コネ
先程、大隊長補佐に返事をしていた青年から挨拶は始まった。
「私はハルム中隊、第四小隊を任されることになりました、デールズです!若輩ではありますが王立学園を20番目の成績で卒業しています!実地的経験は皆さんに劣りますが、これから色々吸収して行けたらと思います!よろしくお願いします!」
なんともお手本のような挨拶ではないかとジンが感嘆していると聞いていた兵士達もそう思ったのだろう、少なくない拍手がデールズに送られる。
任されたと言うことは小隊長と言うわけだだがそれも納得できる実績をデールズは示していた。
(平民出身で王立学園で20位ってのはすごいんだろうな)
王立学園はジンも三年後に入学するが貴族でないものが入学するには中々の成績を収めなければまず入学すらできない。しかも卒業していて上から20番目ともなれば平民としては上出来すぎる部類だろう。
それは話を聞いていた兵士達が物語っていた。
デールズの挨拶が終わり次へ次へと挨拶が流れていくがデールズ以上の拍手はそれ以降起こらなかった。
そしてとうとうジンの番が回ってくる。
「えー、ゲリーラ中隊、十七小隊を任されました。ジンです。よろしく」
ジンは短く言って下がると全体的に困惑した空気は流れる。
「それだけか?」
新兵挨拶が始まって初めてセシルが口を開く。
それに続いてヒソヒソと大隊で少し騒がしくなる。
「はい、自分の挨拶は以上です」
ジンはセシルに問われてそう返す。
「なぁ!君!」
セシルと見つめ合うジンの間に入る者がいた。デールズである。
「君、その態度はどうかと思うよ?その歳で騎士団に入るからにはもう少し何かないのかい?」
「......では、僭越ながら、自分は特に実績等ございませんが、コネを利用して小隊長に相成りました!皆様を失望させぬよう精進していきたいです」
ジンは今回の入隊をジン個人として入れるようジゲンに頼んでいた。
そのため今ジンが言ったことは嘘は言っていないのである。
実績など特になく、ジゲンと言うコネを使い小隊長待遇での入隊したからである。
するとまたしても、ヒソヒソと大隊がざわめく。
「なんだって!?君はそんな堂々とコネで入ったと言うのかい?」
「ああ、そうだけど」
あまりの驚きぶりにジンは少したじろぐとデールズは「はぁ」と大きなため息を吐く。
「恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい?」
ジンはデールズの言葉にオウム返しで聞き返す。
「だってそうだろう?君はコネで小隊長に任されたと言った、つまり君はコネがなければここにいないと言うことだ。それを堂々と言うなんて恥ずかしくないのかい?」
「たしかに自分はコネでここに入ったがそれは年齢によるものだ」
「では君は年齢さえ適正ならこの騎士団にコネなしでは入れると?」
デールズの言葉は正当性がある。
ここまでハッキリとコネで入ったと言う少年に隊全体でも疑念があった。
しかもその少年はコネは年齢のために使ったと言う。それを、はいそうですかと聞き入れるほどその少年に信用などあるわけもなかった。
「まぁ、入れるだろうな」
ジンはここまで嘘を言っていない、ジゲンに騎士とはなんたるかを学べと色々言われて入ったが結局のところリナリーとの件があるためどのみちジゲンのコネを利用して入っていただろうし、年齢が適正であったなら学園を卒業しているだろうし選択がどうであれ入れるは入れるのだ。
青龍騎士団とはいくら民衆に人気があるからといっても騎士団の中では最近できたばかりなので人員は年中募集中だし、平民の卒業生はここに入る以外はない。
つまり青龍騎士団とはめちゃくちゃ広き門なのである。
「なら君には腕があると?」
「自負はある」
ジンはハッキリと短く答える。
ジンには師との修行が生半可なものであったなどとはカケラも思わない。だから自分はあの地獄を生き抜いたと言う自負がある。
そこには絶対の自信があった。
「それにそもそも自分が小隊長になるのにコネを利用したと言ったが同じ新兵であるあなたにどうこう言われる筋合いもない」
ジンはそう言い切るともう話すことはないと一歩下がる。
デールズも「君の小隊のことが可哀想だよ」といって一歩下がりこの件は終わった。
皆がデールズが正論を言ってジンがそれを逃げたと言う解釈でこの件は終了した。
だが、セシルだけが面白そうに眺めていた。




