小隊メンバー
次の日ジンは上からの通達で小隊規模の訓練が言い渡されていた。
青龍騎士団訓練場である城南のだだっ広い広場に第二十小隊全部隊が各々訓練に励んでいた。
ジン達十七小隊も例外ではなくその場に集まっていた。
「さて、ここまできたはいいが何をするか」
ジンは自分を置き去りにして前までやっていたであろう訓練をせっせと準備する小隊メンバーを視界の端に入れて考えていた。
(ひとまずは郷に入れば郷に従えだ)
そう思い十七小隊がどう言った訓練をするのか眺めていると一対一の模擬戦を始めた。
他の小隊は各々で訓練を行っていて中には小隊規模の隊列や兵法の座学と言ったことまで様々だった。
(なるほど、つまるところ小隊長次第ってことか)
他の小隊を見て思ったジンはそれならと思い模擬戦をしておる小隊メンバーに近づく。
「さて諸君、君たちは模擬戦をしているがどうだろう?俺も入れてはくれないか?」
ジンがそう言うとダリルが模擬戦の手を止めて面倒臭そうにジンを見る。
「小隊長殿、あなたは見るからに戦闘向きではないでしょう?」
「なぜかな?ダリル?」
ジンは初めて言われた内容に本当に意味がわからずそう返す。
「なぜ?そんなのは年齢を考えて言ってください。どこの誰のコネを使ったかは分かりませんが、あなたは見るからに12、3歳だ」
「いかにも、俺は13歳ではあるがそれと先程の話はどう関係してくるんだ?」
「何を言ってるんですか!13歳の子供が剣など持てるわけないでしょう!子供の遊びではないんです!大人しくしてください!」
ダリルの剣幕にジンは一歩引いてしまう。
今思うとたしかに13歳のコネ入隊少年が剣など持てるわけもないのかと妙に納得してしまったジンは顎のあたりを掻きながら曖昧に笑う。
(むむ、これは絶対模擬戦なんてしてもらえない雰囲気だ)
他のメンバーを見ても何を言ってるんだと言った顔でこちらを見るメンバーにジンは昨日のことをまた後悔する。
気を取り直してダリルにもう一つ質問をするジン。
「えーっと、それじゃあ君達は実践経験はあるのかい?」
「いえ、まだ戦闘、戦争等の実施はありません」
そう言うダリルにジンは少し驚く。
青龍騎士団はその性質上よく山賊討伐などで多く実践経験を積める、ジゲンが前に実践経験なら青龍騎士団に勝てる騎士団はいないと豪語していたくらいには実践が豊富と言うことだ。
「なるほど、青龍騎士団は実戦に富んでいると言う話を聞いたんだが?」
「たしかにそうですが、我々も二ヶ月前に入団したばかりですので」
ジンはそうなのかと思った頭で考える。
(ロイの話じゃすぐにでも青龍には出撃が下る、多分いくら実戦に富んでいるとはいえ戦争だ、山賊討伐なんかとは比べ物にならないもんだよな)
ジンも実践経験においては人のことが言えないためどうしようかと思うが多分このまま彼らを戦場に出したら守りきれないだろうと考えて、ガクゼンの修行と言葉を思い出す。
「いいかガキ、戦場じゃ死人よりも怪我人を出した方がいい、そっちの方が敵にダメージを入れられるからな、だがわしらの刀は一瞬一殺だ、特に考える必要はねえ」
「わかった!」
「そんで、裏を返せば味方に大量の怪我人が出た時は厄介だ、見捨てろとは言わんが選択できる覚悟はしておけ」
「......わかった」
「そんでだ、こと戦争においては一番大事なことは何かわかるか?」
「......強さ?」
「体力だ。と言うことでこれから半年てめーは走ってるだけだ、肺を作り替える」
「半年!?」
「なんだ、不満か?」
ガクゼンの目力にジンは思い切り首を振る。
懐かしむように修行の序盤を思い出したジン、もう話は終わったと思い振り返ろうとするダリルをジンが止める。
「ダリル、いやみんな、小隊長命令だ、走るぞ」
それからと言うもの、第十七小隊の訓練はもっぱら持久走になった。
「ふざけんな!」
ガシャん!と大きな音にびっくりしてダイナが振り返るとダリルが甲冑の頭を放り投げていた。
ここは第十七小隊の倉庫兼、装備保管所だった。
「そうカッカすんなダリル、仕方がないだろう」
ダリルを落ち着けようとダイナが嗜める。
「けどよ!あの小隊長殿が来てから俺らずっと走ってばっかじゃねえか!」
「まぁそうだけど」
「俺らが他からなんて呼ばれてっか知ってるかよ?コネ隊長のお守りだとよ!ふざけやがって」
「たしかにこれだけ走ってばかりでは訓練になりませんね」
ダリルの意見に同意するトール。
「くっそ!ここにはそういうのはねーと思っていたのによお!」
どうしても憤りが抑えられないダリルは手荒に甲冑を脱いでいく。
「たしかにな。やっぱり中隊長殿に抗議するか?」
「無駄だよ、もう一回してるじゃない。あんな門前払い、私たちは生贄に選ばれたのよ」
暗い顔で言うミシェル。
「くっそ!いつまで続くんだよ」
「どうせそのうち飽きてやめるさ、どこぞの商人の息子とかだろう」
「あいつがきて一週間ずっと走り詰めだ。くっそ!早く辞めちまえばいいんだ」
「そう感情的のなるとボロが出るぞ。相手はコネ入隊だ。後で何されるかわからん。無難にやり過ごそう」
ダイナの言葉に概ね皆同意して倉庫を出る。
小隊の執務室に行くと一番奥の机でジンが何やら資料に目を通していた。
どうせ中身なんぞわかるわけもないとみんなが思ったが特に触れることなく各々の席に着く。
しばらくしてジンが「あ!」と何か思い出したかのように声を上げるそれに今度はなんだと思いながら仕方なくダイナが聞く。
「どうかしました?小隊長殿」
「ああ、すまんすまん。みんなに言い忘れてたよ。一週間後出撃だ」
「「「「「......は?」」」」」
小隊勢員の声が重なる。
「ちょ、ちょっと待ってください!出撃ってどこに?」
「うん、どうやら帝国さんがテイランに侵攻してきたらしくてね、その援軍さ」
「帝国?テイラン?」
「ん?何かわからない点でもあるのかな?」
「い、いえ、では我々は一週間後にこの小隊で戦争に行くと言うことでしょうか?」
「うん、そうなるね。ちょっと中隊長、大隊規模の訓練は要領を得なかったけど、まぁなんとかなるでしょ」
そう言うジンにダリルも含む小隊メンバーはあと一週間の命かもしれないと心の底で自分の運命を呪うのであった。




