条件
ドールが部屋を退室した後、部屋には少し沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのはキリルである。
「さて、話を戻そう。ジン君」
「はい」
「まぁ、殿下ちょっと冷静になった方がいいが、確かに君にはまだリナリーとの婚約を進めるわけにはいかない」
「それは」
「勘違いしないでくれよ」
ジンがキリルの言葉に先程ドールが言ったように少しムッとしたように尋ねようとして、あらかじめキリルがそれを遮る。
「ジゲンは私の友人だし、その功績も評価している。だが、私は君に対しての評価は、中の上と言ったところだ」
ジンは今まだドールに成り上がりの貴族と言われて内心では大きな憤りを感じていた。
勤めて冷静に話をしていたが、それはディノケイドの御前でもあったし、相手が王子だからである。
その憤りを感じ取ったキリルがその線を否定して、問題はジン自身であると告げた。
「......わかりました。では私が認めて頂くにはどうしたらいいでしょうか?」
ジンは機嫌をすぐに取り戻すとキリルに質問する。
「そうだな、あと三年だね」
「三年?」
「三年間の間に君にはそれ相応の私に期待される何かを見せて欲しい」
「お父様!」
そこでリナリーが少し声を荒げる。
それは淑女として黙認されるギリギリの声量だった。
「わかりました、必ずや期待に応えましょう」
ジンはそう言うとしっかりと頭を下げた。
「そうか期待しておく。ん〜さてこれで君との約束も終わったこただし私の話は以上ですが」
そう言いながらディノケイドに目配せをするキリル。
ディノケイドは息子の失態からやっと立ち直りキリルの目配せに応じる。
「そうか、では君たちに話は以上だ。そうだな、少し二人でそこら辺を散歩でもしてきなさい、私たちは少し大人の話合いをせねばならん」
そう言われてジンは、承知しました。と言ってリナリーをエスコートする。
それは婚約のエスコートではなく騎士が使える者にするエスコートであるが、これを見てキリルはまた関心した。
(これは、条件など必要なかったかな)
「では、少しお付き合い願えますか?リナリー嬢」
「ええ喜んで」
ジンの行動にまだ婚約を受け入れていないぞと言うキリルの言葉を汲み取った行動だと思い、キリルは関心し、リナリーは緊張しながらもジンと話せることを喜び、跪いて手を出すジンの手を取る。だが、ジンは騎士風のエスコートをしたのはたまたまであって、婚約に対するエスコートを学んでいなかったためであるが、キリルにはそんなこと知るよしもないことだった。
二人が部屋を出て行くと、ディノケイドはまたしても大きなため息をついて口を開く。
「ジゲン、そろそろ帰ってこい」
「あえ!俺は一体なにを!」
途中から話についていけずショートしていたジゲンはやっと正気を取り戻す。
「はぁ、ひとまず一から説明してやれ、キリル」
「その方が良さそうだな、相変わらずお前は色恋には疎いな」
「久々に会って、中々の物いいじゃないか?親友よ」
「いやいや、君はルイの時といい、鈍すぎる」
「それを言われると、何も言い返せないではないか」
ジゲンが歳に似合わず拗ねたように言うと久々の笑い声が部屋に満ちるのであった。




