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オウカの想い

 部屋に入ってまずジンがしたのは、オウカを抱きしめることだった。


「あわわわわ」


 ジンの行動に大混乱のオウカは何が何だかわからずに目を回した。


「オウカ」


「は、はい!」


 ジンに耳元で囁かれたオウカは茹で蛸のように真っ赤になっていたが、抱きしめているジンには全くわからなかった。


「オウカ、俺は家族としてお前が大切だしこれから先何があっても守りたいって思ってる」


 ジンのその言葉にオウカは頭が冷静になるのを感じる。


「だから嫌ってほしくない」


 ジンは嫌われることに慣れていると思っていた、だからいつか家族に失望されようとも家族を守ることができればそれでいいと考えていた。

 だが、今ジンの心を支配しているのはオウカに嫌われたくないと言うこの一点だった。

 ジンはただただオウカに嫌われることを恐れていた、あんなにも人から忌み嫌われることに慣れていると思っていたのに。

 オウカがジンを嫌いになることなどありはしないのだが、それを確信して尚、ジンは恐れていた人から嫌われることを、ジンも特になんとも思っていない人からどう思われようとも特にびくともしないが、この世でなによりも大事なものに嫌われると言うことを恐れているのだ。


「オウカが兄様を嫌いになることなど世界がひっくり返ってもあり得ないよ」


 オウカは顔の熱りがまだ冷めてはいないがジンにそう言ってジンの胸に顔を埋める。


「私は兄様を愛しているもの」


 自分が言った言葉に理解してしまった。


(そう、私は兄様を愛してる)


 今まで家族愛だと思っていた。

 自分は兄がどうしようもなく好きでたまらなかった。

 だがこの感情は家族愛とは違うことをこの時ハッキリとオウカ自覚した。


「オウカ」


 ジンはオウカにそう言われて体を離そうとする、だが今度は逆にオウカに抱きしめられていて体を離せない状況になった。


「兄様、もう少しだけこのままでいてください」


 オウカの甘える声にジンは口元も綻ばせながら再度オウカを優しく抱きしめ返す。


(でも、この気持ちはまだ言えない。でも私はオオトリの娘なんとしてでも)


 オウカはルイが言っていた言葉を思い出した。


「いい?オウカちゃん、男に逃げ道を作ってはダメよ?逃げ道を作るなら最後には自分の元に帰るように逃げ道を作るの」


 オウカはその聡明な頭でジンをどう追い込み、自分の元に逃げるかをこの瞬間から考え出す、この術中にハマるか否かは未来のジンしか知り得ない。

 だが、未来のジンは後にこう言うだろう。

 母上は娘になんてことを教えたのかと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 既にこの時からジン、、 ご愁傷さまです、
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