侯爵と王
キリルはディノケイドとなんとか二人きりの状況にできたことに胸を撫で下ろしていた。
「それで、わしと二人で密談など何事か?」
「ああ、すまんな急に、実はな......」
キリルは先程のことをディノケイドに話した。
「くくく、くはっはっはっは!それは誠か?」
「ああ、事実だよ」
「なんとも、あの歳で全くの隙がないなとは思ったが、くくく、そうかそうか」
「笑い事じゃないぞ、ディノ」
「いや、すまない」
ディノケイドは一頻り笑うと真剣な顔になる。
「だが、そうか。で?お前はどう思う?」
「......」
キリルは少しの間沈黙して口を開いた。
「ディノには悪いが、ドール殿下と比べるまでもないだろう」
「同感だな。私がお前の立場でも同じ決断をしただろう」
「いや、お前は息子の味方をしてやれよ」
苦笑いを浮かべてキリルが指摘する。
「たしかにわしも子の親だ。息子は可愛いが......同時にわしはこの国の王でもある。自分の子供が可愛いからと視野を狭めるわけにもいくまい」
「しかし、この話は下手をしたら国を割るぞ?」
「構わんよ」
「構わんて、お前な」
「この国の行く末はわしには変えられなかった変えてくれるのは次の世代だとわしは思おておる」
「多くの血が流れてもか?」
「それが国だ」
全てを理解していると肯定するディノケイドにキリルは少しばかりの格の違いを実感した。
キリルは喉を鳴らして溜息を吐く。
「そうか、なら俺達は大虐殺者当人になるのかもな」
キリルは冗談ぽく戯けるが、ディノケイドは至って真面目に答えた。
「それこそ愚問だ。王になるとき歴史にどう刻まれようともやり通す覚悟は決めた」
「ははは、敵わないな」
「だが、そうか」
ディノケイドは窓の外をじっと眺めて一つ呟いた。
ディノケイドの瞳には活気あふれる城下町が映るのであった。
「ふむ、ちょどいい、レイサー」
「はっ!」
ディノケイドが扉に向かって声をかけると向こう側から返事が返ってくる。
「ジゲンはまだ城にいるか?」
「はい、報告では青龍騎士団の作戦室にいるそうです」
「そうか、ではここへ呼べ。それとジゲンの息子も呼び戻せ」
「はっ!ですが青龍団長の御子息は先程城を出たと報告が」
「暗影を使っても構わん」
「承知しました」
ディノケイドと扉の向こうの騎士の会話にギョッとするキリル。
「ディノ!暗影までは使わなくてもいいんじゃないかな?」
「よいよい」
暗影とは国王直属の隠密集団のことであり国の裏を担う組織のことである、彼らの任務は死と隣り合わせの壮絶な集団である。
その暗影の使い方がなんとも雑であるディノケイドにキリルはちょっとした寒気を感じるのであった。




