳しい条件を出しただろう、しかしその条件を君は焦ってこの若さで戦争に出ると言う」
キリルはそこで一回話を切り紅茶を飲む。
「うちの娘を悲しませる可能性を君は辞さないと言う、これは大馬鹿者と言って差し支えないのではないか?」
そう言われたジンは背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。
だが、それでも曲げられない部分を持っているジンは意を決して口を開く。
「私は元々この戦争に出るつもりでした」
「ふむ、例えそうだとしてもそれはリナリーと婚約する前の話であると思うが違うかい?」
「その通りです」
「ならやはり君は大馬鹿者ではないか?」
「たしかに、絶対に帰ってくるとは言い切れないでしょう戦争では何があるかなどわかりませんから」
ジンがそう言うとキリルは話の続きを静かに待つ。
「ですが、私はここに誓います。必ず帰ってくると」
「ほう、その根拠は?」
そう言う話れてジンは自分の手首を見る、そこには先程リナリーが巻いた青色のリボンが巻かれていた。
「私は守りたい者を守れるようになりたいのです、そしてそれはこの戦乱においては武力がなければと思います」
「そんなことはなかろう、外交や話し合いなどでも守りたいものは守れる」
「たしかにそうでしょう、ですがそれはもっと世界が平和だったらの話です。この戦乱は血を流しすぎました。話で解決できる段階はとうに過ぎ去ったと私は思います」
ジンはそう言うとクスッと笑うとキリルの目を見る。
「いえ、違いますね。憧れたんです」
「憧れた?」
聞き返すキリルにジンは健やかに笑って言う。
「はい、偉大な父の背中に自分たちを刀一本で守ると言った父に私はただただ憧れたんです」
キリルはそう言うジンに真剣な目を向ける。
「私は必ず帰ってきます、先程お嬢様ともそう約束致しました。どうか信じてください」
数秒見つめ合う二人。
キリルはため息をついてジンに言う。
「帰ってこなかったら承知しないぞ?未来の息子候補君」
そう言われたジンは年相応の笑みで、はいと元気に答えた。




